八話 魔法研究クラブ
魔法研究クラブ。
読んで字のごとく、魔法を研究するクラブ。
「そのままだな」
クラブ活動用の建物があるのは、流石金持ち学園というべきか。
魔法研究クラブは三階建ての建物の一番隅。
あれ?
「(小説でもこの配置だったけど)」
なんだか違和感があるな。
なにがとは言えないんだけど。
「あの……」
「ようこそ、魔法研究クラブに!」
うわ、眩しい。
アレス・カドエラ。太陽を具現化した男というキャッチコピー。
笑顔だけでこんなに眩しいとは。
「クラブ希望者様ですか? フィリップ・スタイナーと申します」
「えっと」
「知ってるよ。君はリーザ・フォール、女子生徒代表だね」
「は、はい」
そうだよね。入学式で任命されてるの見てるからね。
「君、紅茶は好きかな」
「はい」
「よかった、フィリップ」
「はい、アレス様」
フィリップ・スタイナー。
彼は幼い頃からアレスの従者。裁きのとき、いっしょに裁かれた忠義の人。
なんだけど、話に絡んでこなかったせいかあんまり分からないんだよね。常識人だったから、結構空気だったし。
「どうぞ、お口に合えばいいのですが」
「ありがとうございます! いい匂い」
「茶菓子もよかったら」
「いいんですか!?」
くいしんぼうキャラじゃないけど、この匂いにはあらがえない!!
おいしそう!!
「いただきます!」
紅茶を一口、お茶菓子のクッキーも食べる。
紅茶は独特のほろ苦さはあるけど、クッキーが甘いからいい感じに調和している。
あれ?
「これ、コーヒー?」
「おや、分かりますか?」
常識人とは?
小説はフローラのモノローグしかなかったけど、常識人とは?
でも、このコーヒー。
匂いと見た目は紅茶なんだよね。
「コーヒーは嫌いでしたか?」
「いいえ。おもしろいイタズラですね」
貴族や王族で流行ってるのだろうか?
「別に流行っていませんよ。魔法で色と匂いを変えただけです」
「そうなんですか」
「こういう魔法を研究するのが、魔法研究クラブの主な活動になる。
リーザ。君はどうする?」
「そうですね」
なんだか面白そうだ。
前世を思い出したからか、魔法についてもっと知りたくなってきたし。
「ここにします」
アレスとフィリップは顔を見合わせると、笑う。
私、おかしなこと言ったかな?
「いや、君と同じく一年のアレス・カドエラだ」
「同じく一年のフィリップです。よろしく」
「はい。リーザ・フォールです。よろしくお願いします」
んっ?
二人だけ?
「お二人だけなんですか?」
「一応いるのだけど、卒業試験や課題でね。他のクラブの先輩より早めに引退してしまったんだ」
「そうなんですか」
小説だと、リーザを馬鹿にした先輩たちをボコボコにして、フローラが溜息吐くシーンがあったんだけど。
「(あれはもっと後のはず。こんな早いわけがない)」
「では、お詫びのしるしに改めて紅茶を淹れますね」
「あ、手伝います!!」
「僕もなにかしよう」
「いえ、お二人は座ってってください」