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15:闇の中の誓い

――気をつけて。何かあったらすぐに電話を。

今、それが現実になった。


ガルが前へ一歩、地面がわずかに軋む。


「こっちは穏便に済ませたいんだがな……無理そうか?」


その太い首がゴキリと鳴ると同時に、彼の巨体が跳ねた。

驚くほどの速さ。

次の瞬間には、ミラの目の前にその手が迫っていた。


反射的に横へ跳ぶ。間一髪で直撃は避けたが、風圧で体がよろめいた。


「いい嗅覚だ。だが、それだけじゃ生き残れねえ」


ガルはゆっくりと肩を回しながら、ミラをじりじりと追い詰めていく。


ミラが走り出そうとする瞬間、別方向から轟くような声が響いた。


「――離れろ」


闇を裂くような一撃。

何かがガルの顔面を撃ち抜いた。

巨体がぐらりと揺れる。

その前に、ソーレンの姿があった。


「ウルフさん……!」



ミラの声に応える間もなく、ソーレンはすぐさま距離を詰め、ガルに追撃を叩き込む。

だがガルもただの暴力男ではなかった。

唸り声と共に拳を振るい、ソーレンを跳ね返す。


「探偵ってのは、出張格闘家か?」


「うるさいガキだな」


拳と拳がぶつかり合う。

ガルの一撃は一発で壁を砕く威力を持っていたが、ソーレンは正面からそれを受け止め、押し返す。


「っ……チッ」


ソーレンの掌底がガルの顎を打ち砕いた。

ミラがその動きに目を見開く。


膝から崩れ落ちるガルの後ろから

スターリングがすかさずナイフを手に、ソーレンに飛びかかる。

細身の体が繰り出す刃は蛇のように鋭く、しつこい。


ソーレンはナイフの軌道を見切りながら、ひとまず距離を取った。


その一瞬の隙をついて、ドードーが突っ込んでくる。

まるで突進してくる猛牛のように、体全体を使ってソーレンを壁際に押し潰そうとする――が。


「お前、図体がでかいだけかよ」


ソーレンは床を滑るようにかわし、足を払ってドードーを転倒させた。

地響きのような音と共に、ドードーが転がる。


スターリングが再び刃を向けるが、ソーレンは一気に距離を詰め、手首を掴んで捻る。

スターリングがうめき声を上げ、ナイフを落とすと、ソーレンはそのまま彼女を投げ飛ばした。


ピジョンがその隙を突いて逃げようとする。

だが――


「……いるわ、あそこ」


ミラが匂いで即座に位置を指差す。


ミラの声を頼りに、ソーレンはピジョンに掴みかかり、壁際へと追い詰める。だが、その瞬間――


「まだ終わってねぇよォ!」


ドードーが呻きながら突進。

ソーレンの体が壁に叩きつけられた。衝撃が全身を駆け抜ける。


ミラが息を呑み、声にならない叫びを上げかけたその時――

ソーレンがドードーを逆に押し返し、そのまま締め落とした。


スターリングはピジョンの首根っこを乱暴に引き寄せ、闇へと姿を消した。その背中には、敗北と悔しさ、そして確かな恐れが滲んでいた。



駆けつけた警察官たちにより、ガルとドードーはそのまま現行犯逮捕された。


ソーレンは脇腹には浅い打撲、左の目下は薄く切れたのか血が滲んでいた。

ミラが手を添えると彼は「大丈夫だ」と短く答えた。


「ほんとに……? さっき、壁に叩きつけられて……」


「平気だ。壁よりお前の心配をしてくれ」


「……バカ」


その言葉に、ソーレンはふと、口の端を上げた。






遠くの屋上。

ルークはじっとそのやりとりを見届けていた。隣に立つホークとモズも、口を閉ざしたままだ。


しばらく沈黙ののち、ホークが呟く。


「……あの女。小動物みたいな見た目してるが――ただの草食じゃねえな」



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