精霊の王9
「レベル60!それは本当の事なのですか!」
「ああ……そんな驚くことか?」
確か公表されている中で、現在の最高レベルが68。
公表してない本当のトップでも、レベル80までは届かないだろうというのが大方の意見だ。
それを考えれば俺のレベルは決して低くはないが、オベロン程の存在がここまでの反応を見せる程とは思えなかった。
「いえ、失礼しました。こういった事が、ここが異世界だという証拠なのでしょう。私には、あなたがそれ程の力を持っているとは思えませんから、私の世界とこの世界では、レベルの数値に大きな開きがあるという事なのでしょう」
それは、確かにあり得る話だと思う。
違う世界同士が、全く同じシステムだと考える方が不自然だ。
「ですが、確認は必要でしょう。少し付き合っていただけますか?」
「それは構わないが、何する気だ?」
「あなたにモンスターと戦って頂きます。あなたの実力を確認させて頂きたいのです」
俺としてはかなり嫌な提案だったが、逆にオベロンの実力を知る事が出来るかも知れないと思い、その提案に乗る事にした。
「なあオベロン、あんたは俺のレベルがどれぐらいだと思ったんだ?」
俺とオベロンは、モンスターを探して精霊の森の中を歩いていた。
近場ではオベロンが場を支配しているために、モンスターが近づかないらしい。
無言で歩くのも何なんで、そんな疑問を投げ掛けてみた。
「そですね……私の見立てでは、レベル2にも達していないですね……」
「マジか……」
オベロンの口ぶりから、それが決して高くないのは分かる。
俺って、そんな気を使われるくらい弱いの?
それなりに、自信あったんだけどな……
「まだ、分かりませんよ。あなたの能力を実際に観て判断した訳ではありませんし……もしかしたら、レベル3ぐらいはあるかも知れませんよ」
そんな慰めを言われても、誤差の範囲だとしか思えないんだが……
「私の世界では、レベル20を超える者は存在しないのです」
気まずい空気を変えようとしたのか、オベロンは自分の世界の事を話し始めた。
「そうなのか?」
「ええ、これは私の世界の創生神話の中で語られている話なのですが、私の世界はレベル20を超えるものを生み出すために作られたと言われています」
レベル20ねぇ……
こっちの世界では、探索者として三流ってところだな。
レベル20が上限っていうのは、俺の感覚では随分低く感じるし、中途半端な数値に思える。
「かつて、まだ神が存在していた時代、世界の存在理由を神に聞いた人間がいました。それに対する答えは、『神に並び得る存在を生み出す為』だったそうです」
随分と変な話だよな……自分に逆らう可能性のある者を、自分で作るのか?
何のメリットがあんだよ。
「また、何だってそんな事を?」
「その答えは、正確には伝えられていません。一説では友を欲したとも、その永遠の命を終わらせてくれる者を求めたとも、言われていますが……」
「神様ってのは、随分と精神的に病んでんだな……」
俺は、わざと茶化すようにそう言ってしまった。
真面目に神の事を話をしてるのが、段々恥ずかしくなってきたからだ。
「ふふ、そうなのかも知れませんね」
オベロンの返事は、くだらない質問をする子供をあやすような口調だった。
自分の照れ隠しの行動が、逆に恥ずかしい物のように感じてしまう。
オベロンはそんな俺の思いに気付くこと無く、話を続けた。
「その者が、『では、どうすれば神と並び立てるのか?』と更に質問すると、『レベル20の壁を超えた時、神に至る道が開かれ、神の世界へと導かれるだろう』と答えが返ってきたそうです」
「神の世界か……いかにも神話って感じだな」
こっちの世界で言う天国とかそういった感じだろうか?
いや、それじゃただ死ねばいいだけか……
「そうですね。私もこの神話の全てを鵜呑みにはしていませんが、事実、レベル20の壁を超えた者は私の世界には存在しません」
「因みに、あんたのレベルは幾つなんだ?」
「17です。最も今はその力の殆どをゲートに注いでいる為、レベル5程度の力しかありませんけどね。この世界ではそれでも十分と思っていましたが……」
それで俺のレベルを聞いて、驚いたって訳か……
オベロンとしては、自分より弱いと感じていた俺が、予想より遥かにレベルが高かったという事になる。
しかも、そのレベルが誰も到達した事がない程高い物だったのだから、確認せずにはいられないだろう。
だが、実際に戦った訳じゃないが、俺自身もオベロンやイフリートに勝てるとは思っていない。
それなのに、わざわざ確認する必要があるのだろうか?
そもそも、オベロンはレベル17で世界に穴を開けている。
レベル17程度でそんな事ができるなら、この世界ではそれ以上のレベルのやつなんかゴロゴロいるので、今頃この世界は穴だらけになってそうだ。
今まで話していた通りに、俺の世界とオベロンの世界のレベルには、数値に大きな違いがあるのは間違いないだろう。
「では目的を果たしましょうか。丁度よくモンスターも見つかりましたし」
オベロンの昔話を聞いているうちに、オベロンの支配している領域を抜け、モンスターの生息地に着いてしまったようだった。




