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新太平洋大陸  作者: 双理
三章 精霊の王
36/79

黒幕は受付嬢3

 6号と遭遇した日から三日が経ち、その間も俺達はポータルを探し続けていた。

 あの時の事もあって街の外には出たく無かったんだが、結局は真夏と結に連れ出されてしまい、現在では更にもう一つのポータルを見つけ出している。

 そして本日、俺が待ちに待っていた報奨金の情報がついに公開された。

 報奨金の額はポータル1つにつき500万だと発表され、探索者どもは大いに賑わっていた。

 俺達は既に2つ見つけているので、合計1、000万の収入が得られる見込みになっている。

 やったぜ!


 しかし、喜んでばかりはいられななかった。

 何故なら、報奨金の事が真夏に知られてしまったからだ。

 今日もポータルを探す為に朝から連れ出されたのだが、ついでに受けられる依頼がないかと集会所を訪れたのが拙かった。


「先輩、絶対この事知ってましたよね……」


 真夏が疑惑の目で俺を見てくる。


「たまたまだ。たまたま」


 俺はなんとか誤魔化そうとしたが、信じて貰えないのは明白なのであまり意味はないかも知れない。


「新庄さんが、報酬無しで働く訳なかったですよ……」


 ああ、そうだよ……何とでも言ってくれ。

 だがな、お前の言葉なんか金の前じゃ何の効果もねーんだよ!


「どうやったのか知りませんが、私と唯ちゃんが報告したポータルの情報も受理されて無かったみたいですしね」


 更に拙かったのが、真夏が報奨金の事を詳しく聞こうと受付に行ったところ、親切な受付嬢が報奨金を受け取る権利が既にある事を伝えてしまった事だった。

 そこから、真夏と結がくそ真面目に報告してしまったポータルの位置情報が、今日、たまたま、このタイミングで、受理された事が発覚してしまった。

 だが、それはしおりさんの仕業であって、俺はあまり……いや、無関係だ。

 俺のせいにしないで貰いたい。


「しおりさんが、報告書を作るのをうっかり忘れてただけだろ?」


 俺は更に嘘を重ねつつ、さりげなく今はここにいない真犯人の存在をちらつかせてみた。


「そんなこと忘れる訳ないですよね!でも、そうですか……しおりさんもぐるだったんですね」


「ぐるです!」


 しおりさんに罪を擦り付ける事には成功したが、俺が共犯者にされてしまった。


「俺は関係ないって言ってんだろうが……」


 出来れば、全部しおりさんの責任というところまで持っていきたい。


「もう、そんなこと言って。どうせ先輩が全部指示したんでしょ」


 いや真夏さんよ、そいつは間違いだ。

 俺は、指示、はしてない。

 あくまでしおりさんが自己判断でやった事であって、ぎりぎりグレーゾーンだろ?


「まあ、いいですけどね。結局はそのお陰でお金にはなりましたし」


「お金は大事です!」


 どうやら許してもらえそうなので、ほっと胸をなでおろす。

 だが、そんな俺の態度が気に障ったのか真夏が念を押してきた。


「今回は許しますけど、次からこう言う事はちゃんと先に言っておいて下さい!同じギルドの仲間なんですからね」


「そうです。ちゃんと言うですよ!」


 そんな事言われたって、お前ら絶対漏らすだろ?

 これ以上言い返しては何されるか分からないので、それは決して口には出せないが……


 危うい所だったが取り合えず俺は許して貰えたようなので、早速報奨金を受け取る手続きを済ませる。

 他の探索者と被ったなんて事も無くて、俺達は無事に1,000万を受け取る事ができた。

 俺の手元には334万、年上って事で端数は俺が貰う事になった。

 ここ数日だけで稼いだにしては、かなりの金額だった。

 しおりさんには、後でしっかりとお礼をしなければならないだろう。



 大金を手にした俺に労働意欲があるはずもなく、当然そのまま家に帰ろうとしたんだが、真夏がそれを許す筈も無く、結局は今日もポータルを探すために街を出るはめになった。


 現在のワールドクエストの進行度は215/300、残りは85だ。

 報奨金がもらえるのはこのクエストの間だけだし、それを求めて探索するのも悪くは無いはずなのだが、全くやる気が出ない。

 6号の事も気掛かりだし、報奨金の情報が出回ってしまっては新たなポータルを探すのも大変になるだろう。

 そんな事を考えながら歩いていると、前方で何か騒いでいる奴がいるのに気付いた。


「ああ、俺らが先に見つけたって言ってだろーが!」


「うっせーよ!こっちが先だったろうがよ!」


 揉めていると一発でわかる怒号が飛び交っている。

 俺はそれを無視すると決めて、それとなく進行方向を変えた。


「行ってみますか?」


 俺のささやかな抵抗を無視して、また真夏のお節介が始まる。


「嫌だよ。めんどくさい」


 聞こえてきた話で、何があったかはだいたい察しがつくだろ?

