27:反撃の狼煙
震えていたミラの鼻が、倉庫内の「違和感」に反応する。
(……誰も、私を狙ってない?あいつら、私のことが――“視えて”ない!?)
刃の風。血の匂い。
ソーレンが斬られたと悟った瞬間、ミラは恐怖を喉奥に押し込み、匂いに集中する。
鼻先に漂う微細な金属臭、古い油の匂い、そして――誰かの呼吸音に混じる、殺意の香り。
(上に一人……ソーレンの横にもう一人……あと一人、動いた!)
ルークの移動と臭いを嗅ぎ分け、ミラは鞄にしまっていたもう一つの懐中電灯を取り出す。
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ホークがルークに「とどめを刺せ」と命じた瞬間――
「ソーレン!」
ミラが物陰から飛び出し、懐中電灯の強い光をルークの顔めがけて放った。
「ッ……!」
眩しさに目を覆ったその瞬間――ソーレンの弾丸が肩を貫く。
呻き声とともにルークが崩れ、モズがすかさず反撃に転じる。
だがソーレンはミラを抱き寄せると、反射的に横跳びで物陰へと転がり込んだ。
背後で弾丸が鉄材を穿つ音が響いた。
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木箱の影、ソーレンの耳元でミラは囁いた。
「匂いで分かった……上に一人いる。向こうからは“視えて”るの」
「……つまり、見えてるのは一人だけか。
残りの二人の位置、追えるか?」
「――追える」
真っ暗な空間の中、ミラははっきりと頷く。




