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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

『バールのようなもの』で世界を救う!~異世界召喚された俺、聖剣が合わないと悲しんだら聖剣以上の最強武器をゲットして魔王をぶっとばす!

作者: ブルマ提督

以前書いたものの改稿版です

「異世界人の召喚に成功したぞ!」


「やった!これで世界は救われるぞ」


「これで二人目の勇者の誕生だ!」


 学校から帰り道。信号無視をしてきた車に轢かれたと思ったら気づいたらどこかわからない場所にいた。


 周りを見渡してみると、ドレスや王冠などまるで漫画の世界の登場人物のような服を着た人たちが俺を取り囲んでいた。


 頬をつねってみるが痛い。もしかして現実?


 まったく状況がわからない中、俺に一番近い王冠をかぶっている人に話しかける。


「あの、ここはどこでしょうか」


「ここは王宮の召喚の間だ。貴方様の名前をお聞かせください」


 おそらく王様であろう人が俺に跪いている。な、名前?とりあえず名前を言おう。


 「俺は、要雅人っていいます」


 「カナメマサト殿ですね!カナメ様!ようこそお越しくださいました。私はこの国の王でございます」


 やっぱり王様だった。その人が頭を下げる。偉い人が思いっきり頭を下げているけれどいいのだろうか。というか、何がどうなっているか分からない。


 「えっと、何が起こっているか説明して欲しいんですけど……」


 「私が説明しましょう」


 偉い人の奥から綺麗な人がやってきた。誰だろう、この女の人は。


 目の前の女の人に改めて聞いてみる。


 「ここはどこですか?あなたは?」


 「ここは聖スザンカ国。今は我が国は建国以来の最大にして最悪な事態が迫っております。私はパピーナと申します。この国の王女です」


 王女だった。マジか。


 「な、なんで俺が呼ばれたんですか?」


 「古来より我が国は異世界人の知恵と力で発展してきたと伝えられています。そのため国の危機が迫っている場合異世界人を召喚しろ、と先祖代々受け継がれてきております」


 それで俺が召喚されたのか。でも俺はただのゲーム好きな高校生で何も出来ない。


 もしかしてラノベとかでみたチートスキルが俺にはあるのか!?だから、呼ばれたのであれば納得だ!


 「お、俺を呼んだ理由は魔王かなにかの討伐ですか?!」


 「異世界人は理解が早い、というのは本当なんですね。はい、以前から復活を予期していた魔王がついに復活したのです。その魔王を討伐するためにあなたを呼びました」


 「わかりました!よぉし!やるぞ!」


 意気揚々と立ち上がる。あれ?そういえば俺はもう戻れないのだろうか。


「あの、すみません。俺はもうあっちの世界には戻れないのでしょうか?」


「はい……。魂と肉体をこちらに召喚させるので、あちらにはもう……」


 パピーナさんが目を伏せる。そうか、俺はもう戻れないのか。……戻れない?


「なら、今週発売したゲームもできないじゃん!」


「え、ゲーム?」


 パピーナさんが俺の言葉に目を丸くして驚いている。


「うわぁぁ……。なら学校休めばよかった……。ゲームしたい」


「あの、落ち込んでいるところ申し訳ないのですが武器を選んでほしいのです」


「ゲーム……。ゾンビ……。武器?」


「はい。代々勇者様が使っていた武器がこの王宮に眠っております」


「武器……。俺に使えるんですか?」


「はい。文献によれば、力ある者が手に取ればその者に眠っている潜在能力を起こしてくれるとのこと。おそらくあなたでも武器をふるうことが出来ると思います」


「本当ですか……! やった! それこそ俺がやっていたゲームみたいだ!」


「どうぞ、こちらへ」




 俺とパピーナさんは武器庫へと移動した。武器庫にはこれと言って特別な武器がなく、普通の武器しかなかった。


 乱雑と置かれている武器の中からその一つを手に取る。


「おっも……」


「一般兵が使うものですからね。こちらへ」


 パピーナさんが壁に手をかざすとすさまじい音とともに壁の一部が動いた。


 すげぇ、ギミック……!ゲームで見たまんまだ!


 壁が動き切るとパピーナさんが中に進む。俺もついていきながら周りの壁を見渡した。中にはさっきの武器とは違う輝きをまとった武器が理路整然と並んでいた。


「すげぇ……」


「ここからお選びください」


「よっしゃ!」


 ここから俺の伝説が始まるんだな!




「どうしてでしょうか……。武器が当てはまらないなんて」


 パピーナさんが頬に手を当て溜息をつく。


 数時間すべての武器を試してみたが、しっくりくる武器が見つからなかった。床にばたりと倒れて天井を見る。おかしい、俺は選ばれたわけじゃないのか……?