 そんなん無視に決まってんだろーが。


「そんな事言ってないで行きますよ。ほっとけませんから」


「行くです!」


 俺は仕方なくふたりの後をついて行くと、案の定ポータルが見えてきた。

 ポータルの周りには10人、まあ、探索者であろう奴らがたむろっている。

 見たところ、6対4でグループに分かれて揉めてるようだ。


「先輩、止めてきて下さい!」


 その口調はお願いといった感じでは無く、完全に命令だった。


「何で俺が?」


「いいから、さっさと行くです!」


 何故か、結まで俺に命令してくる。

 面倒事には関わりたくないのに、こうなっては俺が何とかするまでこいつ等は収まらないだろう。

 俺は、渋々揉めてる奴らに近づく事にした。


「なあ、お前等。何を揉めてんだ?」


「ああ゛ーっ!なんだテメーは!!」


 おそらく、6人グループの方のリーダーだと思われる奴が、俺に対して凄んできた。

 そいつの仲間達もそれに倣い、俺を取り囲んで威圧してくる。

 全員が同じような赤い服装をしていて、ずっと見ていると周囲の緑と相まって目が痛くなりそうだ。

 男同士で仲良くお揃いの服を着るなんて、余程仲が良いのだろう。

 何とも微笑ましくなってくる。


「この人、新庄さんじゃねーか?」


「新庄さんって、あの新庄さんか?」


 俺のことを知っていたのか、赤い奴らが騒ぎ出す。

 それどころか、違うグループの奴らまでコソコソと何か話し始めた。

 すると男達の表情が強張り始め、徐々に青ざめていく。

 何故だか分からないが、俺の事を恐れているようだ。

 コイツらとは初対面のはずで、そんな顔をされる覚えはないんだが……


「間違いねーよ……しおりさんとよく話してる人だ……」


 なるほど、怯えている理由が判明した。

 そんな事で有名になりたく無いので、コイツら認識を改めさせたい所だが、今は面倒なので逆に利用してやろう。


「どうやらポータルの事で揉めてる様だが、何があったのか話してみろよ。このしおりさんと仲がいい俺が、聞いてやるから」


 だいぶダサい事を言った気もするが、それで解決するなら、まあ、いいんじゃないか?


「こいつ等が、俺たちサヴァイバーが先に見つけたポータルを横取りしようとしたんすよ」


 赤くない方のリーダーだと思われる奴が、そう答えてきた

 こいつ等はこいつ等で、全員が黒の革ジャンを着ていて、髑髏を模したアクセサリーをやたらと身につけている。

 サヴァイバーとはおそらくギルド名の事だとは思うが、『ヴァ』の所を下唇を噛んで発音しているのが、何かイラつく。

 それに気になる事があるんだが……今は皆んなでお揃いの服を着るのが放ってんのか?


「ああっ!先に見つけたのは俺らボルケーノだって言ってんだろ!」


 赤い方はボルケーノと言うらしい。

 うちのギルド名の事を考えれば、コイツらがどんな名前を付けようと俺にどうこう言う資格は無いが……もうちょっと相談し合った方が良かったんじゃないか?


「まあ、落ち着けって。どっちが先かなんて言い合ってても、解決する訳ないだろ?」


「はあ、確かに……」


「そうなんすけど……」


 こんな場所に証人がいる訳が無いし、ただ言い合いしてても時間の無駄ってもんだ。

 俺が見た所、どっちも嘘を言ってる感じもしないし、多分ほぼ同時だったんだろう。


「どうせ、お前らは報奨金の事で揉めてんだろ?だったら折半にしとけって。ちょうど10人、1人50万ずつで満足しとけよ」


「でもよー、新庄さん……」


 赤のリーダーが何か言いかけるが、俺はそれを遮って話を続ける。


「確か、お前らのギルド名はサヴァイバーとボルケーノだったか?今日たまたま会ったそんな名前のギルドには、物分かりの良い素晴らしい探索者しかいなかった……そう、俺からしおりさんに伝えておくよ」


 …………


 誰も何も言わなくなった。

 ダメ押しにひと睨みしてやると、全員が元気よく頷いてくれた。

 これで見事解決だ。

 俺の手にかかればこんなもんだぜ!


 不満げな顔をしてる奴もまだいるが、特に何かを言うことも無く男達はポータルを使って街に帰っていった。

 多分、報奨金を受け取りに行ったのだろう。

 今後も仲良くするんだぞ。


「さて、解決したぞ。これでいいのか?」


 真夏と結の所まで戻ると、何故か呆れた表情をしている。


「解決したっていっても、しおりさんの名前を使っただけじゃないですか。何でそんなに偉そうにしてるんですか?」


「そうです。もっと格好よく解決しでほしかったです!」


「別にいいだろ。解決はできたんだから」


 いったい何の問題があるんだ?

 そんなに文句があるなら、自分で解決したらいいと思うんだが。


 この後は、もうこの周辺ではポータルが見つからないだろうと思い、俺達も街に戻ることにした。

 ポータルが近い距離で見つかった事例がなかったからだ。

 誰が作ったのか作ったのかは知らないが、多分、遠距離の移動手段として作られた物なのだろう。

 まあ、そんな事は今考えても仕方ない事だろう。

 だがさっき目撃したような、ギルド間で諍いが起きる、というのはかなり拙い気がしていた。

 今回はまだ軽い言い合いで程度で済んだが、大金が絡んでいる分、報奨金の奪い合いが激化していく可能性がある。

 何より問題なのは、ギルド間でポータルの奪い合いが発生してしまったら、ワールドクエストの達成に悪影響が出兼ねないって事だ。

 報奨金のおかげで一気に進むかと思われたポータル探しだったが、一気に雲行きが怪しくなってきた。

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