ヲタッキーズ99 脂肪爆弾
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第99話"脂肪爆弾"。さて、今回は疾駆する自転車で人体が突然爆発!超常現象?殺人?
人体自然発火説を推す主人公でしたが、背後に腐女子をスーパーヒロインに覚醒させる薬の存在が浮上して…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 人間爆発
"Uper Eats"が大暴走w
メイド通りに突っ込みヲタクやビラ配りメイドの間を強引に走り抜ける自転車!たちまち悲鳴と怒号の嵐が沸き起こるw
「危ない!きゃ!」
「バカヤロウ!何処見てんだ!」
「Oh, モーレツ!」
暴走自転車は神田明神通りへ飛び出し車道を逆走、中央通りを左折して来た腐女子運転の"誤等分の花婿"痛車と対峙w
「キャー!正面、自転車!」
「心配ないわ。向こうが避ける」
「絶対に避けないと思うw」
思うドコロか前輪上げてウイリーで突っ込んで来るw
ハンドルから両手を離して顔を覆う腐女子!大絶叫!
どっかーん!
次の瞬間、爆発音がして血飛沫が飛び散る!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
SATO司令部にあるルイナのラボ。
南秋葉原条約機構は、アキバに開いた"リアルの裂け目"からヲタクを護る首相官邸直属の防衛組織だ。
ルイナは、史上最年少で官邸アドバイザーを務める車椅子にゴスロリの超天才。SATO科学顧問を兼務。
「"アマソン"の受け取り、ありがとうスピア。昨夜は、クリニックだったから」
「構わないわ、ルイナ。で、未だ死んでない、生きた患者ってどうだった?やっぱり手強いの?」
「帝王切開にしたわ」←
スピアは、ルイナの親友でストリート育ちのハッカーだ。
「何か切りたくてウズウズしてたのね。前話のゾンビ回では余り出番が無かったし」
「あのね、実際の執刀は医官なの。私は車椅子から指揮スルだけ」
「そっか。私達、人類の誕生から宅急便の受け取りまでこなす最凶コンビになれたワケね。で、何を注文したの?」
ルイナは、早速"女損"の箱を開封。
「来週の"車椅子フェンシング"の試合で、みんなが私を見つけるのが大変だと思って」
「うん。みんなマスクかぶったタンポンみたいだから」←
「ソコでフルーレガードをカスタマイズしてみたの」
早速フルーレに真っ赤なガードを取り付けるルイナ。
「わぉ目立つね。対戦相手の女子達は、メッチャやりにくいだろうね」
「ソレで敵の気を削げれば好都合」
「わ。危ない!」
狭いラボでフルーレを振り回すルイナ。
「帝王切開もその調子でやったの?」
「まぁね。アロンジェ・ル・ブラ!」
「あ、テリィたん!危ない!」
ラボに入って来た僕は、危うく避けるw
「わ!大歓迎だな!」
「もう?時間ね。待ってて。荷物を取って来るから」
「…スピア、嫌なのかな?」
ラボを出て逝くスピアを見送り、ルイナに尋ねる。
「うーん確かに市ヶ谷からの招待を受けるよう説得スルのは、スゴい大変だったわ」
「新設のサイバー作戦群の幹部候補生にハッキングを教えるナンて、最高に楽しそうだけどな」
「自分の豊富な経験を分かち合えば良いだけなのにね」
スピアがスーツケースを引いて帰って来る。
「経験から言うと、市ヶ谷って何も分かち合わないわ」
「コレは、仕事や事件じゃないの。教育と協力ょ」
「楽しんで来なょ。留守番は任せろ」
ココでルイナのとスピアから預かったスマホが同時に鳴るw
「はい、ルイナです」
「スピア…の代理だけど」
「息が合ってナイ。やっぱりイマイチね」
腕組みしたスピアからダメ出しw
「全然ダメ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田明神通りの現場。
「事故なの?」
「あ、ラギィ警部。自転車と痛車の Chicken Race です。車は止まったが、自転車は…爆発しました」
「爆発?事故のショックか何か?」
現場指揮は、万世橋警察署の敏腕警部ラギィ。彼女とは彼女が前の職場で"新橋鮫"と呼ばれていた頃からのつきあい。
アキバでは"リアルの裂け目"関連の事件は、警察とSATOの合同捜査になる。僕達ヲタッキーズは、SATOの傘下だ。
「現時点では何とも…とにかく、突然爆発したンです。とりあえず、似顔絵を作ります」
「え。誰か容疑者を見たの?」
「いいえ。被害者の漫画です」
被害者の似顔絵?普通、死体の似顔絵は描かないが…
「警部。現場はココです」
「あら。ハデにやったわね」
「なるほど。漫画は必要だ」
制服警官に案内された先に見える死体は…手だけだw
ソレも焼け爛れてハンドルを握っている。右手だけ←
「人体は完全に吹っ飛び、跡形もありません」
「コレでは指紋採取は無理ね」
「身分証の類も見つかってません。本人より、メッセンジャーバックの方が状態が良いです」
警官は、証拠品袋入りのバックを示す。
「爆発物は?」
「見当たりません。起爆装置もない。爆薬を入れた外装ケースの破片もない。実際、人間本体が爆発したとしか…バックは要ります?」
「もらっといて、テリィたん」
アプリからルイナの指示が飛ぶ。僕は、車椅子で現場に出るには色々と制約のある彼女の代理で現場に来ているワケだ。
いつもはスピアの仕事だけどね。
「異常気象による落雷かしら?ルイナ、どう思う?」
「ラギィ警部。その右手の焦げ方は熱によるもので、電流が原因じゃナイわ」
「容疑者も爆弾も雷もナシ…いよいよコレは人体の自然発火カモしれないぞ!」
重要かつ斬新な視点を提供したが、一笑に付されるw
「その線もアリかと思ってSATOとの合同捜査にしたけど…テリィたんが言うとヤタラと嘘くさいわ」
「全くです。ムーンライトセレナーダーが来ると思ったのに。ハズレですね」
「テリィたんは、オカルト雑誌"ラー"の読み過ぎなのょ」
