ネウラと祖母
ネウラ視点が基本の物語です。
ある町の小さな屋敷にて。
?「……明日から王宮で働きなさい。」
?「はい?」
突然、私のもとに王宮勤めの辞令が下った。
…………
私は、ネウラ・ハーベスト。15才。
家は祖先が貴族階級にあったことからの名残で小金持ちのような生活をしていた。
そして、私も貴族のような暮らしをしていた訳では無いが、わりと裕福な感じで暮らしていた。
祖母と2人暮らしで。
実際には、私の家にはメイドやら庭師やら居るが少数で且つ住み込みという訳では無いので実質2人暮らしなのだ。
実は私には両親がいない。いや、居たから私が生きているのだが、私は覚えていないのだ。
それには、2つの理由がある。
1つ目は両親とも私が産まれて1年以内に病死したのだという。
それを祖母から聞いた時には私が両親の事を覚えているはずも無いのでそこまでの気持ちは沸かなかった。
2つ目は、私自身が異常だということだ。
どういうことかと言うと、私にはこの世界ではない所で生きていた記憶があるのだ。
ただ、曖昧な記憶なので説明しろと言われても難しい。だが、この世界ではない所の記憶は少しあるというだけだ。その影響か、私は自意識が芽生えた頃、よく色々“変”なものに興味を示していたらしい。今もその記憶と照らし合わせて考察する癖がある。
だから、両親が死んでいたと知らされても何の感情も出なかったのではないかと思う。
因みに私達がいる国の名前は、グレイス連合王国という。
なんでも、君主になっているお方が2人も居るらしく、各々が協力し合って成り立っている国だとか。
祖母はそんな王国の王宮で働かして貰っている身であり、その彼女から私に辞令……というか、命令が先ほどおりたのだ。
?「……良いですか。ネウラ。貴女も成人に成る年が近づいています。社会勉強の為にも王宮で働いてください。」
いや、冗談じゃない。何故この祖母は孫に……ド素人の元貴族家の民間人を王宮勤めさせようとしているのだろうか?
ネウラ「あのですね、おばあ様。いくらおばあ様が働いていらっしゃるからといって、全く経験の無い者をどうして王宮勤めさせようとお思いになるのですか……。」
そのようにため息をつきながら返答すると、おばあ様は自分の横に置いてあった鞄からある手紙のようなものを取り出す。
?「……私だって反対はしました。ですが、これを読めば判ります。」
そう言って、その手紙のようなものを私に渡してきた。
受け取り、確認する。
ネウラ「……封蝋?」
?「……開けてご覧なさい。」
何か見たことがあったような封蝋を割り、中の書類を見る。
そこには、
『ネウラ・ハーベスト
来週より、貴女に双陛下の侍女並びに双陛下側近・侍女長ルナ・ハーベストの補佐の任を命じる。
グレイス連合王国 宰相 エアロス・ファーハレンス・ルーク』
ネウラ「……。」
何も言えなかった。
ルナ「……一応、言っておくけど、本物ですからね。」
ネウラ「……。」
血の気が一気に引いた。
暫く時間が経った後、祖母とことの顛末について話し合った。
ルナ「双陛下はかなり自由奔放な性格でして。どこの馬の骨かも分からないような人物を勝手に雇っては才能を遺憾なく発揮させるような方々なのです。私自身もそのような状況で今の生活になっているようなものですが、まさか、私の孫まで……。」
祖母はどんな感情を出せば良いのか少し混乱しているようだった。……何故、私なんだろう。
ネウラ「……というか、おばあ様、侍女長……双陛下の側近って……。」
どんだけ偉い立場なんよ……。
ルナ「こうなった以上、仕方がありません。お勤め自体が社会勉強になるとセラスーヌ陛下から承ったので、ご厚意に甘えましょう。」
ネウラ「……。」
ルナ「今回のはかなり異例な事態です。多分、私の孫だからというのもあって興味を示されたのだと思いますが、双陛下はあまり失敗を気にされない方々ですのでしっかりと失敗し、学びなさい。私の孫だからといって変な緊張を持っている方が誤りです。」
ネウラ「。」
ルナ「……あと、私は貴女の目の前ではこの姿ですが、王宮では変えているので私を探す場合は気を付けなさい。」
ネウラ「……。ん?」
どういう事だ?
ネウラ「えっと、どういうことですか?おばあ様。」
ルナ「まぁ、所謂化粧ですよ。とりあえず、王宮では私は祖母ではないということを意識しなさい。」
典型的な祖母のような姿ではないということなのかな?
以前年齢を聞いた時から計算して今年でおばあ様は65才のはず。そう考えるといかにも初老な見た目のおばあ様は少し若い。……?今でも祖母のような感じではないんじゃないの?
ルナ「今は詳しく言っても理解して貰えないでしょうから来週からのお勤めの際に私の姿を確認なさい。直で見れば判るでしょう。」
ネウラ「わかりました……。」
こうして私の波乱万丈な王宮勤めがはじまるのだった。