4話
どすん、と地面に着地したあと口元に巻いていた上着がはらりと落ちた。
そういえば上半身裸のままだったな……。
俺は上着を着つつ女の子の後を走ってついて行った。
しばらく行くと噴水の前で止まった。
そして顔を隠していたスカーフを取り話し始めた。
「ひとまずさっきは助けてくれてありがとう!」
女の子はぺこりと礼をする。
「私の名前はシイラ、あなたは?」
「ラオだ」
「ふーん……ラオねぇ……、ねぇラオどうして私を助けたの?」
「男の怒ったような声と女の子の声が聞こえたからな、いてもたってもいれなくなった」
これは紛れもない真実だ。だがシイラは何が引っかかるのかまだ不思議そうな顔をしている。
「それだとしても普通盗人を助けたりしないでしょ」
盗人……。
「え、お前盗人だったの!?」
「気づかなかったの!?」
え、盗人って、え、えっ。
「け、警備員ー!」
素早い動きで俺は口を封じられる。
「いい? よく考えて。ラオだって上裸で人の家に入り込み盗人を助けた共犯者だからね!」
嗚呼、女神の最後に言ってたことってこういうことかな……。
「んで? どうして盗みなんか?」
「集めてるものがあるんだよ」
あの赤い指輪のことだろうか。
シイラは少し考えてからゆっくりとある提案をしてきた。
「……ねぇ、少し提案なんだけどさ、探し物を集めるの手伝ってはくれない?」
探し物か……。
「生憎だが俺にはそんなことをしてる余裕はないからな」
「例えば?」
「金が無いから稼がなきゃいけないし、まぁとにかく生活を安定させたいんだ」
「生活の安定かぁ……」
シイラはあごに手を当て少し考えながら提案をする。
「じゃあさ、こういうのはどう? 私がラオの仕事を探す手伝いをしたり、家を貸したり……まぁ生活を安定させる手伝いをする、その代わりラオは私の捜し物を集める手伝いをする」
なかなか魅力的な提案だ。だが盗みはしたくない、でもこの世界のこと知らないしなぁ。
俺は葛藤する。
「ねぇラオはさ、ここで私の誘いを断ったらどうするつもり?」
突然そんなことを聞いてきた。
「どうするってそりゃあ、仕事を見つけて、そのあとは…………その時考える」
俺は生活を安定させたら何をするんだ……?
自分で思っていたよりやりたいことも何も無かった。
「そんなラオでも私についてくれば遺跡探索とか楽しいことが沢山あるよ! それに家とかのことを考えればこっちに来た方が楽だよ」
シイラについて行けば生活を安定させるって目標も達成できるし次の目標もできるな。
「……よし!分かった、お前の探し物集め手伝うよ」
シイラはぱっと笑顔になる。
「ありがとう! でも、お前じゃなくてシイラって名前で呼んでよ」
ちょっと照れくさいな……。
「じゃあ……シイラ、これからよろしくな」
そう言うと先ほど以上の笑顔で答えた。
「こちらこそよろしく!」
新しい目標:シイラの探し物集めを手伝う