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24:夜の標的
電話を切ったソーレンは、窓辺に立ち、深夜の空を見上げていた。
ミラが静かに声をかける。
「ねえ、その倉庫……今夜、行くつもり?」
ソーレンは頷く。
「ルシアンによれば、連中は“近くアジトを移す気配がある”らしい。時間を置けば、手がかりも逃げる」
「じゃあ、私も行く」
ソーレンが振り返る。
「ミラ、それは――」
「待って。私の嗅覚を知ってるでしょう?あのときも匂いで気づけた。今回もきっと役に立てる」
少しの沈黙。ソーレンは彼女の真剣な目を見つめ、ようやく口を開いた。
「……分かった。だが無理はするな。俺が前に出る」
ミラはうなずく。
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ソーレンは受話器を取り、短くダイヤルを押す。
「……イーライ、こちらソーレン。今夜、旧市街の倉庫に動く。レイブンバンクが潜伏している可能性がある。詳細は後で――すぐに向かう。何かあれば応援を頼む。……以上だ」
受話器を置く音が静かに響く。
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静かな足音とともに、ふたりは闇の中へと歩き出した。街灯の下、ソーレンの手には小型の懐中電灯。ミラは軽装で、その背に小さなショルダーバッグ。
夜闇の中に、気配だけが強まっていく。
やがて、遠くに廃倉庫の黒い影が浮かび上がった。