ムーンライトセレナーダーは僕の推しミユリさんがスーパーヒロインに変身した時の姿だ。因みに僕はラーは立読み派←
「あのね、テリィたん。過去における人体の自然発火事件では、何れも捜査段階に見落としがあったの。警察としても少し考えてみるけど…人間は勝手に萌えないわ」
そうかな?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、防衛省の正面ゲート。
「ええっ?!人体の自然発火事件を見逃すナンて!」
「ルイナは否定するけど、彼女が間違えた可能性もアル」
「ええっ?!ルイナの間違いまで見逃すナンて!」
地団駄踏むスピアの肩が叩かれ…振り向けばイケメン佐官。
「ルイナさん?市ヶ谷へようこそ」
「デビス3佐?」
「YES。来てくれてありがとう」
爽やか野郎の出現だ。市ヶ谷は、正面ゲートを過ぎるとエスカレーターになるけど、2人は横並びで乗って会話は続く。
「貴方の熱意が私に伝わった。だから来たの」
「そうか。じゃこの魔法はしばらく解くワケにはいかないな」
「でも、夜中の12時までには帰してね」
爽やか野郎の爽やかスマイル炸裂w
「OK。君は僕のシンデレラだ」
胸キュン←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したらヤタラ居心地良くて(僕含むw)常連が長居して実は困っているw
「ミユリ姉様は何を?」
「知らない。さっきからずっとスマホ」
「…まさか、仕事探し?」
このショーモナイ会話をしているのは"ヲタッキーズ"の妖精担当のエアリと、ロケットガールのマリレだ。
"ヲタッキーズ"は、ミユリさん率いるスーパーヒロイン集団で、僕がサラリーマンの傍ら、CEOを務める。
あ、僕自身は第3新東京電力のサラリーマンだw
「ウクライダ東部戦線の戦況を分析してたの」
「"#メイドカフェ開業"で?姉様、どーしたの?」
「ホントは…店舗物件を探してるの」
因みに、エアリは図書館カフェ、マリレはノイズバーのそれぞれメイド長なので、ミユリさん含めて3人共メイド服だw
「ええっ?!"潜り酒場"の2号店を?ねぇねぇ2号店のメイド長は私ょね?お願いします!」
「てか、ソンなコトより姉様、どーしたの?テリィたんとモメて追い出し食らったとか?"若くて巨乳"という姉様にはナイ何か?を持つ泥棒猫が姉様の座を…」
「マリレ。ドサクサ紛れに日頃思ってるコトを口にスルのは悪い癖ょ。テリィ様とは順調。ただ、いつまでも雇われメイド長でいるのも、テリィ様の方が重いんじゃナイかなって」
すると2人は異口同音。
「テリィたんは、全然気にしてないわ(ょ)!」
「でも、私がしてる。物件が見つかるまでは内緒ょ。テリィ様に止められたくないの」
「はーい」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。万世橋に立ち上がった捜査本部。
「ラギィ警部!似顔絵の人物には誰も覚えがナイと…」
「被害者が爆発寸前に顔を覆った指の隙間から見た記憶から描き起こした絵でしょ?アレでヒットする方がヘン」
「遺留品からも特定不能です。ほとんど萌えたから」
ラギィは頭を抱える。
「歯型は?歯科記録はどーなの?」
「警視庁の行方不明者データベースにかけましたがヒットなし。現時点で判明しているのは、20代前半のアジア系男性。爆発により死亡。以上です」
「警部。DNA検査の結果が出ました」
ラギィは顔を上げる。
「犯人を特定出来そうなの?」
「難しいですね。検体は、胸郭内部頬骨のすぐ裏の部分のモノでした」
「ソレがどーしたの?携帯用綿棒で採取したのでしょ?過去に何回もやってるわ。何か結果が不足しているとでも?」
鑑識は顔を曇らせる。
「ソレが…不足ではなく多過ぎて…」
「ナンのコト?」
「DNAは、1人分ではありませんでした」
警部の剣幕に圧倒されながら鑑識。
「検体から採取されたDNAは…5人分です」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。SATO司令部のルイナのラボ。
「テリィたん。万世橋が似顔絵を顔認証システムに通したら1万人ヒットしたんだって。あぁスピアなら、もっと上手く絞り込めるのに」
「あのヘタウマな似顔絵?しかし、被害者"達"だろ?見つかったDNAは5人分だったとか」
「5人とは限らない。1人が4回輸血を受けたのカモ」
なるほど。だが、もっと斬新な視点も必要だ。
「ソレか犯人は"カンガルー人間"で袋の中で5人のチビッコを育てていた可能性もアル」
「あのね。カンガルーのオスには袋はナイの。とりあえず、DNA5人分から調べてみようかしら」
「待て。ソレも犯人がいればの話だろ」
事態の打開には、斬新な視点が…
「人体自然発火の話?」
「おおっ!ルイナもその可能性を?」
「ラギィから、その話はおしまいって言われてる」←
警察を信じるな!
「でも、オカルト雑誌"ラー"は先月も特集してたょ?」
「誰かテリィたんを黙らせて。ミユリ姉様は何処?…死体の散らばり具合を回帰分析してみたけど、爆発は被害者の下半身部分で起きてるわ」
「…確かに、爆発効果が前に集中するクレイモア地雷で吹っ飛ばされたみたいだったな」
全然別のコトを考え黙る僕達。ルイナは分析の検算、僕は…
「普通、自転車のサドルの下って…ウォーターボトルがアルょね?」
「え。あ、そっか。ウォーターボトルなら、被害者が乗る前に仕掛けられるカモ」
「つまり、人体の自然発火じゃない?」
自分で逝って口をとがらせる僕←
「ソンな悲しそうな顔しないで…ラギィにウォーターボトルの付着物を調べてもらいましょう。で、テリィたん。ラギィが顔認証にかけた結果だけど…」
「顔認証ソフトは何でも拾うからな。別人でも、データ的に僅差ならドンドンpickupしてしまうw」
「そもそも、あの似顔絵はノッペリしてて特徴が無さ過ぎるのょね。も少し何とかならないかしら」
またまた、僕の非凡な発想が局面を打開スル!
