片想い
「せとな!」
笑顔のまさやがせとなを抱きしめる。
大好きなセンパイの腕の中 暖かくて心地よい ずっと抱きしめていて欲しい。
せとなが目を開けると見慣れた天井があった。
「センパイ…」
ベッドから静かに起き上がり自分の身体を抱きしめるせとな。
現実は残酷だ…
「おはよう」
まさやが自宅のリビングのソファーで出勤前にコーヒーを飲んでいると、未央が寝室から出てくる。少し起きるのが遅くなった様でバタバタと出勤前の支度をしている未央。
「おはよう、何度も起こしたんだけど」
「ごめん、昨日なかなか寝付けなくて」
まさやはソファーから立ち上がると未央に近づぎ、抱きしめてキスをしようとした。それを未央は軽くかわす。
「早く行かないと遅刻しちゃう」
最近未央の様子がおかしい事に気がついていたでも、気づかない振りをしていた。未央が俺の事を好きではなくなっている事に…
もし、それを口にすれば全てが終わってしまうような気がしたから…
例え未央に今は他に好きな人ができたとしても、いつか自分の元に戻って来てくれるなら…未央を失いたくない…
慌ただしく支度を終えた未央が
「先に行くね」
まさやの顔を見る事なく玄関に向かう
「あ、うん。行ってらっしゃい」
まさやは自宅を出で行く未央の背中を見つめた。
俺は週末、皆川にもらった雑誌に載っていたクレープ屋に一人で来ていた。
ー2日前ー
講義室に一人で隅に座って居るせとなを見つけて俺は声をかけた。
「せとな」
「…また、お前か」
俺は皆川にもらった雑誌をせとなの目の前に広げクレープ屋の記事をみせる。相変わらず興味の無さそうなせとなに
「せとな!此処に行ってみないか?」
雑誌に載っている隣町にあるクレープ屋の話をした。すると、せとなは
「…ここ、行きたかったお店」
「ちょっと遠いけど休みの日でも一緒に行こう!」
「…なんでお前と一緒に行かないと行けないだよ」
「皆川も行ってみたいって言ってたから3人で行こうぜ!」
「…」
「土曜日、R大学駅前に11時集合な!」
「行かない」
「待ってるから! 」
「…」
俺は強引にせとなと約束した。着てくれるか半々の気持ちだったけど。土曜日待ち合わせ時間より、駅に少し早く着いて、せとなと皆川を待っていると
「せとな来た?」
皆川が後ろから声をかけてきた。
「いや、まだ」
「そっか、くると良いね」
皆川と2人せとなを待っていたが11時になってもせとなは現れない。10分になっても20分になっても…
「せとな来ないね」
「皆川、もう少しだけは待っててもいいか?」
「仕方ないなぁ 10分だけだよ」
「ありがとう」
せとなを後10分だけ待つ事にした。
結局せとなは待ち合わせ場所に来なかった。せとなに振られ俺は一人で虚しく隣町のクレープを食べにきた。週末で雑誌に掲載されているだけあって、かなりの客で行列ができている。殆どが女性客でチラホラカップルらしき人達もいたが、男一人で並んでるのは俺だけで…
恥ずかしい…なんで一人でクレープ買いに着たんだろ…
せとなに振られた勢いとは言え来た事を後悔した。(早く自分の番になれと)思いながら並んでいると見覚えのある人物を見つけた。
「ん?あれっ? あの人、まさやさんの奥さん?」
まさやさんの奥さんは知らない男性と腕を組んで歩いていた。人目を気にする事もなく、堂々と。恋人同士に見えた。
どういう事だ…