幻想白、白月~月狐
今日は満月だ。
そんなことは知らなかった、いつも通り会社から家に帰って、その道中で月を見た。
久しぶりに満月を見た、空なんて見上げる事はなかったからなかなか見る機会はなかった。
だが、今日は車を使わず歩いて帰っている、ウチの会社には定例の飲み会なんてものはない、元旦と年末だけだ。
それでも不思議と仕事が回るもんで、人間っていうのは人となりを知らなくたって何となく通じ合えるものだと、この仕事で学んだ。
満月は大きく、久しぶりに見たからかとても綺麗に感じる。
世界は奇しくも麗しく、糸で繋がっている。
何処かで起きた事は巡り巡って影響を与える、一見関係のない事柄でも、世界は糸で繋がる、それは奇しく、麗しい。
私が今満月を美しいと感じている事、美しいという感情は確かに私の中に存在する、だが何かを美しいと感じること、それ自体幻を感じているようなものだ。
されど、同じような感情が世界の何処かで発露されているだろう。
世界は巡っている、何処か遠くの世界にも。
露店街を歩いていて、道草を食っている私は何気なく菓子パンを買って帰ったりする、私が世界を歩いているように他の人も世界を歩いている。
白色だった世界は人間によって染められて動いている、その世界の中で私は生きているのだと。
今、私は世界のあらゆる場所に繋がっているんだと、仕事帰り中の中年サラリーマンはそう想った。
白月
月には、人間の視線が集まる。
故に、感情や様々な幻想が集まる。
人間から発生する妖は、月では隠れる事なく都市を築き文明を創り、世界を造った。
幻想だったはずのものが、白色だった月を染め上げた。
人間には見えない世界だが、確かにそこに存在する。
幻想白は人間そのものだ。
何も染まっていない白から生命が始まり、幻想によって色が染まり、世界を創っていく。
妖は白ではなく、人間から生まれた幻想。
それなのに、世界を造り上げた。
幻想である妖の世界、月の楽園。
そこでは、兎や狐、蟹や鰐。
様々な妖怪が月と見た目が変わらぬ、月の満ち欠けで形が変わる団子。
月違わず団子を取り合い、闘技場で己がどのくらい美しく、月に近いか競っている。
白兎
月の楽園
今日は、管狐の巻之と戦う。
どちらがお月様に似て、美しいかなんて一目瞭然だと思う。
だって、私は丸くなれる、真っ白な兎。
月の妖怪はみんな真っ白だけど、私は丸い、お月様だって認めてくれるはず。
月は私たちを生み出してくれた、妖怪の源を集めてくれた凄い星。
だからみんな、お月様の真似をする。
お月様のように白く、美しく、丸い妖怪が強くなる。
一番お月様に近いと認められたら、月違わず団子を貰って、飾るのよ。
団子だからって、優勝賞品を食べようとするなんて私は勿体無いと思うのだけど、巻之は食べたいらしいわ。
お月様を食べるなんてさ、もっと月を敬った方がいいと思うのだけどね。
月は力の源でもある、それを食べるだなんて、巻之ちゃんは一体どんな妖怪を目指しているのかしらね。
いや...妖怪じゃなくて、神様になっちゃうかもしれないけどさ。
幻惑の力を使い、月を真似る遊戯に勝利したのさ。
月の妖怪として得た力なのか、私個人の妖怪としての力なのか。
(幻想1)
しかしまぁ、俺みたいに姿形や認識をまるっきり操作できる奴は中々いないらしいな、現実と非現実の境界を曖昧にして、周囲に拡散する力とでもいうのか。
(幻惑2)
僕としては月違わず団子を食べて、月の信仰を奪うことができればなんだっていいのだけれどさ。
これを食べたところで妖怪を超えた存在になるだけで、僕の力も強くなったりするだけ。
つまらない、根っこの所が満たされないのは人間から生まれた存在だからか...結局は幻想に過ぎないのか。
(月狐3)
私は月を喰らって、神となり。
地球へと降りて土着する。
それが月の一部となった私の役目と言うべきかな。
あとは自由だ、やりたい放題かな。
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月を喰らった狐の妖怪は、白を体内に取り込んだ。
存在が幻想白として確定した月狐の巻之は地球に降り立ち、土着神として地球に馴染んで行く。