「わかった。考えがアル」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の検視室では、ラギィが黒焦げ、というか、ほとんど炭化した被害者の頭部にスマホを這わせるようにしている。
「テリィたん、どう?」
「もう一度左側からお願いしまーす」
「しかし…今どきはアプリを入れるだけでスマホが3Dスキャナに早変わりスルのね。驚いたわ」
僕は胸を張る。
「まぁ色々良いモノが出てるからねぇ」
「テリィたん、最新のお役立ちアプリに詳しいのね。何処で知ったの?」
「おいおいラギィ。ソレを語れば、せっかくの僕のミステリアスで謎めいたキャラが台無しだ。わかってナイな…おっとスキャンデータが来た。万世橋の似顔絵に合わせてみよう」
僕は、似顔絵のデータにスキャンデータを重ねて逝く。
みるみる顔の造作がクリアになり、まるで別人の顔にw
「よし。目をハメてみよう。口も」
「肌の色を加えてょ。髪の色も」
「OK…さぁ出来たぞ!"彼"を城ミチルと名付けよう…ってウソだょ冗談だから」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「防衛省で人気のハッカー講師さん。元気でやってる?」
「ルイナ!例のグロい自転車のハンドル画像、プリーズ!」
「え。誰から聞いたの…あ、テリィたんが喋ったの?いつの間にw」
ルイナは市ヶ谷のスピアと会議アプリでガールズ?トーク。
「さっき防衛省の大代表に電話して来て。3Dスキャンのアプリがなくてラギィが困ってるって。ねぇねぇハンドルに腕がついてるンだって?」
「意外にグロテスクな趣味なのね」
「とにかく見せてー!」
泣き声の哀願。やむなく画像を転送するルイナ。
「あーんヤッパリ生で見たかったー!」
「…ソコにアルのはチノパンとポロシャツ?」
「デビスが候補生の服を薦めてくれたの。なるべく溶け込めるようにって…」
一転してモジモジするスピアに女の勘が働く。
「そのデビスってイケメン?どんな人?」
「え。いやーんソンそんなんじゃないわ。でも、スゴい大きな目で…ソレで彼の気が済むなら、スク水以外のコスプレでもOKょ」
「え。貴女がスク水以外のコスプレをOK?」
スク水は、スピアの絶対的トレードマークなのだw
「幹部候補生の顔ぶれを見せてょ」
「ソレが、防大の卒業生総代、心理学博士、ローズ奨学生ばかりなの。ビビるわ」
「普段はネットでハッカーを追いかけてる貴女が、青白いガリ勉優等生を怖がるなんてね」
何となく愉快そうなルイナ。
「怖がってナンかいないけど、出来過ぎ君ばかりだと、ドラえもんもツマらないでしょ?」
「スピアも同じ。ピエロになる必要はナイわ」
「ありがとう…あら、テリィたん!」
車椅子のルイナが光速で振り向き、僕を睨みつけるw
「や、やぁ邪魔したくなかったから…またね、スピア」
僕が手を振るや、ルイナはバタンとPCを閉じるw
「何なの?テリィたん」
「いや、ラギィからさ。似顔絵を3D化した城ミチルだけど、データベースにヒットした。ラギィが自宅に踏み込むから一緒に来ないかって。僕達のデジタル作業は、ピクサーにも負けてなかった。やったね!」
「…(塩反応w)」
「あれ?さぁココはハイタッチだょ?」
プイと横を向くルイナ。
「…テリィたん、スピアの胸の谷間を見てた」
「ええっ(背中に目がアルのかw)!とにかく、ハイタッチしよう…うーんギコチないな」
「スピアがいない間は私を見て。ミユリ姉様にはチャンとお断りしてあルンだから!」
第2章 爆発する脂肪
スピアの講義?は、何と市ヶ谷記念館で行われるw
「極東軍事裁判が行われた建物を移築したンだ。いわゆる、東京裁判だね」
「とゆーコトは、私は被告?赤いランプが点いたら喋るとか?」
「ははは。君って楽しいな。いくつなの?」
談笑スル2人の横を、候補生がお喋りしながら追い抜く。
「…彼女の経歴はスゴいらしいわ」
「秋葉原でヲタク相手の話でしょ?リアルじゃどーだか」
ヒューんと心が萎んで逝くスピア。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田佐久間町にある雑居ビルの地下室。
「鍵が開いてます」
「突入」
「万世橋警察署!万世橋警察署!」
地下だがワンフロアまるまる遊び部屋。歯医者のイスみたいなシートを囲む大型スクリーンに接続されたゲーム機器。コダワリのハイファイ。地下アイドルの恐らく特典ポスター…
「ココが爆死した被害者ロバト・ホウルの部屋?」
「やや?VRヘッドセットだ。男のロマン満載の部屋だね。ポスターは"おんぱ組"だょ。inc.がつく前で、未だ美少女ユニットだった頃の激レア品だ…両親が金の面倒を見てるのかな?」
「その逆ょテリィたん。高校中退後、麻薬所持で逮捕。リハビリ施設から2度脱走して親子の縁を切られてるw」
ソンな人生もアリかな。そーいえば女っ気はゼロだw
「でも、更生しようとしてたのかもしれないぞ」
「何でテリィたんが守りに入るの?同志愛?まぁ確かに去年は逮捕されてナイみたい」
「にしても、仕事も資金源もないのに、この贅沢はナンだ」
ラギィは、拳銃を構えたママ奥のドア開ける。
「起業してたのね。彼は起業家」
「何だって?」
「覚醒剤の密造。奥がラボになってる」
開いたドアの向こうには、フラスコやビーカーが並ぶ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「結局あの部屋から、2000万円近い現金と2kgの覚せい剤が見つかったわ」
「とゆーコトは、少なくとも殺害目的はお金やクスリでは無さそうね」
「ウチの麻薬取締課の話じゃ、腐女子がスーパーヒロインに擬似覚醒する"覚醒剤"の高純度の物が出回ってるらしいわ」
僕は、頭をヒネる。
「でも、奴のラボは、機材が新品のママだったね」