「間違えたのでしょうか……。しかし、召喚の儀はしばらく使えませんし……」


 ぼそりとそんなことを言うパピーナさん。間違い?なら、俺はどうなるんだ?ゲームもできず世界も救えずただここに呼ばれただけじゃいやだ!


 でも、聖剣や聖弓などはすべて試した。合うものがない。


「ちくしょう……!!!」


 悔しさで思わず床を拳で殴った。拳が痛くなると知っているが、殴らずにいられなかった。


 だが、拳に伝わったのは石とは違う柔らかい感触だった。


「なんだ?」


 ここの床だけ素材が違う。もしかして、まだ別の武器が眠っているのか?


 起き上がりゆっくりと素材が違う部分の床を外した。その下には、俺が望んだ武器が眠っていた。


「……それは工具でしょうか?」


 パピーナさんが戸惑った声をかけてくるが、それも耳に少ししか入らないくらい俺は興奮していた。


 俺の相棒。俺がとあるゲームを始めた時からずっと使っていた。武器。


「会いたかったぜ……! 『バールのようなもの』!」


 その武器を手に持ち掲げる。ずっしりと手になじむ重み。まだ赤く新品だと思っていたが、床から持ち上げたとたんそれがドンドン錆びてきた。まるで、これが俺の真の正体だというように。


「『バールのようなもの』……?工具ではないのでしょうか?」


 パピーナさんが不思議そうな顔をしてみてくる。これは工具じゃない。いや、工具だ。だが、今だけは工具じゃない。


「いいえ……。これは武器ですよ! 最高で最強の俺にとっては聖剣のようなものです!」




 俺はこの『バールのようなもの』と一緒に旅をした。


 村を襲っていたゴブリンを殴って改心させた。


「襲ってやるぜぇ!」


「やめろ!」


「おげばっ!」 


 『バールのようなもの』がゴブリンの頭を直撃した。倒れたゴブリンだったが、すぐに立ち上がった。


「すみません。もうこのようなことはしません。森の奥に戻ります」



 町に進攻しようとしていたドラゴンを殴って改心させた。


「無理よ!ドラゴンは地上数十メートル上だもの!」


「なら、投げるだけだ! 行ってこい! 『バールのようなもの』」


 ヒュルルルル……ゴッ!


 投げた『バールのようなもの』はドラゴンの頭に直撃した。一瞬気絶しかけたドラゴンはすぐに意識を取り戻した。


「もうこのようなことはしない。みなで谷にでも戻って余生を過ごそう」



 旅の途中で『バールのようなもの』が進化した。『バールのようなもの』から『名状しがたいバールのようなもの』になった。


 そのあとも様々なモンスターや悪党たちを殴ってきた。だが、魔王幹部と戦っているとき俺の相棒は折れてしまった。


「あ、相棒……!」


「もう終わりだ! その武器……。武器?が折れたらお前はただの人間だからな!」


 『バールのようなもの』の破片を手にうずくまる。背中に幹部の攻撃が迫っている。だが、俺は何もできない。相棒が折れたなら俺はもう……!


「く、くそおおおおおお!」


 悔しくて咆哮した。もう無理だ。と諦めかけた。その時、まばゆい光を放ったかと思うと『バールのようなもの』は『エクスカリバール』へと姿を変えた。


「な、なんだ! その武器は!」


「こ、これは……。伝説の『エクスカリバール』!」


「聖剣でもないだと……! 貴様何者……!」


「ゲーム好きなただの高校生だよ!!」


 それで幹部たちも殴り、改心させた。




 ここに初めて来たときのことを考えていた。魔王がいる『最果ての砦』まで長かった。だが、ようやくここまで来た。目の前には魔王が俺を見下ろしていた。


「よくぞここまで来たな……! 異世界の小僧!」


「魔王! お前もここまでだ!」


 魔王がいる『最果ての砦』まで長い旅路だった。だが、その旅路も最後だ。


「行くぞ! 俺の愛刀! 『エクスカリバール』!」


 右手に持つ相棒が光始める。長い旅路の末に『バールのようなもの』は本当の聖剣となったのだ。これで負けない!


