成敗
「なあに?初天ちゃ〜ん、こんな深夜に真っ暗な場所でぇ〜?こんな所でヤりたいのかなあ?エロ〜い」
「直輔!お前は絶対許さない!」
「えっ!?何!?誰!?」
ザクっ
ナイフで確かに肉…恐らく人間を刺した感触が有った。
やられる前に殺る。
闇の世界で生きる人間の鉄則だ。
スマホのライトで照らして確認すると…
「初天!なんでここに!?」
「何で!?初天ちゃんが!?」
刺したのは初天だった…
何で…何で…
手からナイフがこぼれ落ちた…
「直輔…これを…」
初天が俺に何かを手渡してやがてぐったりした。
手渡された物は小さな桐の箱と便箋の入った封筒だった。
桐の箱には臍の緒が入っていた。
封筒の中身を読むと…
戸籍謄本と
私には結婚する前に子供が出来ていました。
私も相手もまだ高校生で、妊娠に気付いた頃はもう堕ろす事が出来ない状態でした。
親と相談して、泣く泣く施設に預ける事にしました。
名前を
直輔
と名付けました
これが私の犯した罪です。
許されるとは思っていません。
ただ
直輔にはどうか幸せになって欲しいと
願う事しか出来ません。
俺は施設で育った。
生年月日も同じだった。
初天は
妹だった…
俺は自分の意識のないまま手にナイフを取って
自分の首を掻き切っていた。
直前に蓬治が呼んだであろう
パトカーのサイレンが遠くから聞こえていた
○○○○○○○○○○
俺はあれから廃墟に身を隠していた。
夜になると、あの最後の姿の衣羽が現れてくる。
もう俺の頭はおかしくなっていたんだろう。
ある日に、義理の妹の恋人だった死んだ筈の蓬治が、俺が殺した小仏の付き合っていた女、確か名前を華といったか?と俺の潜んでいた場所に現れた。
とうとう頭がイカれちまったなぁと、笑えてきた。
しかし、タダでやられる気は更々無い。
返り討ちにしてやろうとナイフを持って身構えた。
「貴方の心臓はどうなってるんでしょうね?毛でも生えてるのかな?触ってみていいかしら?」
衣羽の声がした。
そう思っていたら、衣羽が俺の胸の中に手を突っ込んで来た。
その感触を感じた瞬間、俺は顔から前に倒れ込んでいた。
2人が俺を捕らえていた時にはもう、俺は息をしていなかった
○○○○○○○○○○
俺はこの日記を四谷さんのお宅で読んでいた。
一体誰が書いたんだろう?
一人称もコロコロ変わっていて、誰の主観の話だかイマイチ分からない。
今日は四谷さんのお宅で家族全員のお別れ会をいっぺんに行なっていた。
俺は四谷さんと娘さん、衣羽さんと面識があったので呼ばれていた。
主催者は家族が生前懇意にしていた琢越さんだった。
遺品のアドレスや、手帳に俺の名前がチョコチョコあったみたいで呼んで頂いた。
お別れ会の後、四谷さんの書斎に入らせて頂いて、思い出に浸っていると、机の上にこの日記が置かれていて、吸い寄せられる様に読んでいた。
「どうですか?」
後ろから声をかけられて、振り返ると琢越さんが居た。
「はい…壮絶な内容で…一言では言い表せません…」
「そうですね…」
「少し気になったのですが…」
「何でしょう?」
「息子さん…巌くんはどうなったのでしょう?」
「それがですね…見つからないんですよ。衣羽さんと小仏さんの遺体は見つかったんですが…」
「そうなんですか…」
「今回のお別れ会に…1人入れてあげられてなくて…」
「そうですね…」
「見つかったら、また改めて開催してあげたいと思います。もし宜しければまた、原田さんにもお越し頂けたら…と思いますが」
「はい。その折にはまた、お呼び下さい。」
「有難うございます」