「そもそもホウルには覚醒剤精製の知識があるの?」
「ホウルの高校時代の化学の教師は、一応当たってみたけどシロだった」
ココで突破口となる情報が入る。
「警部!SATOのパツキン姐さんに言われて調べてた5人分のDNAの1つがデータとヒット。ジャボ・ホーリ。別名ジャンボ・ホリエモン。ストリートギャングのリーダーです。加重暴行、武装強盗、麻薬取引!」
本部全員の顔が…パッと輝くw
「ホウルのセンセはコイツじゃないか?」
「だとスルと、ホウルの独立は快く思って無いハズ」
「ジャンボ・ホリエモンと話してみましょう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同じ頃、市ヶ谷記念館。
「私は、大学でヨボヨボの教授達の話を延々と聞くより、ストリートで経験を積む道を選んだの。すなわち…」
演台からスピアが見回すと…見事に全員退屈してるw
「OK。じゃ今から私がストリートで学んだコトを話すわ。はい、あなた」
「カエル・プライです」
「貴女の趣味は…映画鑑賞ね。ソレもアニメ」
精悍だが、何処か田舎臭さの残る候補生だ。
「正直に答えてね。トイレの鏡の前でセーラーヌーンの変身ポーズをしたのはいつ?」
忍び笑いが漏れるw
「1度もありません!」
「じゃ平気ね。デビス3佐。プロジェクターの用意をお願いします」
「OK」
デビスは、奥からプロジェクターを出して来る。
「な、何を?」
「防衛省の中は、何処にでもカメラがアルわ。もちろん、女子トイレも例外じゃナイ」
「ま、待ってください!でも、セーラーヌーンじゃなくて、ズボンの騎士です!」
館内に爆笑が沸く。
「わかった?人は誰でもヲタクなの。では、次は貴女。制服がポロシャツで助かるのは、3日間着た切りスズメでもバレないコトょね?」
「毎日洗濯してます!」
「私ナンか10年同じブラを使ってるわ。ちっとも大きくならないし」
「確かに2日間変えてなかったカモ。下着もw」
お互い顔を見合わせる候補生達。
「今のは、心理学では"最小化"と言うらしいわ。ヲタクの罪悪感を軽くしてあげるの。一般人も同じだと思えば、ヲタクは何でも告る。じゃ最後は貴女。貴女の恐れるモノは?」
さっきからニコリともしない女子だw
「ナイわ」
「あら。大人になっても蜘蛛を怖がる人もいる。恥ずかしくないわ。誰にでも経験がアル。私も自分を撃ったコトがアル。あんな思いは2度としたくナイけど」
「私は平気ょ」
「寝る時に電気をつけて寝たコトはアル?ソレとも朝まで一睡も出来なかった?」
「電気をつけて寝たコトはアル…あ、しまった!」
館内の失笑を聞きながら、肩をスボめてみせるスピア。
「今のは選択疑問。どっちを答えても有罪の選択肢に追い込んで罪の告白を促す。ねぇ誰でも暗闇が怖い時はあるわ。気にしないで。ありがとう…」
やがて、講義は終了。候補生は玄関で見送るスピア達に挨拶して解散して逝く。その中に、あのニコリともしない女子…
「ちょっと困らせちゃったね。ごめんなさい」
「気にしてナイわ」
「…怒ったの?」
候補生は、スピアの差し出した手を握ろうとしない。
「全然。むしろ貴女の講義は cute だったわ」
そして、スピアと一緒にエレベーターに乗り込み、ドアが閉まるが…ボタンを押さないw
「あ、GLですょね」
ブラを替えてなかった候補生が笑顔でボタンを押す。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。万世橋の捜査本部。
「警部。SATOのパツキン姐さんからの宿題ですけど、例の爆発した自転車のウォーターボトルの中から、グリセリンと過マンガン酸カリウムの反応が出ました」
「過マシンガン…何?」
「過マンガン酸カリウム。水処理に使う酸化剤です。グリセリンは、食品にも使われ安全性が高いけど、混ざると萌え易くなります」
いまいちピンと来ないラギィ。
「とりあえず、宿題はセンセに提出して採点してもらいましょ。きっとジャンボ・ホリエモンが絡んでる。でも、今は被害者との関連を見つけないとホリエモンを追い詰める材料がナイわ」
「警部。ジャンボ・ホリエモンですが…コレが3ヶ月前の写真です」
「うわっ。ホントにジャンボね。何食べたらこんなにデブになれるの?」
刑事がモニターの画面を切り替える。
「あら?コレが同じホリエモン?コッチのはいつ?」
「先週の金曜です。ダイエット成功ですね。結果にコミットしてる」
「待って。コレは短時間の食事制限や運動で減る量じゃないわ。間違いなく"脂肪吸引"だわ。ジャンボ・ホリエモンが来たら医院と医師の名前を聞いておいて!」
脂肪吸引?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜もルイナのラボは眠らない。
「で、ラギィ。ジャンボ・ホリエモンの尋問は?」
「苦労したけど全部吐いたわ、ルイナ」
「殺人を?」
結論を急ぐルイナにアプリの向こうで失笑するラギィ。
「殺人はホリエモンじゃない。彼が吐いたのは脂肪吸引ょ。ベララと言う形成外科医が施術してる。ソッチは何かわかった?」
「凶器の仮説があるの。グリセリンは、普通に購入出来るけど、もし購入を秘密にしたければ、自分で作るコトも可能。その場合は、先ず吸引で取り出した脂肪を溶かすの。アルカリ液とワセリンを混ぜれば、自家製グリセリンの出来上がりょ」
「ソ、ソレが人間の脂肪なの?」
白濁した何かが入った試験管を見てビビるラギィw
「今日は牛脂ょ。今、私のラボはスキヤキの匂い。来る?5kgほどの牛脂ナンだけど、コレを買うのにも、お肉屋サンに思い切り怪訝な顔をされたわ」
「でしょうね」
「でも、脂肪吸引すれば楽に脂肪が手に入る。実際の犯行で必要になるのは、今回の実験の10倍の量なの」
「今回の実験?」
ココから白衣を着た僕の出番だ!コレはコスプレではない!
