七話 何クラブ?
まだ不仲が浸透してないことを逆手に、私たちは『ツンデレ気味をこじらせて不仲に移行しよう』を実行することにした。
いくらツンデレでも、おもちゃ発言はない。
実際何人かは引いたであろう。
「一部の目が輝いてた人は?」
「無視です無視」
百合?
残念ながらない。
中身男の外見女の人。百合に分類されるかは不明だけど。
「そうだ、フォールはクラブどうする?」
「クラブ、クラブかぁ」
クラブ。前世の知識だと、部活とかサークルに該当するんだよね。
小説だと、リーザはどこにも所属してなくフラフラとお手伝いと称して色んな部活に参加していたはず。
「オレは決めかねてるんだよね」
「そうなの? デニスやメリッサといっしょじゃダメなの?」
「そうなると、フローラをずっと賛美し続けるだろ? 他の生徒に迷惑がかかる。ただでさえ、メル家は敵が多いのに」
「あはは」
問題ないと思うけどな。
でも、私もリーザ万歳!! が苦手なように、フロードもフローラ万歳!! に嫌気がさしてるのかも。
実際何年もやられてきたみたいだし。
「でも、フロードが別のクラブってわかったら入りなおしてきそうだよね」
「そこが問題なんだよな」
うーんと、フロードがうなる。
「あいつら、世界が狭いから広げる意味でも、フローラから離れた方がいいんだけどな」
「なんか、お母さんみたいだね」
「せめてお父さんにしてくれ」
「ごめん」
「気にしてない」
二人が入らない。そして、入りなおそうともしてこないクラブか。
「どうしようか」
「いっそ、入らなくてもいいのかもな」
「入らない?」
「あぁ、遅れての参加もありだし。それに」
彼は、どこか諦めたように笑った。
「フローラに思い出のある人を増やしたくない」
「思い出」
「クラブでの思い出なんて、そこそこ思い出すだろ?
そこにいた女の子が、婚約破棄で遠くに行って自殺したとか、最悪な思い出じゃん?」
「それ、学校全体でやるんだよ」
「そうだけど、思い入れが違うだろ?」
自殺。
そうだ。フローラからフロードに戻れば、彼女は永遠にいなくなる。
自分で自分を殺すも同然なんだ。
「どっちにしろ、嫌な奴演じなきゃなんだけど」
「えっ?」
「地盤固めってことで、それなりに『悪役令嬢』として振る舞ってきたんだぜ?
アイツらのおかげで台無しだけどな」
あぁ、デニスとメリッサのことか。
悪気がないから、嫌うに嫌えないのか。
「貴族や身内だけで生きてくなら、あんな性格でも問題ないみたいだしな」
「フロード」
「さて、オレはさておき、フォールはどうする?」
「私?」
そういえば、入学式で簡易的なクラブ紹介があったような。
前世のことでパニックになってたから、それどころじゃなかった。うん。
「私も決めかねてるんだよね」
「なら、アレスのいる魔法研究クラブはどうだ?」
「魔法研究クラブ?」
「あぁ、地味で人気がない」
「でも、次期国王なんだからお近づきになりたくて入る人が多いのでは?」
「本来ならな」
なんだろう。
含みのある言い方だな。
「そうだね。私、日常魔法しか習ったことなかったし、丁度いいかも。
ありがとう、フロード!!」
「おう。どうしてもってなったらオレも入る。
アレスといっしょなら、あの二人も渋々だが納得するはずだ」
「うん。待ってる!」