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新太平洋大陸  作者: 双理
四章 混ざり合う陰謀
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混ざり合う陰謀8

「何だこれは?」


 何もしてないのに、ステータスウインドウが勝手に開いた?

 ……このメッセージは、俺に向けた物なのか?

 誰が?どうやって?


 無数に浮かぶ疑問が、俺の困惑をより深める。

 

「先輩、これ!」


「うわっ、何です!」


 半透明の画面越しにふたりを見ると、こちらと同じようにウインドウが目の前に浮かんでいるのが見えた。

 恐らく同じメッセージが表示されているのだろう。ふたり共、ひどく驚いているようだ。


「これは……どうしましょう?」


 真夏が困った表情でこちらを見てくるが、俺としても理解が追いつかない状況。そんな事聞かれても困る。

 強いて何か上げるとすれば、yesかnoか選択しろって事だろうけどな……


 力が欲しいか━━そう聞かれれば、間違いなく欲しい場面ではある。

 だが、いくら何でも胡散臭すぎる。

 

 いったん回答を保留したい所だが、一向に画面が消える気配は無かった。

 いくら透けているとはいえ、こんなものを視界に入れながら命懸けの戦闘はしたくない。何か手を打たなければ……

 

「なあシロ、コイツが何か分からないか?」


 困った時に子犬に頼るのはどうかと思ったが、元は精霊王なのだから相談役としては妥当だろう。

 それに、こんな不可思議な現象は、シロの世界に関係しているかも知れない。


「私の世界にはステータスウインドウというものがありませんので、それに関しては分かりませんが……ずっと気になっている事があります」


「何だ?」


「また、見られています」


「見られてる?……監視者か!」


 監視者━━前に6号との戦闘を覗いてた奴だ。シロがその時に、もしかしたら神かも知れないと言っていたが……

 索敵スキルの範囲を限界まで広げて反応を探ってみるが、範囲内にはそれらしき気配は無い。

 取り敢えず近場には居ないようだし、戦闘に介入してくる事は無さそうだ。キメラの相手だけで手一杯な状況だけに、これは安心材料だと言える。


「気が散らないように黙ってましたが、戦闘が始まった直後からずっと監視されていました」


 それは良い判断だと思えた。さすがと言うべきだろう。

 とてもじゃ無いが、キメラは他に注意を割きながら戦える相手じゃない。


「という事は、このメッセージはその人が送ってきたものなんでしょうか?」


 真夏は見知らぬ奴に覗かれているという事に嫌悪感を覚えたのか、自分の肩をだき、身を竦ませていた。

 

「断定はできないが、多分な……」


 タイミングからしても、このウインドウと監視者には何らかの繋がりがあるとは思えるが、そう断定して良いのかは判断に悩む所だ。

 だが、前回シロの死亡を誤認した事もあり、その可能性は高く思える。


 仮にこのメッセージが監視者によって送られたものだとして、何をこちらに伝えたいのか……

 メッセージの内容をそのまま捉えれば、y esを選べば何らかの力をくれるって事だろう。ピンチの時に力を授けるくれるなど、それこそ本当に、物語の中の神様のようだ。

 いや、悪の道に誘う悪魔という線もありえるか……


『おや?見えてないのかな?』


 ウインドウに新たな文字列が浮かび上がる。

 こんなメッセージが送られてきたって事は、こちらを見る事は出来ても、会話までは聞こえて無いって事だろう。


『力が欲しいか……y/n』『力が欲しいか……y/n』『力が欲しいか……y/n』『力が欲しいか……y/n』『力が欲しいか……y/n』『力が欲しいか……y/n』『力が欲しいか……y/n』『力が欲しいか……y/n』『力が欲しいか……y/n』『力が欲しいか……y/n』『力が欲しいか……y/n』『力が欲しいか……y/n』『力が欲しいか……y/n』


「うおっ!」


 一瞬で複数のウインドウが立ち上がった。それは全て同じメッセージが書かれていて、俺を覆い隠す様に浮かんでいる。

 その画面越しに、真夏と結も同じ状況なのが見て取れた。そのウインドウを振り切ろうとしたのか、結が急に走り出す。

 …………体力の無駄遣いしてんじゃねーよ。


 これはもう、どちらかを選ばなければ戦闘に戻る所じゃなさそうだ……いくら何でも邪魔過ぎる。


「新庄くーん。ぼちぼち戻って来てもらえるかな?こっちはそろそろ限界なんだけど」


 肩を叩かれ振り向くと、そこには再びフレッドの姿があった。

 コイツ━━索敵を無効化するスキルでも持ってるのか?