「みなさん!アプリを通じて、どーぞコチラに御注目を。下に自家製グリセリン。上に過マンガン酸カリウムの入った試験管を御用意しました。2つが混ざるのを防ぐのは、試験管中間にある脂肪層。だけど、試験管を揺らすと、この脂肪層は崩れてしまう!」
「例えば、自転車の乱暴運転とか?ねぇ人から吸引した脂肪で凶器の爆弾を作って爆殺したってコト?」
「諸嬢、ソレを実験で証明するワケだ。上手く逝けば、5人分のDNAの説明もつく。起爆装置の不在もね。いやぁルイナの仕事ってホント楽しいな。"脂肪爆弾"、実験スタート!」
試験管の入ったガラス箱を前にゴーグル装着。
耐ショック、耐線香防御…あ、閃光の間違いw
「あのね、テリィたん。"脂肪爆弾"は却下。正式には"脂肪加速型発熱性燃焼デバイス"ね」
「長過ぎて色気がナイな」
「検死官さんの身にもなって。死因に"脂肪爆弾"ナンて描けないわ」
超天才を相手の議論は不毛だw
「アプリで実験を御覧になってるみなさん。みなさんが見て、そしてお決めください。では、全てはコレを見た後に!」
ドラムロールが欲しい。気分はもう手品師←
スイッチを押すと試験管はガラス箱の中でユックリ回転←
すると試験管の中で何かが起き…爆発!破片が砕け飛ぶw
「やっぱり"脂肪爆弾"でキマリだろ?」
第3章 吸引者達
捜査本部の取調室。
「ねぇおまわりさん。午後に施術の予約が2件も入ってるのょ。早くして」
「どうせボトックスでしょ?施術は算術?」
「あのね。私は何かを加えるワケじゃナイ。余分なモノを消すだけ。ソレが仕事ょ」
ストリートギャングのジャンボ・ホリエモンから脂肪吸引を行った形成外科医のベララは、中年のやり手ババァ風情だw
「で、その時にツマらない創造性を発揮したワケね?」
「あら、何の話なの?おまわりさん」
「警部ょ。トボけなくても良いの。ジャンボ・ホリエモンの脂肪吸引の話ょ」
取り調べるラギィも"見ようによっては"ヤリ手ババァ?笑
「ジャンボ・ホリエモン?ソレ誰?美味しいの?」
「脂肪吸引したらジャンボじゃなくなった、ジャボ・ホーリのコトょ」
「医師には守秘義務がアル。ごめんなさいね」
提示された写真を突き返す、ベララ医師。
「ホリエモンの脂肪から作った爆弾で若者が殺された。殺人事件では、医師の守秘義務は通用しない。でも、その前に…このビフォーアフターを見て」
今度は黒焦げ爆死体の写真で、さすがに顔を背けるベララ。
「爆弾?なんのコト?」
「規制薬物の購入履歴を出して」
「もちろん出すわ。でも…あのね!吸引した脂肪は廃棄用のコンテナに入れたら、後は私はノータッチなの。産廃業者が引き取りに来て、即座に焼却処分ょ。モチロン、医療廃棄物専門の業者だから」
態度急変、ペラペラ喋り出すw
「その会社も調査対象だわ。連絡先と責任者名を」
「ちょっと待って」
「早く」←
スマホで産廃業者の電話番号を調べるベララ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
「姉様、新しい物件は見つかった?」
「ソレが…ネットに出てる半分は売約済みなのょ」
「もっと簡単な方法がアルわ」
僕の推しミユリさんがメイド長を務める御屋敷で、ヲタッキーズの3人娘(娘で良いのか?)がメイド姿で鳩首会談してるw
「ココ。このママ営業を続ければ?別にテリィたんが出て行けと言ってるワケじゃ無いんでしょ?」
「マリレ。貴女が1945年の陥落寸前のベルリンからタイムマシンでアキバに脱出して来た時、誰かの雇われメイド長になるつもりだった?」
「いぇ姉様、私は…」
「マリレ、貴女は?」
「私は地球が冷え固まって以来、ココにいます!」
「あ、そーだったわね」
溜め息をつくミユリさんを見てマリレが意見スルw
「わかったわ。私が姉様のために物件を探します。ホラ、コレなんかどーですか?路面店ですけど」
「まぁ素敵。もっと間取りを大きくして!」
「え。姉様、増築?」
またまた溜め息をつくミユリさん。
「違うでしょ。画面をょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜も捜査本部は眠らないw
「医療産廃業者サラド社の召喚令状をアキバ地裁に請求したわ。色々アドバイスをありがとう、ルイナ。コレで覚醒剤の生成とホウルのラボがつながるカモ」
「あのラボ、プソイドエフェドリンも何も見当たらないけど…」
「けど?けど何なの、ルイナ?」
捜査本部で、ラギィはラボのルイナとリモートで会話。
「でも変なのょ。ベララ医師の記録を見たの。1ヵ月で500kg近く脂肪吸引している計算になる。廃棄用コンテナに入れると約300個分ナンだけど」
捜査本部のモニターにデータ画像が流れる。
「でも、ベララの医院からサラド社への請求は100個分だけみたいなの」
「え。残りのコンテナ200個分の脂肪は何処へ消えたの?」
「私も知りたい。医療廃棄物関係の支払いが毎月計上されてれば、さも全量処理して法令遵守しているように見えるし」
ラギィ警部はピンと来る。
「やれやれ。法の抜け穴とも呼べない、古典的な規制回避のカモフラージュね。わかった。ベララが隠すなら、探し出すまで。任せて」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「まさか、僕まで夜中の張り込みに駆り出されるとは!」
「ごめんね。何か今回はミユリが忙しいみたいで」
「あのさ。人体の自然発火ナシだったら、SATO的には合同捜査は解消して、通常の警察案件での捜査を提案スルけど」
ベララの形成外科は神田リバー沿いにあり、僕はラギィと和泉橋東端に止めた覆面パトカーの中で息を殺し張り込み中w
「はいはい。Starbox coffee のリストレットショート3%ラテ。テリィたん、好きだったょね、新橋にいた頃?私としては"リアルの裂け目"絡みの捜査で磨かれた、その非凡な発想力に期待しているワケょ。あぁ中秋の名月!」
「何だかメチャクチャ上機嫌だな」
「だって、やっと現場に出れたのょ?やっぱり現場の空気は美味しい!しかも、テリィたんと名月の夜に2人きり。私、雌狼になろうかな」
無理矢理、コーヒーで乾杯させられる僕←
「おっと、もう邪魔が入ったわ。見て。ベララが台車を押して現れた」
「彼女、芝生の上を台車で運ぶ気だ。芝生が傷むな…あれ?ゴミ捨て場に向かうぞ?」
「あらゆる行為が違法ね」
僕達は、覆面パトカーから降りる。
「万世橋警察署です!ベララさん、まさか医療廃棄物を捨てに行くの?」
「今日お説教されたばかりだろ?悪い子だな」
