序
黒い男は対峙する―
運命の刻…
―2004年 11月25日(木)深夜0時―
―台東区上野 上野公園内国立西洋美術館 地獄門前―
魔人化した状態で、閻魔を支えに膝を付き、肩で息をする。
目前に相対するは、トシとスズ―力を解放し、トシは輝く刀を手に構え、スズは髪が全て金髪に戻っており、輝く大小様々な三本の刀を周囲に浮遊させている。
トシ「もう…止めろ…! こんな戦いは無意味だ…!」
目線を外さず、気を抜かずに、投げ掛ける。
今までのトシとは違う…気を抜いていない。
ああ言ったものの、警戒も解いていない。
スズ「止めよう…アナタは私達が止めるから」
正しくもハッキリとして真っ直ぐな淀みの無い潔白な意志。
その姿を眼にし、睨み続けた。
しかし、内心では孤独感を深く感じていた。
…変わったな…
三ヶ月足らずでこんなに変化するだなんて…
頭を過る。
その二人の姿は、より自分の劣等感に刺さった。
そして、はたと考える。
自分はこんな状態で…暗い意志に支配されて…極め付けは仲間だった奴等と対峙する…こんな事が自分の望んでいた事なのか?
胸が締め付けられる。
―本当にこんな事がしたかったのか?
どうして…こんなことに…?
その哀しみが、心を支配した。
日比谷での事件から1ヶ月後―
上野では怪異が増していた―




