中編 其の七
校舎裏―
用務員の作業として落葉拾いをする黒い男の前に―
七
―4月15日(木)―午後2時過ぎ―
―あきる野市 都立あきる野第二高等学校裏庭―
そこではツナギを着た黒い男が箒で落葉拾いをしていた。
授業中、学校の教室からは調度死角で、誰もいない。
そこへ、校舎からトシが現れる。
トシ「…探したぞ」
その言葉に反応せず、落葉拾いを淡々と続ける。
トシ「…」
だが、トシもその言葉以上に掛ける言葉が浮かばず、黙ってしまう。
もう、何を言って良いのか。
一ヶ月前に突きつけられた事実から―
選ばず、
正論を述べ、
事実を覆せず、
自身の言葉も無力と思い知らされ―
トシには、もう声を掛けた以外、手数が無かった。
トシにとって気不味い沈黙が流れる―
しかし、そんな事は気にせずに落葉拾いを終え、軽く会釈をすると、落葉の入ったゴミ袋を持って、裏門近くに接地されたゴミ捨て場へと向かい出す。
トシ「! 待っ…!」
反射的な言葉はそこで止まってしまった。
??「待って…!」
その言葉を投げ、引き留める。
黒い男「…」
その聞き覚えのある声に、面倒そうにゆっくりと振り向く。
スズ「私達…あなたを連れてかなきゃいけないの…でも、ちゃんとあなたの事説明するし、あなたに対して償いもする…! この事件が終わったら、二度と現れない…! だから…一緒に本部に行こ…!」
その言葉を聴いて黒い男は大きな溜息を一つ吐くと、重い口を開いた。
黒い男「…本名を名乗らんヤツから償い?」
スズ「!」
それはスズに対して衝撃を与えるには十分だった。
スズ「そ…れは…!」
それをすれば、彼との境界が曖昧になる…! 彼は唯一無二の彼であって、他の人と一緒にしてはダメなのだ…!
だって…彼は…彼は自分にとって唯一無二の…!
狼狽え動揺するその様を見て、黒い男は理解する。
ああ…自分には本名を教える気は無いのだな…信頼をしてくれている訳では無いのだな…と
その姿を見て、更に一際大きく溜息を吐くと踵を返し、二人の前から去った。
―日時、場所不明―
―???―
何も無い空間―
只、だだっ広く真っ白な―
そして自分が居る―
目前にも。
―そんなに辛いなら考えなければ良い―
そう言ってくる目前の自分は眼が紅く、額に角の様なモノが在るみたいだ。
その自分が問うてくる―
―そんなに辛いのか?
こんなに辛い
―そんなに痛いのか?
こんなに痛い
―なら変わろう?
変われるか…?
―自分次第
自分次第…
―変わりたいか?
変わりたい
―オレは強い
オレは弱くない
―力は欲しいか?
力は欲しい
―助けたいか?
助けたい
―…何を?
…? ヒトを…?
―そうなのか?
そこで、目が覚めた。
1週間後―
クリフは学生生活を謳歌していた―
仲良くなった同級生…
平穏な日常…