「その廃棄用コンテナを開けて!」
渋々ベララが開けると…中は空っぽだw
「何か用?おまわりさん」
「え。いや、芝生に台車で入るなと注意しようかと」
「え。別件逮捕?」
女子同士で漫才やってる内にゴミ箱本体の蓋を開ける僕←
「ビンゴ!吸引した脂肪が生ゴミとして捨てられてる。ベララは、捨てに来たンじゃない。以前捨てた脂肪を回収しに来たんだ。ラギィ、しょっぴけ!」
「とゆーワケょ。アンタ、いつから捨ててたの?」
「実は1年前から…健康ブームに折からのコロナのせいで、お客は激減。経営は火の車ょ!」
何ゴトもイバッて聞こえる、その話し方が好きになれないw
「言いワケにならないわ。所詮は保身のために法を犯した」
「爆弾を作るよりマシでしょ」
「従業員は、このコトを知ってるの?」
「知ってたら、私がこんなトコロに来ないわょ!」
考え込むラギィ。
「でも、誰かが知ってる。そして、ソイツは貴女が捨てた脂肪を"下取り"しに来てる。いったい誰かしら…え。何?テリィたん」
僕は、街灯に取り付けられた防犯カメラを指差す。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜遅く。ルイナはスピアとアプリで会話。
「スピア、先に言っておくわ。"脂肪爆弾"と言う呼び名は却下。その上で、色々進展が…あら?捜査顔?」
「え。何ソレ?」
「市ヶ谷で何かあったの?」
PC画面の向こう側でスピアは困惑しているw
「実は…優等生タイプの候補生1人の神経を逆なでしたみたいなの。講義の後、エレベーターのボタンを押すよう試された」
「故意に?」
「ホボ間違いないわ」
ルイナにとってスピアは相棒、というか、ブッチャケ、この世で唯一の"お友達"なので、我がコトのように心配スル。
「権力コンプレックスの人間って、優等生タイプに多いの。自惚れ屋でヲタクを蔑視スル奴」
「ストリートでは色々と見て来たけど…」
「でも、エレベーターの行先ボタンを押さないだけじゃサイバー群から追放出来ないわ。ソレに市ヶ谷だって、幹部候補生は徹底的に調べるから、病的症状があれば見つけてるハズょ」
スピアから画像が送られて来る。
「実は、念のために過去のSNSとか調べてみたw彼女、上京前に地元の御屋敷でバイトしてた。その時のメイド仲間が自殺してる」
「ベストメイド賞?権威ある賞の受賞メイドね。生きていれば、秋葉原でメイドをやるのが夢だったカモ」
「ソレを彼女が殺したと?」
画面に"メイド自殺"の新聞記事。
「ワカラナイ。でも、自殺と無関係ではないと思う。実際、御帰宅日記を見ると、ほとんど彼女に御給仕させてナイの」
「ベストメイドなのに?」
「YES。何か変ょね」
スピアからアドバイス。
「デビス3佐には話した?彼のミスにもなりかねないわ」
「自殺の件は知ってた。関連はナイと評価してるけど、見過ごすコトは出来ないわ」
「ソレで捜査顔なワケね?ヲタク蔑視の証拠を掴む?」
脂肪爆弾事件より捜査に乗り気なルイナ←
「そーなの。このママほっとけば、彼女は12週間後には、サイバー群に任官スル」
「じゃ急がなきゃ。貴女が市ヶ谷に残れるのは、あと23時間だわ」
「そうね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕が指差したのは、コーヒーショップの防犯カメラらしい。
「押収した先週の画像です。ジャンボ・ホリエモンの手術の翌日。ベララは23時14分に、恐らく吸引脂肪を"萌えないゴミ"に捨てに来た。で、彼女が去った4分後に現場に青い大型のSUVが横付けしてます。残念ながらカメラの角度が微妙でナンバーは不明」
「スゴいな!自分で見つけた防犯カメラではアルけど、大した手がかりゲットだね」
「さすがは、テリィたんの"大発見"だわ。あとは、現場付近の聞き込みで次の手がかりを見つけ出すまで。ココからは足で稼ぐ刑事の仕事ょ。任せて」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「なぁコレ、完全に警察の仕事だょな?1ヶ月で靴底が擦り減る式の、足で稼ぐ昭和な刑事ドラマだけど、ソレに何で僕まで駆り出すの?」
「いーの。もうすぐ今回も終わりだから」
「せっかくだから、ジーパンでも履いてこよーかな」
冗談で言ってみたが、真剣に首を振るラギィw
「ヤメて。ジーパン警部が汚れちゃう」
「あのさ。どーやら目撃者は皆無。見てても車だけで、誰も運転手までは見てないよーだ」
「じゃまた適当に監視カメラでも見つけてょ」
恐るべき他力本願寺だw
「もうカメラはナイ。次は駐禁監視員の緑のおじさんだ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
「おかえりなさいませ…あら、テリィ様」
「お夜食に"マチガイダ・サンドウィッチズ"のチリドッグを買って来た。実は、捜査で徹夜ナンだ」
「まぁ!じゃ急いでコーヒーを淹れます」
ミユリさんは、手早くパーコレーターを組み立て"煮詰める"。僕の1番好きなコーヒー。スタボなんか目じゃない←
「3本、買って来た。ミユリさんも食べる?」
「いただきます。他に御帰宅もいらっしゃらないので」
「…物件探し、はかどってる?」
ミユリさんの手がピタリと止まる。
「まぁ!ドッチが話したのですか?エアリ?マリレ?」
「両方w」←
「誤解なさらないで。メイド長として、テリィ様から御屋敷をお預かりスルのは、この上なく楽しいのです」
僕は…まぁ話し出すと色々あるンだけど、前シリーズでゴタゴタあって、今はこの御屋敷のオーナーもやっているのだ。
「ミユリさんの気持ちは良くわかる。でも、ココでメイド長をやっていても、自立は出来るンじゃナイか?」
「テリィ様は、そうかもしれません」
「ミユリさんが新店舗へ出て逝くなら、僕も後釜を見つけるしかナイ。心当たりは?…まさか、エリス?」
エリスは、ミユリさんの前の"推し"だ。元カノ…的なw
「ミユリさん。今のママ御屋敷を続けて、家賃を払ったら?自立した大人のメイドがそうするようにね。僕のコトは、契約相手と思えば良いさ」
「…わかりました。実は、引っ越すとモノをなくすのです。へその緒とか」
「そりゃ良くないな。じゃコレから月初に10万円の家賃を払ってね」
ミユリさんはおちょぼ口を尖らせる。萌え←
「高過ぎます、テリィ御主人様」
「好立地だからな。信用調査も必要だな。池袋時代の元カレにヒアリングだ」
「…おやめください」
ミユリさんは、アキバでNo.1のメイド服が似合う女子ナンだけど、うらめしそうな顔をスルと…もぉ最凶っ!萌える!
