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新太平洋大陸  作者: 双理
三章 精霊の王
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ギルド結成1

 ワールドクエストが達成された時、再び世界中にアナウンスが流れた。

 その内容は、ワールドクエストの達成報酬として、ダンジョン攻略に参加した全ての者に経験値が与えられるというものだった。

 俺はダンジョンでの事を思い返し、自分には関係ない事だと思っていた。

 しかし、何故かレベルがふたつ上がってしまい、今はレベル65になっている。

 何を基準にして参加したと見做されたのか……全く以って不明だ。

 なお、真夏に至っては5つもレベルが上がったらしい。

 たった一匹、ゴブリンを倒しただけだったのにも関わらずだ。

 どうやら、アナウンスの声の持ち主はかなり大雑把な性格をしているようだ。

 アナウンスはその報酬の話だけで終わってしまい、新たにワールドクエストが発生する事も無かった。


 それ自体は喜ばしい事で、実際、街の住人達は得体の知れない状況から解放され、徐々に普段の生活を取り戻していった。

 そんな中、ひとつの問題が浮上してくる。

 それはモンスターが弱体化したままだという事だ。

 そのせいで、魔石の質が悪い物となってしまい、魔石から取り出せるエネルギー量が激減してしまった。

 当然、魔石の売却で生計を立てている探索者の収入も減る事になり、探索者を辞める者まで現れ始めた。


 その状況を打破する為、探索者達は新大陸中心部を目指して進出し始めた。

 モンスターは、大陸中心部に近づくに連れ、強力な個体が出現するようになるからだ。

 そのモンスターが落とす高品質の魔石を求め、探索者達は未知の領域に足を踏み入れる事になる。

 それは、新大陸に移住が開始されて以降、最大規模の探索が行われる事を意味していた。

 

 そこで役に立ったのがポータルだった。

 強いモンスターを求めてかなりの距離を移動したとしても、ポータルさえ見つければ一瞬で自分の拠点としている場所まで戻れるからだ。

 これにより魔石の問題はある程度解消して、エネルギーも以前とそう変わらない水準まで得られるようになっていった。


 ワールドクエストが達成されてから3ヶ月が経ち、探索者たちの生活は激変たと言える。


「先輩、私達もギルドを作りましょう!」


 始まりは、真夏が放ったそんな言葉からだった。

 暇なのか何なのか知らんが、真夏がいきなり俺の部屋にやってきて、いきなりそんな事をほざき始めたのだ。


「ギルド?何だよそれは……」


 満面の笑顔で詰め寄ってきた真夏に、俺は冷静にそう切り返した。

 言葉自体は聞いた事があるものだったが、それが何を意味してるかが俺には分からなかった。

 表情を見るに、真夏にとっては得になる事なんだろうが、俺にとってそうだとは限らない。

 また、どっかで変な話を吹き込まれてきやがったな……

 そう思って、俺が警戒するのは当然の事だった。


「探索者の集まりの事ですよ。聞いた話だと、ゲーム用語が語源みたいですね」


 だよな。

 最初に頭をよぎったのが、正にそれだった。


「グループを作って集会所に登録するんです。そうすると、集会所から魔石収集の依頼を受けれるようになるみたいなんですよ」


「今までと何が違うんだ?これまでだって、勝手にグループ作って狩りをしてただろ?」


 なぜ今更、そんな事を集会所が言い出したのかが分からない。

 

「えーとですね。最近だと、まず良い狩場を見つけてからじゃないと、魔石を集めるのが難しくなったじゃないですか。そのせいで、個人で探索者をしている人が、狩場自体を見つけるのが大変になったらしくて、収集率が下がってみたいなんですよ。そこで今回、集会所がグループで行動する事を推進してるみたいなんです」


 最近では、この街の周辺でモンスターを狩るって奴は殆ど見かけなくなっていた。

 自分で見つけた狩場にポータルを使って移動して、それからモンスターを狩るというのが今の探索者のスタイルだ。

 だが、ポータルは一度行ったことがある場所でないと使えない。

 探索者たちはより美味い狩場を求め、新しいポータルを探す必要に迫られた。

 しかし、行ったこともない場所で、ひとりでモンスターと戦いながらポータルを探すのは難しいものがある。

 その為の制度って事なんだろうが……


「わざわざ集会所が口を出さなくても、困ってんなら勝手に組むだろ?」


「先輩は、本当にそう思ってるんですか?」


「……いや、思わねーな」


 よく考えてみれば、一人で探索者をやってるような輩に、まともな人格者がいる筈もない。

 何か事情がある奴も中にはいるかも知れないが、大抵は自分の実力に自信を持ちすぎているバカか、極度のコミュ症を患っている奴だろう。


「そういう事です。そこで目玉になってくるのが、魔石収集の依頼を受けられる、という点です。ギルドを作って登録すると、魔石を売却したお金とは別に、依頼の報酬という形で国からの援助が受けられるみたいなんです。少しノルマがあるみたいですけど」


