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異聞録:東京異譚  作者: 背負う地区顎と
魔の章

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其の四

グレンデルを斃してから1ヶ月後―

夜の不忍池は相変わらず静かだった―



―10月20日(水)深夜―


―台東区上野、上野恩賜公園内、不忍池蓮池テラス―

挿絵(By みてみん)



霧雨が降る中、不忍池は静かだった。


深夜であれば静かなのは当然なのだが、不忍池は違う。


普段はホームレスが多く(たむろ)し、一般人が深夜通るなどということは、普段では考えられない。


しかし、9月に入り、静かになった。


なったというよりも、減った。


そんな筈は無いのに。


条例も敷かれず、国が動いたわけでもないのに。


9月に入り、失踪事件が相次いだ。


不忍池近隣を根城とする浮浪者達の。


だが、失踪したのが浮浪者達という事もあり、警察にも深くは取り合って貰えなかった。


流れ者がふらりと河岸を変えた―それだけのこと。


大して事件性が在るわけではない。


そうして、放置されたのだ。


それにより離れる者、残る者…


残った者達が、順当に数を減らしていった。


そして、上野公園―不忍池は、めっきり静かになった。


そんな不忍池の真ん中で、事件が起きた。


二日前に、鋭利な刃物で斬られた遺体が出たのだ。


目撃した大学生の女によると、震えるだけで何も喋らない。


よっぽどの心理的衝撃を受けたのだろう。


トラウマになったのか、警察の言葉にも拒否反応を示す。


きっとこれから長いカウンセリングが必要になるのだろう。


そんな状況で、不忍池の夜を出歩く者は減っていた。


その不忍池の手摺(てすり)近く、池へ向かってしゃがみ込み、手を合わせている全身黒尽くめの女性がいる。


よく見ると、足下にカップ酒やらが置いてあり、線香も置いてあるが、連日の雨で火は消えていた。


黒い男「…知り合いですか?」


少し遠目からその姿に気付き、声を掛ける。


女「…ええ…息子でして…」


一切振り返らず答える。


その声と言葉遣いからして、相応の経験を積んだであろう品が感じられた。


黒い男「ご家族…お悔やみを」


女「いえ…息子の知り合いで?」


少しの間の後、振り返らずに聞き返してくる。


黒い男「…いいえ」


女「そう…良い人ね」


哀しみの籠もった言葉だった。


少しの間が再び生まれた後、ふと開いた口。


黒い男「…でも、アナタの息子を斬ったのはオレです」


その言葉を発したと同時だった。


背中から引き抜いた冷気を放つ大剣を、その女性へと振り下ろしていたのは。


それに気付いたのか、女は寸前で跳躍し、大剣を躱した。


振り下ろした大剣は地面であるアスファルトへと激しい衝撃を与え、砕き、めり込ませた。

背中の大剣で女へと襲い掛かる黒い男―

この事件の真相とは―

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