「身元保証も、し・な・きゃ」←
「…テリィ様。このメイド服が、私の身元保証です」
「了解、ミユリさん。ソレで十分だ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。万世橋の捜査本部。
「しかし、駐禁に感謝スルのは初めてだわ。ホウル宅付近で青のSUVが3回も駐車違反してる。SUVの所有者はアルザ・リーム。職業は…フリーランスの化学者?」
「ナルホド。化学者なら覚醒剤を精製出来ますね」
「脂肪爆弾も作れるわ」
因みに、ココで逝う"覚醒剤"は腐女子がスーパーヒロインに覚醒した気分になれる特殊な薬のコト(つまり覚醒剤?)←
「しかも、アルザ・リームはベララの医院が開業してるのと同じビルに勤務経験があります」
「脂肪の"萌えないゴミ"投棄にも気づいてたカモね。しかし、ビルの関係者は全員リスト化してたンじゃナイの?」
「路面店の処方箋薬局勤務でしたが、薬物検査で陽性、薬の横領もバレて解雇、その後に逮捕されてます。ホウルとは、彼が薬物リハビリ施設に入ってた頃に接点があった模様」
ラギィは大きく溜め息をつく。
「全く何をリハビリしてたのやら。自分のドラッグ依存症をビジネスに変えたワケねw」
「ソレもホウルが覚醒剤の精製法を覚えるまでの話でした」
「そして、アルザ・リーアにとってもホウルは不要になって…脂肪爆弾で始末したワケか」
ラギィは号令を下す。
「アルザ・リーアを挙げるわょ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、大本営地下壕跡。防衛省地下にあり、地下トンネル施設には見学コースもあるが、この時間に見学者はいない。
「こんな場所に呼び出してゴメンナサイ。貴女がヲタクに頭を下がるトコロ、誰にも見られたくないだろうと思って」
「何様?貴女こそ、ヲタクのくせに自惚れナイで」
「ストリートで色んな女を見てきた。貴女みたいなタイプは大好物。ペニィとは違うの」
ココで突如 friendly な対応を見せるサマザ。
「ペニィ?"Bigbang theory"のグラマラスな…」
「げ。海外ドラマのヲタクだった?もっと早く知ってれば…でも、もう遅いわ。貴女が自分よりヲタクだと思って嫌ったメイドさんょ」
「自殺したペニィ?覚えてる。残念だったわ」
鼻で笑うスピア。
「好都合だったンでしょ?ヲタクに負けるなんて、自分のプライドが許さなかった」
「私が殺したと?まさか。私を疑うなんて何様?」
「あらあら。ヤタラ過剰に反応してるわ」
自分がヲタクに揶揄われるとは…ムキになるサマサw
「ペニィは生意気だった。御屋敷が入ってた雑居ビルのエレベーターで大人しく閉ボタンを押していれば、御給仕させてやったのに…でも、私は殺してナイわ」
「知ってる。でも、ソンなコトはどーでも良いの。ねぇ聞いた?」
「全部ね」
地下トンネルの向こう側から足音が近づく。デビス3佐だ。
「無実の罪で疑いをかけて、リアルの罪を告白させる。君、スピアから習わなかったのか?」
「デビス3佐wでも、私は犯罪は何も…」
「進化した人類と言えるヲタクの蔑視は、今でこそ違法ではナイが、防衛省サイバー群の行動規範には反する。つまり、ココにいる資格がナイ。君は除隊だ」
左右からMPに拘束されるサマサ・マザマ。
「触らないで。逃げはしない!」
MPの手を振りほどきながらも連行されて逝く。
「お手柄だね、スピア。ホント、僕達は最良のチームだ」
「私達がチーム?」
「だろ?ほら、そのマイク」
スピアのスク水で隠した胸の谷間には…隠しマイク←
「OK。確かに音声機材はお借りしたけど…」
「借りたモノは返さなきゃな」
「え。」
ココで、爽やかイケメンはヲタク殺しの決めセリフを吐く。
「厚生棟で"冷やし牛乳ラーメン"をおごるょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アルザ・リームがラボ兼住居に使用中のプレハブは、神田佐久間河岸の神田リバー沿いにアル。
黒いヘルメットに防弾ベスト、短機関銃で完全武装の万世橋の突入班が集合。直前の作戦会議。
同じく完全武装のラギィ警部が仕切る。
「被害者ロバト・ホウルのラボでは、機材は全て新品だったわ。従って、今回突入するアルザ・リーム容疑者のラボはフル稼働中と思われる。覚醒剤の精製所には、爆発性の危険物が多い。注意して」
「特に塩化合物は爆弾並みの爆発力があるわ。みなさん、気をつけて」
「OK、ルイナ。今回、ルイナには我々のカメラからの画像をSATOのラボで確認、危険物を識別してもらうコトになってる」
突入隊員達は、それぞれ黒ヘルメットに装着したカメラの作動を、ラボではルイナがモニターを確認しサムアップする。
「行くわょ。みんなに神田明神の御加護あれ。貴方達は裏に回って…あ、あれ?ムーンライトセレナーダー?何しに来たの?今回はSATOとの合同捜査じゃなくなったのょ(せっかくテリィたんと良い雰囲気で突入だったのにw)」
「いいえ。アキバで起こる全ての案件にSATOはコミットします(何ょテリィ様に急接近?警察のクセして泥棒猫じゃナイの?)」
「でも!何も変身しなくたって良いじゃナイ。ズルいわ、そのコスプレ!とにかく、貴女はココでテリィたんと待機。突入は警察が行います!」
ムーンライトセレナーダーは、上はメイド服に下はバニーという作者の妄想満載のコスプレなのだ!
