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新太平洋大陸  作者: 双理
一章 無謀な依頼
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無謀な依頼4

 取り敢えずダンジョン内部に侵入したが、入り口付近は昨日の訓練で狩り尽くしていたので、今のところはモンスターに遭遇していなかった。

 気を抜いている訳ではないのだが、索敵のスキルにも反応もない為さっさと先に進む事にする。

 しばらく進むと、道が二手に分かれていた。


「誰かマッピングのスキル持ってるか?」


 マッピングのスキルは、その名の通り自動でマッピングをしてくれる便利スキルだ。

 頭の中で、自分達が進んできた道順を3D映像のように見ることができる。


「俺達は持ってませんね」


 イケメンが答える。


「誰か取っとけよ。特にメガネ、お前は斥候役みたいなもんだろ」


「いえ、僕は別に斥候役って訳では……えーと、分かりましたけど、今はスキルポイントがなくて……」


「しゃーねーな、今回は俺がマッピングしとくか」


 マッピングのスキルを起動して先に進む。


「誰か、後ろにも索敵を掛けとけよ」


「なぜですか?後ろには何もいなかったじゃないですか」


 イケメンが不思議がっている。


「別れ道の後だ。下手したら別の道から来たモンスターに囲まれる」


 コイツら、少しは頭使えよ。


「なるほど。分かりました、僕がやります」


 今度はメガネが機能してくれたようだ。

 それからも、ダンジョンを進む上での注意を指導しながら先を急ぐ。


「……先輩は、ダンジョンを攻略したことがあるんですよね?」


 真夏が聞きにくそうに聞いてくるが、それに答える気がない俺は聞こえないふりをした。


「先輩、聞いてますか?ダンジョンの話を聞きたいんですが……」


「そうですね、少しでも情報があるなら僕たちも聞いておきたいです。」


 イケメンもそれに同調してくる。


「ダンジョンを攻略する方法は教えているつもりだ。モンスターの情報も渡してるしな。お前らにそれ以上の話をする気はない。黙って進め!」


「新庄さんのケチー」


 ギャルがなんかほざいているが無視だ。

 真夏も聞きたそうにしているが、ここまで言えばしつこく聞いてはこないだろう。


「モンスターが来るぞ!全員気を引き締めろ!真夏、まずは俺達だけで片付けるぞ」


「了解です!」


 俺はすぐに戦闘体制に入る。

 華菱の探索者達はまだ切り替えれずにいたが、流石に真夏はその辺を弁えており、すでに自分の武器であるハンマーを構えている。


「えっと……僕たちはどうします?」


 イケメンが、気が抜けるようなことを聞いてくる。

 使えねーな……

 その態度で判断する。


「後ろで見てろ!」


 俺たちの前に現れたのはでかいネズミのようなモンスター、グラタニーマウスだった。

 まだこちらには気づいていない。


「ネズミ3匹だ。一気に片付けるぞ!」


「了解!」


 俺が前に走り出すと、真夏がその後ろに続く。


「右を頼む!」


「分かりました!」


 俺は向かって左にいるネズミに狙いを定め、スピードを一段階あげ一気に距離を詰める。

 奇襲だった為か、その速さについてこれなかったネズミの胴体にナイフを突き刺す。

 視線を移すと、真夏も奇襲に成功して1匹仕留めたようだ。

 すぐに中央にいるネズミに意識を向けると、まだこちらに対応しきれていないのが分かった。

 

「おらよっと!」


 俺は小石を拾い、ネズミに向け投げつけ注意をこちらに向けさせる。


「決めろ!」


 真夏は瞬歩のスキルを使い一気に距離を詰め、ネズミの頭を後ろからハンマーでぶっ潰した。

 ネズミどもは光の粒になって消えていく。


「終わりだ」


 あたりに他のモンスターの気配はない。

 後ろでは、華菱の探索者達が呆然としている。


「……えっと、早すぎません?」


「こんなもんだろ。なあ真夏」


「ですね。グラタニーマウスは狩り慣れてますし」


 コイツらは驚いているが、レベルの高さでゴリ押しただけだ。

 大した事はしてない。


「新庄さんって、どれぐらいのレベルなんですか?」


「40位だ。いいからさっさと先に進むぞ」


 適当に答え先に進む。


「……絶対嘘ですよね?」


 何か聞こえるが、正直に答える義務もない。

 それに真夏はそれぐらいだろうから、完全に嘘という訳じゃない。


 その後、俺達は幾度かモンスターと戦闘を繰り返し、2階層の入り口を見つけることに成功した。

 それは地下に続く階段になっていて、結構深くまで続いているのか底までは見えない。

 分かりやすい区切りなので、この階段が階層を分けているのは間違いないだろう。


「もう少し手こずるかと思いましたけど、意外とサクサク進みましたね」


 イケメンは、とりあえずの目的が達成された為か安心したようだった。


「お前らは、殆ど何もしてないだろ?」


「新庄さん達が強すぎるんですよ。手を出す隙も無かったです」


 俺と真夏で殆どのモンスターを倒してきたためか、華菱組は昨日と打って変わってまだ余裕がありそうだ。


「階層が変わると、一気にモンスターが強くなる。気を抜くなよ」


「はい、分かりました。……それにしてもこの階段、一体誰が作ったんですかね?」


 イケメンが地下に続く階段を見てそう聞いてきたが、そんなの俺が知る訳が無い。


「それを調べるのは、俺らの仕事じゃないだろ」


「それはそうですが……何か気味が悪くて」


 確かに、こんな自然にできた洞窟みたいなところに、明らかに人工物とわかる階段があるのは不自然だ。

 暗視のスキルを使っていても、薄暗い階段というのは不気味に感じる。


「まだ昼前だし、もう少し先に進むぞ」


 まだ余裕がある為、先に進む判断をする。

 全員が頷き、俺達は階段を降り始めた。


 2階層に入ると景色が急変した、といった事もなく今までと変わらない洞窟が続いている。

 モンスターの数が若干増えたが、その種類は変わらなかった。

 今度は、華菱組にも戦わせる事にする。

 俺と真夏を交えた連携の確認したが、特に問題は無いようだ。

 まあ、こちらが合わせてやったので当然だったが。


 そして3階層の入り口も意外とあっさり発見する事になる。


「これは……何かやばそうですね……」


「そうだな……明らかに今までとは様子が違う」


 それは、この階層に降りて来た階段と同じ作りだったが、その周りの壁が今までのような洞窟の岩肌ではなく、人工の石壁のようになっている。

 底までは見えないが、石壁はずっと続いているように見える。


「よし、今日はここで引き上げるぞ」


 ダンジョン内で野営するか迷ってたが、まだ全然引き返せる距離だ。

 一旦、引き上げることにする。

 ダンジョンで無理は禁物だ。


 階段の下にある暗がりを見つめる。

 この先に、どんな地獄が待っているのかと思うとマジで嫌気がさしてきた。

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