「来い! 武器については何も突っ込むまい!」


「『エクスカリバール』だ! さっきも言っただろ!」


「聞いたが、それで倒されるのは癪だ!」


「早く倒されろ!」


 一気に接敵して武器をふるう。ただ、その武器は魔王の屈強な腕に止められた。魔王は俺の武器をわしづかみにしていた。


「ぐぅ……! やはり響くな! 鉄は」


「当たり前だ! 普通ならこの一撃で腕が折れる可能性もあるからな!」


「それを! 他人に! ふるうなぁああ!」


 魔王がボールを投げるように壁に向かって思いっきりぶん投げた。俺は、何もできずに武器とともに吹っ飛ばされて壁に激突した。魔法をかけたのかわからないが、息ができなくなるほどの激痛が体を走った。


「がはっ……!」


「ふん! 所詮体はただの人間! 貴様が近づいてこれないようにすればいいだけだ!」


「ぐ……。あぁ……」


 苦しい。痛い。体のいたるところの骨が折れている。口の中が鉄の味がする。呼吸が苦しい。


 無理だったのだろか……。俺は所詮ゲーム好きな高校生。勇者になんてなれなかったのか……。


 魔王は満足げな笑い声をあげた。必死に首を動かし、顔だけでも魔王に向ける。背中を向けたくなかった。


「お、れは、まだまけない……」


「ふむ、意識はあるのか。さすがは勇者だ。……ならば、これで最後にしよう!貴様のような者に使うのは癪だがここまでの道筋へのはなむけとしてやるわ! この魔法を受けられる光栄、身をもって知るがいい! くらえ! 我が生み出した究極にして至高の魔法を!」


 巨大な魔方陣が浮かび上がったと思うと、その中心部にエネルギーが集まっていく。ここで終わりなのか。


 瞼が重く、目が開けられない。何もできない。体が鉛のように重く、腕が上がらない。足は感覚がなく、折れているのかもしれない。


 (俺は……。俺は……)


 今までの旅路が頭の中をよぎる。今まで旅の途中で出会った人たち。その人たちからたくさんの優しさをもらった。ゲームをやっているときはNPCに意味あるのかなって思ってた。でも、意味があった。あれだけつらい旅路の中で楽しみになるのは、皆が楽しそうな顔をしているのを見た時だ。


 ……違う。そうじゃない。俺が一番楽しいとき。それは……。


「……だ」


「なんだ? 遺言か?」


 魔王が怪訝そうな声で遺言を促す。


「そうだ……。俺がゲームを、楽しいと感じるとき……」


 相棒を手に取り立ち上がる。体が痛い。あんなに軽く感じた相棒が重たい。


 ただ、徐々に徐々に痛みがなくなってくる。アドレナリンが出ているのか痛みを感じなくなってきた。


「きっ、貴様! なぜ立ち上がる! そんなに世界を救いたいのか!?」


 魔王が狼狽えるよつつもそんなことを言ってくる。違う、違う。俺がなんで戦うか。


「俺はなぁ……。そういう正義感とかで動いているわけじゃねぇんだよ……!」


 ふらつきながらもなんとか両足で踏ん張り、相棒を魔王に向ける。


「ならば! なぜ! 立ち上がるんだ! 名誉か? 金か?」


「ごちゃごちゃうるせぇ!」


 『エクスカリバール』を握りしめ、魔王をにらみつける。


「俺はな! 余裕で勝てる相手に縛りプレイを入れて、どうやったら勝てるかを考えるのが好きなんだ!」


「我相手に舐めプ!?」


「あと! 圧倒的力で相手を蹂躙するのも好きだ!」


「我より魔王らしいではないか!」


「行くぞぉ!」


「来るな!」


 地面を踏みしめて魔王に接近する。魔王は動揺しているのか遠距離魔法を撃ってくるが、エイムがめちゃくちゃだ。そんなエイムで俺にあたるわけがない。


 光弾を避ける。避けられないものは『エクスカリバール』で叩き落す。だんだんと魔王に近づくことが出来ている。


 体はボロボロだが、ちょうどいい。これくらいの縛りがなきゃ、楽しくない!


 魔王は亜空間から、自らの剣を取り出して俺めがけてふるった。だが、それを見切って避ける。地面に剣がめり込み、一瞬抜くのに魔王が苦労している。それを見逃さず、その剣に飛び乗り魔王めがけて走る。


「ぐっ……! 剣が……!」


「これで、終わりだああああ!」


 魔王が俺を捕まえようと腕を伸ばしてくるが、それを相棒でいなす。いなした腕を踏み台にして魔王めがけて飛ぶ。


 目の前に魔王の頭がある。そこに武器を振り下ろした。


 ゴッッ!と鈍い音がして、魔王が一瞬よろめく。そのまま魔王の頭を蹴り地面に着地した。


 魔王は気を失ったが、少し経った後に意識が戻った。


「ぐっ……! くそ……! この我が……この我があああああああああああああ……!」


 魔王は咆哮したかと思うと、その場に倒れ伏した。


 つんつん突っつくが、起きそうにない。


「か、勝った……」



 この後、魔王たちを操っていた『血濡れのチェーンソー』魔女とも戦うことになるのだがそれはまた別のお


 話。



読んでいただきありがとうございます!

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