九話 従者は常識人?
恋愛脳王子アレス。
王子らしい言動と包容力から女子人気が高い。
のは、ゲームでの話。
小説では、恋愛脳王子といわれるほど、リーザに惚れ、国を傾けた無能な王子。
最後は革命により、フィリップと共に処刑される。
常識人空気従者フィリップ。
彼も攻略キャラらしいが、人気は普通。
らしい。ゲーム内の設定だし。
小説では、アレスと最期を共にし処刑。
フローラからの忠告を受けたり、二人の仲の改善を試みるも失敗。
彼もリーザが好きなのではないか。という推測がされているキャラ。
「フィリップのお茶は美味いな」
「ありがたき幸せ。おかわりもありますよ。リーザ様もぜひ」
「は、はい」
その二人とこうしてお茶会するとは。
魔法に魅せられてつい入ってしまった。
「リーザはどのくらいなら魔法を使える?」
「あっ、日常魔法なら」
日常魔法。
調理や、物を持ち運ぶ際に使われる負荷の少ない魔法だ。
「なるほど。それなら、多少それ以外を教えておきましょうか」
「僕たちは必修だったが、一般生徒は知らないことも多いからな」
「先生も不親切ですよね」
「それ以外」
おそらくは護身術とかの攻撃系魔法だろう。
この世界の魔法は、魔力さえあればだれでも使える。なくても魔法石という魔力を含んだ石さえあれば使える世界。
ただ、使う魔法が強力であればあるほど身体に負荷がかかる。
日常魔法程度なら最悪筋肉痛で済むが、攻撃系魔法はその最悪が常になる。
だからか、この世界の魔法使いは皆筋肉重視なんだよね。
他のゲームのようなひ弱な魔法使いはそういない。
「でないと、一年の間はずっと筋力トレーニング。上がっても授業について行けず、落第や退学の生徒まで出る」
「由々しきことです」
「は、はぁ」
そんなシーンあったけ?
私が覚えてないだけか、それともなかったか。
「僕たちがついているから、そんなことはさせないがな」
「いっしょにがんばりましょうね」
「はい、頑張ります!」
今のところ、そんな様子はない。
「ところで、聞きたいのだが」
「はい?」
「その、昨日君とフローラはお互い話をしただろう」
「は、はい」
そうだけど、どうしたんだろう?
「フローラは、その」
「フローラ様はアレス様に対してなにか言っていたか、それを聞きたいらしいです」
「フィリップ!!!」
あれ?
あれれ?
アレスの顔がなんか、赤いぞ?
「それで、なにか言ってました?」
ここでフローラの好感度を下げる発言を。
「あの」
「あぁ!」
「……ナニモイッテマセンデシタ」
「そ、そうか」
言えない!
後ろから突き刺さる視線が痛い!!
余計なこと言ったら殺す。ってひしひし伝わってくる!!
「お互い仲の良い友人ではないので、恋の話はしないのではないですか?」
「そ、そうだよな。すまない、変なことを聞いたな」
「い、いえ」
まずい、非常にまずい!!
多分だけど、アレスはフローラに惚れている!!
大変な事実が発覚してしまったかもしれない。
「しかし、リーザ様はフローラ様と仲良くなりたいんですよね?」
「え、そうですね」
仲良くというか、お互い協力者なんだけどね。
「でしたら、お願いしたいのですが」
「は、はい?」
お願い?
「フローラ様と仲良くなり、アレス様との仲を進展させてくだい」
「はいい!?」
「よかった。ご協力感謝します」
「えっ、あの、ちがっ!!」
「そうか、ありがとう!! リーザ!!」
「アレス様、そろそろお時間です。男子生徒代表の前任とお会いする時間では?」
「そうだったな。では、リーザ。また次回のクラブ活動で会おう!!」
「えっ、は、はい!?」
アレスがバタバタといなくなり、クラブ室には私とフィリップだけが残された。
この男、常識人なんかじゃない!!