Prologue
この世界には、遠い昔に新人と呼ばれる種族から派生したと記される二種の種族がいた。
片方は新人からそのまま正当に進化したとされる人間と記される。
人間は器用に両手を使い、物を造りそれを自身の力として操る。
想像力・技術力に優れ、それを人々の生活に役立てる事に長けていた。
もう片方の種族は新人がなんらかの畸形により魔力器官を持った者が進化したとされる魔法使いと記される。
魔法使いは器用に自然から魔力を受け取り、それを魔法道力として魔法という力を操る。
魔法という強大な力を持ち、それを操作する事に長けていた。
双方共、己の種族に見合う成長を遂げた。
双方は別々の力を持っていたから、互いの種族の長は契りを結び国を隔てた。
それからは互いの種族に対する過干渉や戦争もなく平和に暮らしていた。
だが、遥か昔に歴史にも名を残す様な大きな戦争が起こってしまったのだ。
それを起こしたのは温和とされる魔法使いの国の王だった。
人間は技術力を持っていても、短期集中型の魔法使いと長期戦向きの人間では太刀打ちできず、一時負けてしまった。
だが、人間の国には七転び八起きという言葉がある様に敗北を噛みしめるだけには終わらなかった。
技術力を磨き、範囲は狭いが魔法を無力化する装置を造ったのだ。
それからというもの、人間は一度負けた腹いせと言わんばかりに魔法使いの国を襲い、幼い魔法使いや見目の麗しい魔法使いなどを奴隷として従え始めた。
幸いな事にそれはかつての戦争とまではいかなくとも、その二つの出来事により両国には埋まらない溝ができてしまったのである。
__そしてこれは、一人の少女が日々の生活を送りながら、様々な事を学び、両国の間にある渓谷に橋を架けるという夢物語のお話である。