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異聞録:東京異譚  作者: 背負う地区顎と
人の章

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中編 其の二

全体朝礼が終わり、衝撃的な転入生紹介の後の午後―

今は昔となった用務員室で、黒い男は思う―



―4月12日(月)昼過ぎ―


―用務員室―

挿絵(By みてみん)



その用務員室は、校舎の隣、隣接する森の近くに在った。


室内は六畳一間に卓袱台(ちやぶだい)と、押し入れに布団一式と小さな風呂場とトイレ、入り口は土間で小さな台所という、典型的な用務員室といったカンジだった。


長年使われていないのか、常備されている備品も一昔以上前の物であり、以前は宿直室も兼ねていたと思われる。


それもその筈、近年では警備用の監視システムやらで無人化が進んでおり、そもそも用務員自体が余り必要ではなく、外部委託の派遣が増えている。


だから、泊まり込みの用務員など、近年ではとても珍しいことなのだ。


…そこに違和感無く派遣された本人としては、たまった事ではないが。


黒い男「…今時泊まり込みとか…住んでるガキ共(学生達)は気にしねぇのか…?」


薄緑の作業ツナギを着て、畳の上に胡座(あぐら)を掻きながら愚痴る。


黒い男「…ま、そもそもあのガキ(クリフ)の話題性が勝ったからな…」


体育館での朝礼の際にはクリフの物珍しさが勝ち、自分の自己紹介は生徒の誰もが気にして…いや、視てすらいなかった。


黒い男「…そんなに用務員には興味無ぇか…? …無ぇか」


その納得がいく答えに独り頷く。


しかし…子供の御守とは…Sさんは何を考えているのか…



―4月初旬―


―骨董屋DPP地下―

挿絵(By みてみん)



エージェントA『…全寮制の高校に職員として行ってもらう』


黒い男「…はァ?!」


余りに唐突な事で上擦った頓狂な声を上げてしまう。


黒い男「あの…学校って…教員免許必要じゃないスか…無理ッスよ…」


エージェントA『問題無い そもそも潜入は教職員としてでは無い』


黒い男「…なンスか?」


訝しみながら問う。


その先の良くない意見を想像しながら。


エージェントA『用務員としてだ』


黒い男「…大丈夫なンスか?」


一際大きな溜息を吐いた後、不満そうに問う。


エージェントA『問題無い そこは正規の手順を踏んで派遣する』


黒い男「けどなんで? しかも全寮制となると泊まり込み?」


エージェントA『そうなる 今回はあきる野周辺で発生している学生失踪事件だ』


黒い男「それは…大罪とは関係が在るんですか?」


エージェントA『ああ…(おう)がそう仰ったのだ』


黒い男「…成る程」


その言葉に合点がいく。


黒い男「あのヒト…大分見てませんけど、政府の手助けしてたンスね」


そもそもあの御老体はあの二人(トシとスズ)の傍な筈だが、最近は余り眼にしていない。


何より、六本木の事件以来は尚のこと視なくなった…スズの髪の色が濃くなるほど現れる頻度は減った気がする…


エージェントA『元々あの御方は日本を守護する立場に在る御方だからな …知らなかったのか?』


黒い男「…聞いてないスね」


その事実を教えてもらえず蚊帳の外にされていた感が苛立ちを生んだ。


だが、そんなこともお構いなくエージェントAが続ける。


エージェントA『兎も角、今回は失踪に伴う調査と阻止、大罪を滅する事が依頼だ』


黒い男「成る程…」


エージェントA『資料はアドレスに送っておいた』


その言葉を聞き、PCのメールを開くと、添付されていた資料を閲覧する。


エージェントA『それと…今回はもう一人着ける』


黒い男「…オレだけで十分ですよ」


足手纏い(あの二人の様な半端物)は要らない。


オレ独りで十分だ。


エージェントA『そうではない 流石に時代に逆行する様な用務員だけでは不自然だ …だから、彼が同行する』


黒い男「…彼?」


エージェントA『恐らくその部屋の入り口で待っている筈だ』


黒い男「…は?」


そう言って休憩室の入り口へ向かうと、入り口の影に隠れて見えなかったが、そこには160㎝ちょいの白人の子供が立っていた。


クリフ「あ…あの…」


流暢な日本語で(ども)るその姿は、子供とはいっても十三~四歳くらいで、幼さは在れどそこまで子供ではなかった。


黒い男「…このガキが?」


携帯のエージェントAに問う。


エージェントA『そうだ 彼こそが今回の切り札でもある、バチカンお抱えの退魔師、ヘイデン・C・V・ヘルシングだ』


黒い男「…ヘルシング? コイツが?」


白人の子供が?


耳を疑った。


クリフ「あ…ハイ 僕は、ヘイデン・クリストファー・ヴァン・ヘルシングと言います 十五歳です 先日ヘルシングを襲名しました」


黒い男「襲名?何処で? てかヘルシングって…フィクションでもなく?」


クリフ「ハイ、僕、魔術の心得が在りまして…」


黒い男「一寸待て! ヘルシングで魔術師でバチカンお抱えで襲名?? 情報が交通渋滞起こしてるだろ…」


クリフ「?はい??」


その物言いが理解出来ず首を傾げる。


黒い男「そもそもガキの御守は勘弁ですよ オレだけで十分です」


エージェントA『そう言うな 彼は優秀だ その歳で五カ国語を操り、四大エレメントの魔術を操る …それに、今回の件で手引きをしたのはS…彼なのだ』


黒い男「…は?!」


エージェントA『ちゃんと添付した資料とメールに()の一文が載っているだろう』


言われて確認する。


黒い男「…ホントだ」


ちゃんと載っていた。


Sさんから優秀なサポートを付けると。


クリフ「よろしくお願いします!」


そう言って、白人らしからぬお辞儀をしてきた。


黒い男「ッ…!」


軽く舌打ちをしながら頭を掻く。


エージェントA『今回、彼には転校生として校内の内偵、お前(黒い男)には職員として周囲も含めた内偵を頼む』


黒い男「…解りましたよ…」


エージェントA『よろしく頼む』


そう言って、通話が切れた。


黒い男「て…いうか、バチカンが魔術師を容認…? ウソだろ?」


その有り得ない情報に訝しんだ目を向ける。


クリフ「本当ですよ! 僕…幼い頃から聖道教会から信頼の在るウェルナンド家にも師事してますからッ!だから、バチカンでも公ではありませんが僕等(魔術師)も認められていますッ!」


そう熱心な目でこちらを見上げて力説する。


その、日本語をストレートに受け取って真面目に返すところが、如何にも"流暢に喋れても皮肉が解らない"といった感じで受け取れた。



―4月12日(月)昼過ぎ―


―用務員室―

挿絵(By みてみん)



今の時間帯、クリフは午後の授業だ。


掃除を午前に終わらせたので、見回りを兼ねて校内を探索しようと思う。


黒い男「さて…と」


そう言って、起き上がると、用務員室を後に、この時間は誰もいない校舎周辺に歩みを進めた。

昼休み―

その頃、クリフは―

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