六話 前代表との不穏な話
前任の女子生徒代表か。
「この生徒代表、本来は二年生からなんですの」
「二年生から?」
「えぇ、そして三年生の途中で任期を終え、候補として目を付けた一年生を育て、二年生にする。
本来はそうループしていたのですわ」
私たちは新入生。
本来とは大分外れている。
「フォールさん、覚悟なさって。おそらく私たちが代表になったのは、私たちが聖女候補だからですわ」
「その聖女候補って、私聞いてないんだけどなぁ」
小説内でそういう知識があったから、知っているんだよね。
そうじゃなかったら、聖女候補だって自覚なかったと思うし。
「庶民出身の聖女は珍しくありませんわ。しかし、元来聖女は自覚がなくとも、聖女らしい振舞いをする。
といった伝承があるので、あえて伝えないようにしている。
らしいですわ。庶民」
「仲が悪い設定忘れてたのね」
「今思い出しましたの」
照れてる。
かわいいな。中身、男だけど。
「代表は内申点に追加されますからね」
なるほど、そうなると、前任は確実に任期途中で降ろされてる。
自分に非がないし、聖女候補を見極めるためなら仕方ない。なんて納得するか?
貴族でもだけど、もし私と同じ庶民だったなら、内申点は大きく響く。
結論から言うと、覚悟はいらなかった。
「君たちが新しい代表? 初めまして!」
「ど、どうも」
気さくな方だった。
「いやぁ、任されたはいいけど、後継者とか探して育てるのだるかったからさ。ラッキーだった!」
「は、はぁ」
これにはフロードも面食らってる。
素が出てる、素が出てる!!
「にしても挨拶にまで来るなんて、随分丁寧だな。別に良かったのに」
「礼儀ですからね」
あっ、なんとか持ち直した。
「メルさんは心配いらないだろうけど、フォールさんだっけ? 覚悟した方がいいよ~」
「えっ!?」
「この学園、一応平等をモットーにしてるけど、才能がなかったり成績がよくないと、一般庶民は容赦なく叩きだされるから」
「えっ」
一般庶民は?
「私みたいな商家だったり、貴族は不良でも寄付金さえあればって部分はあるし」
「え、えぇ」
「先輩、あまり後輩をいじめないでくださいません?」
「いいや。真面目な話。
だから、こわーい人に目を付けられないよう気を付けなってこと。
じゃないと、つぶされるからね」
先輩の目は正気だった。
怖い人か。
小説でも、リーザは攻略対象たちに守られていた。
それを依存だと思っていたけど。
「(そういう事情があるなら、納得がいく)」
身体を鍛えればいいって話でもない。
権力だけは、どうしようもない。
「そうならないよう。努力いたしますわ」
「メルさん」
「その言葉、忘れないようにね」
先輩は、それじゃあクラブがあるから。と、去っていった。
「あの」
「勘違いしないで。あなたは私のおもちゃなんだから、他の人に潰さるのが我慢ならないだけなの」
「メルさん」
ざわりと、周囲がざわめいた。
「(あっ!! 不味い!!)」
私は、フロードを人気のない場所に連れて行った。
「あのさ」
「やっちまったーー!!」
小声で叫ぶとは、器用だな。
「まだそこまでの仲だと認識されてないのに」
「しかもその台詞、一部の人からはドン引きだよね」
「あああーー!! 巻き込んでゴメン!!」
「いや、あの、チョイスはさておき嬉しかったよ?」
あれは、守ってくれるから言ってくれたんでしょう?
「いや、そうだけど、仲の悪さを出しつつ守るのはこうでしかないかと」
「うん」
「言い方、あれだったけど」
「仕方ないよ」
不安になった私を気遣ってくれたんでしょう?
「ありがとう」
「気にすんな。でも、方向性変えないと、やばいかもな」
「それね」