 そんなスキルが有るなんて話は聞いた事が無いが、それがコイツが単独行動を許されている要因かも知れない。

 全くコイツの存在に気付けず、それも2回も肩を叩かれる程まで接近を許してしまった。内心ではかなり驚いていたが、それを表に出すのは何だか癪に触る。


「悪いなー。ちょっと立て込んでんだ。もうちょっとだけ粘ってくれ」


 俺は冷静なふりをして、フレッドの両肩に手を掛けると、キメラのいる方向に向き直させた。更にその背中を手で押し、戦闘に戻るように促す。

 今まで散々サボってたんだから、限界までこき使ってやろう。どうせ戦うのは幻影なのだから死にはしない。


「まあ、立て込んでるのは見れば分かるけど……」


 俺達の周りに浮かぶ無数のウインドウを見て、フレッドが訝しんだ目で俺を見てくる。

 これを見逃すような奴じゃねーよな……


「仕方ないねー、もうちょっとだけだよ。その代わり、何があったのか後で詳しく教えてくれるんだよね?」


 フレッドはふざけた態度のままだったが、その言葉尻には有無を言わせない雰囲気を滲ませている。

 どうせ俺達も飲み込めていないような事態だ。

 そんなんで良かったら、後でいくらでも説明してやるよ━━そう思い、俺はフレッドの言葉を了承する事にした。


「分かったから、さっさと行け!」


 追い払う様に手を振ると、フレッドは姿が蜃気楼のように揺らめき、消え去った。どうやら目の前に居たフレッドも幻影だったようだ。

 どんだけ厄介なスキルなんだよ……


 場合によっては、キメラを倒した後にコイツの相手をしなければならない。

 倒せるかどうかも分からないのに、そんな余力を残せるか━━何とも頭が痛くなる話だ。


「いつの間に仲良くなったんですか?」


 真夏が不思議そうに俺を見てくる。

 その、あまりに能天気な言葉に何だが腹が立ってきた。


「冗談だろ。あんなスパイ野郎と仲良くなんかなれるか!」


 今のやり取りを見て、どうやったらそう思えんだよ……

 もしかして、フレッドが善意からキメラの相手を買って出ていると思ってんのか?変な所は鋭いくせに、こういうのには鈍いんだよな……

 

「そんな事より、このメッセージをどうするかだが……」


「ですね……」


 そうは言っても、俺の中では既に拒絶する方に傾いている。こんな得体の知れないものを受け入れる気になれないからだ。

 仮に、このメッセージを受け入れて力を得られたとしても、何らかの代償を求められる可能性ある。この逼迫した状況では、デメリットになり得るものは出来る限り排除したかった。


「誰か一人だけy e sを選んでみるっていうのは、どうでしょうか?」


「誰がやるんだよ?」


 真夏がジッと俺の目を見てくる……

 俺か?こいつ……俺にやらせる気なのか?


「冗談ですよ。私がやります。yを押せばいいんですかね?」


 真夏がそう言って、ウインドウに手を伸ばす。

 こいつには、恐怖心ってもんが無いのか?ちょとは躊躇えよ……


「嫌な予感しかしないから、やめとけって。にしても鬱陶しいな……」


 俺は真夏の行動を言葉で制止した。

 もしこのウインドウがタッチパネル式なら、腕を動かしてしまうと変に選択してしまい兼ねないからだ。


 それにしても、このウインドウは鬱陶し過ぎる━━手で払いのけたかったが、そうする訳にもいかない。

 クソ!ナイフで切り裂いてやりたい気分だ……


『力が欲しいか……y/n』『力が欲しいか……y/n』『力が欲しいか……y/n』『力が欲しいか……y/n』『力が欲しいか……y/n』『力が欲しいか……y/n』『力が欲しいか……y/n』『力が欲しいか……y/n』『力が欲しいか……y/n』『力が欲しいか……y/n』『力が欲しいか……y/n』『力が欲しいか……y/n』『力が欲しいか……y/n』


 俺の声に反応したかのように、ウインドウの数が一気に倍くらいに増えてしまった。まさか、鬱蒼しいと言ったのが聞こえてたのか?

 何だか、だんだん揶揄われてるような気がしてきた……

 このメッセージの送り主が神様なんだとしても、碌な性格はしてなさそうだ。寧ろ、どこか幼稚さすら感じられる。


「もう、邪魔ですコレー!力なら欲しいですよ!」


 とうとう結のストレスが限界を突破したらしく、駄々をこねる様に大声で喚き出した。

 最近、こいつの幼児化は止まる事を知らない。


『了承した。さすれば汝らに新たな力、魔を払う強力な武器を授けようではないか』


 随分と芝居がかって書かれてあるメッセージが表示されると、次の瞬間、俺達が手にしていた武器が光に包また。

 徐々に光量が増していき、眩しくて見てられない程に輝き出す。思わずナイフを手を離しまったが、それは落下する事なく空中に留まり、更に光を強めた。


 ちょっと待て……今、汝『ら』って言ったか?

 まさか一人分じゃなくて、全員分の選択肢だったのか?

 て言うか━━


「聞こえてんじゃねーか!」


 やっぱりこの神様は、碌な性格じゃ無さそうだ……

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