二番目
帰宅しているとまさやさんと遭遇した。会釈すると俺の事を覚えていてくれてる様で、まさやさんも会釈してくれた。何となく気まずかったが
「こんばんは」
俺は声をかけた。
「こんばんは、君は確かせとなと一緒にいた人だよね?」
「はい、せとなと同じ大学に通っている辻元龍志って言います。あの、少しお話できませんか?」
俺は近くのコンビニでコーヒーを買ってきて、駅前にある植え込みに座って話をする事にした。
「ありがとう」
お金を出そうとしているまさやさんに「俺が誘ったので」と断った。
「すみません、急に話したいとか言って」
「いや、大丈夫だよ」
「まさやさんに聞きたい事があって」
「聞きたい事?」
「はい、まさやさんはどうして、別れた後も、せとなに優しくするんですか?気持ちに答えられないの分かってて。ずるくないですか… あ、生意気言ってすみません…」
「確かに、ずるいよな、でも、気持ちに答えられないと分かってても、せとなの気持ち痛いほどわかるし、突き放したりできないんだ…せとなの事嫌いになった訳じゃないし、未央の次に好きだから」
「俺、この前見たんです…まさやさんの奥さんが男の人と腕を組んで歩いているところを…」
「そっか…」
「まさやさんは奥さんへの届かない気持ちをせとなで埋めてるんじゃないですか?」
「…そうかも知れないね」
まさやさんは苦笑していた。
「俺はせとなが好きです。幸せになって欲しい。けど、貴方にだけは渡したくない。せとなが二番目に好きだと言った貴方だけには、失礼します」
俺はまさやさんに一礼すると駅のホームへ向かった。
悔しかった。まさやさんの想い せとなの気持ち 俺の届かない想い 全てが。