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10.従兄との決別

 ゾフィーの妊娠発覚後も、ビアンカはハインリヒにゾフィーと結婚してくれと何度も頼んだが、色よい返事はもらえていなかった。ルドルフが死んでしまった今は、公爵家のどうしようもない親戚の男とゾフィーが結婚させられないように、もう一度ハインリヒを説得しようとビアンカは彼を侯爵家に呼んでいた。


「ハインリヒ、ゾフィーの苦境はわかってもらえるわよね。ゾフィーと結婚してちょうだい」


「叔母上、それは了承しかねます」


「貴方、ゾフィーのこと、愛していたんじゃなかったの?」


「そりゃ、ゾフィーには従妹としての情はありますよ。でもそれは何があっても絶対彼女と結婚したい愛情かというと、違います。むしろ妹のような、家族に対する愛情です。私は従兄として彼女の幸福を祈っていますが、彼女を妻として幸福にするのは私ではありません」


「その従兄としての愛情で結婚してはもらえないの?」


「無理ですね。愛情抜きで政略結婚するとしても、もうゾフィーの条件は悪すぎます。私だって、他の男の子供を腹に宿している女と結婚なんてよほどのメリットがなければごめんです」


「侯爵家の跡取りになれるのに?」


「ルーカスがいるでしょう? たとえ私がゾフィーと結婚しても叔父上が私を後継ぎにすることはないでしょう」


「そこは貴方がいろいろと工作するはずだったでしょう?!」


「そんな面倒なことは嫌ですよ。僕は別にロプコヴィッツ侯爵にこだわっているわけじゃない。別の爵位だっていいんですから。ロプコヴィッツ侯爵にこだわってるのは叔母上と母だから、貴女達がいろいろ動くべきだったんです」


「そ、そんなこと女の私達には無理よ!」


「そういう時だけ女を出すんですね」


「だったらどうしてあんなにゾフィーと結婚に乗り気だったの?!」


「それはまあ、知らない女と結婚するよりゾフィーとなら気心も知れてるし、従妹としての情もあるから、結婚してもいいかなと思ったし、後継ぎのこともまだ希望持っていたからね。そっちのほうは叔母上がもう少しうまく工作してくれると思っていました。でも、もう事情が変わったんです」


「このままだとゾフィーは公爵家に引き取られて出産後、子供と引き離されて修道院行きになるのよ! かわいそうだと思わないの!?」


「そりゃかわいそうだけど、だからと言って他の男の子供を妊娠している女と結婚するまでの覚悟はないですね。それともその悪条件を上回るメリットを叔母上と母が私に提供できるんですか? 無理でしょう? かわいそうだと思ったら、叔母上が叔父上と交渉してゾフィーの出産後に彼女をここに引き取ればいいじゃないですか。子供は公爵家が手放さないだろうけど、面会できるよう交渉するとか。ゾフィーを愛する母ならそのぐらいの苦労できますよね?」


「ぐっ……」


 ビアンカは普段優雅な侯爵夫人らしくないうめき声をあげた。プライドの高い彼女は、正妻の自分をないがしろにしている夫に頭を下げて何か頼むことに、いくら娘のことでも苦痛に感じた。


 これ以降、ハインリヒがロプコヴィッツ侯爵家を訪れることはなくなり、連絡もなくなった。


 半年後、とある伯爵家の一人娘と彼の結婚式への招待状がビアンカの姉からロプコヴィッツ侯爵家に届いた。仲の良かった姉から何も聞いていなかったビアンカはがっかりし、甥のハインリヒにも恩知らずと怒り狂ったが、ゾフィーの行く末もその頃には決まっており、ビアンカにはもう何も変えようがなかった。

今回は少し短めになりました。

読んでいただいてブックマークもいただき、ありがとうございました。

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