前は大人しく?白のセパレートだったが、エリスとの闘いに敗北し今回のコスプレに変更しているw
「突入!GO!GO!GO!」
警官隊がドアの左右に分かれ"マスターキー"と呼ばれる斧状のモノを鍵穴に突っ込み、ハンマーで叩き鍵を破砕スル!
「ターゲットは在宅だ!鍵がある」
「奥へ!」
「キッチンが精製工場になってます!」
アルコールランプがフラスコを熱し数々のビーカーが並ぶ。
「STOP!ラギィの右側の容器は赤リンょ。火花ひとつで有毒ガスが出るわ!」
突入班員が開けっ放しのタッパウェアに慎重に蓋をスル。
横のタッパには誰かの1部の脂肪が山盛りになっているw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕とミユリさんは、プレハブに突入して逝くラギィ達を遠巻きに見ながら、神田リバーを見下ろしボンヤリしてる。
去年、神田リバー沿いにサイクリングロードが整備されたけど、犬や自分の散歩に混ざりジョギングする陸上女子。
鍛えた肉体美は古今東西を問わズ(僕だけじゃナイw)異性の目を引くモノだが…あ、あれ?アレは例のフリーの化学者?
「ミユリさん。あの陸上女子!」
「お好みですか?テリィ様には少し胸が貧乳…」
「違うょ!アルザ・リームだ!」
僕がプレハブに飛び込みラギィ達を呼び出し、表に戻ると、サイクリングロードでコスプレ女子2名が真昼の決闘だっ!
「貴女が逃げ切れる確率は5%以下ょ。ギブアップして」
「NO!貴女こそ覚悟して!アロンジェ・ル・ブラ!」
「へぇ。最近、新作ラッシュが続く流行りの陸上女子AVかと思ったら…フェンシングの心得もアルのね?」
廃材の角棒をフェンシングみたいに構えるアルザ・リームw
「あのね。今どきのアスリート系AVは何でもコスプレするの。ある時は新体操、ある時は陸上女子、またある時はフィギュアスケート。しかしてその実態は愛の戦士QT…」
「あら?10分床屋さんもヤルの?」
「ソレはQB。私はハニーって言おうと思って…」
ムーンライトセレナーダーは、既にウンザリ顔だ←
「めんどくさい女。焦げて」
電光一閃!真っ黒焦げの陸上女子が大の字でピクピク←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
「姉様。あのママ河岸でフェンシング対決してれば、秋葉原で初めてフェンシングを逮捕に使ったスーパーヒロインになれたのに」
「急いでたの。テリィ様の目が、ヤタラ陸上女子に釘付けになっていて…」
「え。僕は、ミユリさんの怪傑ゾロを見たかったのに」
飛んで来た火の粉はサッサと払おうw
「まぁウクライダ侵攻でZはウケが良くないから、あの陸上女子にYの刻印とか」
「テリィ様がおっしゃると…何か、その…」
「ヒワイだわ」
ラギィが、ズバリ直言←
「そーね」
「私もそう思う」
「全くだわ」
何でだ?ココで"オンライン飲み"のルイナから助け船。
「ねぇみんな。スピアから市ヶ谷のお土産Tシャツをもらったの。黒Tに白字で"防衛省"って描いてあるの。今、着てルンだけど」
「素敵!私も欲しいな」「私も」「私も」「私も」
「ルイナは、市ヶ谷行きを躊躇った私の背中を押してくれた。でも、今では行って良かったと思ってる」
珍しくスピアは、晴れやかな顔だ。
「ホントにそう思ってる?」
「心からそう思ってる。私、一般人の前で話しが出来るようになった。候補生のみんなを誇りに思えた。私達ヲタクには、好きなモノのためなら廃人になる覚悟がある。ソレが例え2次元でも、萌えるモノがある人は、もっと人生に自信を持って良いと思った」
「逆に廃人になる覚悟のナイ人はヲタクになっちゃダメってコト?(爆笑)…そーいえば、例のフリー化学者。元は半島のeスポーツ選手のドロップアウトなんだって」
話は井戸端会議風に流れ、僕はモニターを眺める。
「スピア。そのお土産Tシャツ、市ヶ谷の厚生棟の売店で買った奴か?」
「そうょ。何で?」
「いや。てっきり神田跨道橋下のインバウンド向け面白Tシャツ屋で買ったのかと思ってさ。表の文字は"防衛省"だけど"衛"の字が何かヘンだ…ソレに背中に"female boob warrior"とあるぜw」
訳すと"巨乳兵"かな?"風邪の谷"のパロディ?笑
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"人体自然発火"をテーマに、爆死する宅配フード業者、腐女子がスーパーヒロインに覚醒する薬を精製するフリーの化学者、防衛省のイケメン佐官、差別主義のサイバー群の訓練生、脂肪吸引で儲ける形成外科医、医療産廃業者、爆弾魔?を追う超天才やハッカー、ヲタッキーズ、敏腕警部などが登場しました。
さらに、ヒロインの独立話やハッカーの防衛省への出向?話などもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、コロナ患者高止まりの中で全数調査を変更しつつある秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。