1話
「皆、準備はいいかぁぁぁあ!!」
「「おおぉぉぉぉお!」」
隊長の声に皆が応じる。
「副隊長、お前も行けるな?」
「あぁ! 任しとけ!」
そう俺も応じると隊長から指示が出る。
「では皆、副隊長に続け! 占拠せよ!」
その声を聞いた後、俺は数十人を連れて悪徳貴族の屋敷へと突入した。
しばらく進むと開けた大広間に着いた。
そこには貴族の男とそれを囲むように配置された兵士達がいた。
「おいおい……こんだけ証拠が挙がってるんだ、素直に調べさせろよ」
「ふんっ! 勝手に人の屋敷に入り込みやがって、この犯罪者集団が!」
貴族はそう言うと片手を前に突き出し命令する。
「魔道士共は魔法の詠唱を始めろ、盾持ちの兵士は前に出て魔道士共を守れ」
その命令の後俺は仲間に指示を出した。
「数人は魔道士の傍で敵から守れ、魔道士は詠唱を開始、残りはいつものタイミングで突っ込め!」
お互いの詠唱が飛び交う中、俺は1人前へと進み叫んだ。
「黙れぇぇぇぇええ!!」
すると相手の魔道士は詠唱を止める。
いや、詠唱が出来なくなった。
これが俺の能力、【対象の発声が出来なくなる】能力だ。
相手は一切声が出ない状況に混乱している。
今が攻め時だ。
愛用の刃無しの剣を抜き、仲間を連れて突っ込んだ。
その数分後、剣で相手を殴り十数人を気絶させた。
だが、普段よりも簡単に制圧出来そうになり調子に乗った俺に襲いかかったのは一振りの銀色の刃だった。
胸を抉るような痛み、焼けるような熱さ、徐々に冷えていく身体。
調子に乗ってしまった自分への嫌悪感で今にも潰れそうだった。
俺を斬った剣の持ち主がとどめを刺そうとしたその時、隊長の剣が奴の腕を切り離し、体を遠くへと蹴り飛ばした。
その後俺の傍にゆっくりと片膝をついた。
「……副隊長」
「……すまな……かったな」
隊長は目に涙をうっすら浮かべ震えた声で続ける。
「お前は、こ、こんなところで、やられる奴じゃ……それに、俺は……お前がいなきゃ、この隊にいる意味なんて」
ない。そう言葉を繋げる前に俺は能力で黙らせる。
「そん……なこと、言うんじゃ……ねぇ、よ」
今にも意識が飛びそうになるがなんとか耐える。
「……なぁ、最期……の願い事、聞いてくれ……」
隊長はゆっくりと頷く。
「隊長……この戦い……俺以外の、負傷者を……出さない、ように、してくれ……」
最期に隊長の名を呼び、伝える。
「……サリム隊長、ありが……とう……な」
「……こちらこそ、ありがとう……ラオ副隊長」
サリム隊長は首飾りを光らせ立ち上がる。
俺は残る力で相手に能力を使い、そのまま目を閉じた。
実はタイトル未定です。