 まあ要するに、金をちらつかせておいて、あぶれてる奴らに徒党を組ませ、魔石の収集率を上げようって訳か。

 どうやら、我が祖国は今回の魔石の件をかなりの重大事項として捉えているようだ。

 エネルギー不足がかなり堪えたのだろう。


「そういう訳で、先輩は私と組んで下さい」


 真夏が、さも当然のことのようにそう言ってくる。

 俺としては、当然そんな事を受け入れるつもりは無い。


「ノルマがあんだろ?やだよ、めんどくさい」


「ノルマと言っても、そう多くはないみたいですよ。それに仮にノルマをこなせなくても、ペナルティは報酬が出ないだけで、魔石自体は買取してくれみたいです」


 そう言われると良い話なのかと思えてきたので、俺は少し考えてみる事にした。

 つまりは、魔石を売り払った金額に、報酬分の金額が上乗せされるという話だ。

 確かに、旨味はありそうだが……


「駄目だ。そもそも、俺はモンスターなんか狩りたくねーんだよ」


 アブねー……あまり熱心に勧誘してくるから、危うく自分を見失う所だった。

 何で俺がそんな危険なことをしなきゃいけねーんだ?

 そもそも、俺は探索者じゃねーっていつも言ってんだろうが……


「そんな事言わないで下さいよ。先輩も仕事がなくて困ってるんじゃないですか?」


「う゛っ……」


 痛い所を突かれた。


 俺が請ける仕事は、この街の住人が依頼を出した物が殆どだ。

 だが、今回の件もあって、懐にダメージを受けた住人からの依頼が激減していた。

 それは、観光客相手の商売にしても同じ事だった。

 こんな時に、旅行しようなんて物好きはいないからな……

 思いの外自衛隊の依頼の報酬が多かったので、今すぐ生活に困る事は無いが、このままではいずれそれも尽きてしまう。

 とはいえ、簡単に真夏の言いなりになる訳にはいかない。


「他の奴に頼めよ。お前なら組んでくれる相手に困らないだろ?」


「また、変なのに絡まれたく無いんですよ。信用できるのは先輩だけなんです。お願いしますよー」


 真夏は俺にしがみ付きながら懇願してきて、終いには拝んできやがった……

 少しふざけてはいるが、メンバーを探すのに余程困っているのか、その表情は真剣なものだった。


「……分かった。ノルマを守らなくてもいいなら、特に問題もなさそうだしな。今は仕事もねーし、暫く付き合ってやるよ」


「本当ですか先輩!ありがとうございます!」


 まあ、困っている後輩をほっとく訳にもいかんだろ。

 面倒事に巻き込まれた形になったが、喜ぶ真夏の顔を見ているとこれで良かったんだと思えてくる。


「では、早速集会所に行って登録しましょう!」


「今からかよ……」


 いくらなんでも行動が早すぎんだろ。

 せめて、明日にして貰いたいもんだ。


「まあ、待てって。登録するっていうのは、まさかふたりだけでか?」


「そうですけど。人数制限は特にないみたいですし」


 そういう問題じゃないんだが……


「因みに、他にギルドに入れてもいい奴に心当たりは?」


「ありません」


 ………………


「あのなー、たったふたりで、しかもポータル探しながらモンスターを狩るつもりか?大変だからグループを作ろうって話だろーが……」


 まさか、真夏がここまで無計画な女だとは思わなかった。

 てっきり、他にも当てがあるのだと思い込んでいた。


「私と先輩ならできると思いますけど……無理ですかね?」


 無理かと問われれば、決して不可能ではないだろう。

 それで良いのかは分からないが、他に人を入れて足を引っ張られるぐらいなら、ふたりの方がまだマシにも思える。

 なんか、考えるのがめんどくさくなってきた……


「まあ、それでもいいか」


「大丈夫ですよ。駄目だったら、後で誰に入って貰えば良いだけですしね」


 こいつのポジティブさはどっからくるんだ?

 でも、確かに後から考えれはいい話ではあるか。

 ……ん?なんか俺、洗脳されてないか?


「では、いきましょう!」


「やっぱり、今から行くのかよ!」


 ノリで思わず突っ込んでしまう。

 結局、俺は真夏を止めることが出来ずに、集会所に連れていかれる羽目になった。

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