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異聞録:東京異譚  作者: 背負う地区顎と
人の章

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86/230

後編 其の十五

仲間達を振り切り、たった一人で最奥へと向かう黒い男―

そこには…

十五



―8月8日(月) 夜11時20分過ぎ―


―千代田区 プルス・アウルトラ本部 作戦室―

挿絵(By みてみん)



ドミニク「全くッ…! 本当に役立たず共がッ…!」


静寂が支配した作戦室の中で、手元のカートリッジ式に改修したフィラデルフィア・デリンジャーに純銀の弾丸を込めつつ、吐き捨てる。


ドミニク「この"神の家"を放棄しようなどとッ…! 異端者共めッ…!」


弾を装填し終わった後でも、その毒吐きは続いた。


ドミニク「私のッ! このッ!局長であるッ…! この私のッ…! 命を聞かずに逃げようなどとッ…! 私は神の代行者なのだぞ?! その命に背くなどッ!」


デスクを再三叩き、オペレーター達の椅子に向きながら説教を始める。


黒い男「神の…? オマエがか? …そんなエゴ剥き出しのオマエが?」


嘲笑う様な口振りで暗がりから声の主が現れる。


黒い男「…派手にやったなァ…コレで、オマエの罪は立証出来たな…"エゴイスト"…!」


周囲を見回しながら冷たく言い放つ。


ドミニク「! 貴様ァァーーー!!!」


絶叫と共に黒い男に向けてデリンジャーのトリガーを引く。


直ぐ様激しい衝撃音と共に黒い男の頭が上を向き、一瞬後退った様に視得る。


ドミニク「はッ…!」


安堵と共にしてやったという笑みを見せるも、ユックリと黒い男の頭が元の位置に戻ると、その紅い瞳でギロリと睨む。


黒い男「…効かねぇよ…そんなんじゃあ…!」


ドミニク「なッ…」


黄金色に輝く右手を前に差し出し、掌を開くと、その中には銀の弾丸が在った。


黒い男「法儀式…純銀製の弾丸か…高ぇモン湯水の様に使ってんな? コレ使うくらいならメタルジャケットでよくねぇか?」


赤い警告灯が明滅する薄暗い部屋の中で、まじまじと弾を観察しながら言う。


ドミニク「うるさいッ! 神に背く異端者めッ! 悪である貴様等には当然だッ!」


黒い男「…悪ぅ…?」


その言葉に反応する。


黒い男「…オマエ…この行為が悪じゃないって…?」


親指で床を差すと、そこにはスタッフであろうオペレーター達が、血を流しながら横たわっている。


頭や胸を至近距離で撃ち抜かれている様で、微動だにしない。


恐らく近い者から撃ったであろう雑な射撃だが、近距離で撃たれた者は即死だ。


そもそも射撃も得意ではないであろうから、少しでも離れた者達は当たり所が悪く、苦しんだのだろう。


ドミニク「当然だッ! コレは神の意志! その代行者である私の命に背く者は背教者! 悪以外何とすッ」


遮る様にドミニクの左頬に拳がめり込み、吹き飛ばす。


ドミニク「ぐぁっ! っはァッ…!」


顔面から地面を擦る様に倒れ込む。


黒い男「もう黙れ…善人気取りの狂信者が」


冷たく言い放ちながらも、吹き飛んだドミニクに近付く。


ドミニク「おのれッ…! 異たッばァッ!」


黒い男「口を開くな」


喋ろうとした途端、更に顔面に拳をめり込ませる。


その殴られた勢いで地面に倒れ込んだドミニクの顔面を、サッカーボールキックで蹴り飛ばす。


ドミニク「げばァッ」


床を舐めるように回転しながら側のデスクに突っ込む。


黒い男はそこに近付き、左手でドミニクの襟首を掴んでユックリと持ち上げる。


ドミニク「こ…のっ…異端者…!」


痛め付けられ顔面が腫れ上がりながらも怨みの言葉を向け、襟首を掴む手首を右手で握り返し左手の空になったデリンジャーの銃底で殴りかかる。


しかし、逆にその手首を乱雑に掴まれ、()()()()()()()へと()()()()()()


ドミニク「ぎゃぁぁあああぁぁぁぁ!!!」


黒い男「黙れって言ったろ…偽善者…!」


ドミニクの絶叫など意に介さずに、冷たく吐き捨てる。


ドミニク「おのれおのれおのれ…ッ」


その怨嗟の言葉も意味は為さない。


黒い男「此処で死ね」


右手で腰裏の"陽"を手に、ドミニクの頭に押し付ける。


ドミニク「畜生畜生畜生…!」


尚も抗い怨み言を述べる。


もうウンザリだ。


こんなエゴイストの相手をするのは。


トリガーに指を掛け、力を込めようとした矢先。


??「ダ…メだ…」


暗がりから声がした。


声のした方に視線を変えずに銃を向ける。


勿論左手の力は抜いていない。


銃口の先には左肩を打たれた副長が苦しそうに身体を起こし、荒い息を吐いていた。


黒い男「…生きてたんだ」


副長「その…男は…裁かれねば…ならない…殺しては…ダメだ…」


副長の苦しげな訴えが、その場に響いた。

1970年代―

ドミニク・サンティスは敬虔な信徒であった―

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