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異聞録:東京異譚  作者: 小礒岳人
人の章

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前編 其の七

残された真美はトシとスズ二人と―

七




―夜11時7分―


―港区芝、私立御厨中高等学校 教員用出入り口―

挿絵(By みてみん)



トシ「…とにかく、キミは助ける 一緒に外へ出よう」


そう言って、トシは真美を連れて裏口へ向かった。


裏門は二カ所あり、近い方へ向かう為には、高等部を突っ切らなければならない為に、少し時間が掛かった。


そこに向かうまでの間、スズの持ち出した大きな鈴を振るっていた。


何故かその間は何事も起きなかった。


それもあって、その間にトシとスズの事を大まかにだが聞いた。


彼等は東京の怪異と戦っている事、命を賭けている事、そして、あの"黒尽くめの男"の行動を止めようとしている事を。


今回の事件は、どうやら蟲憑きと呼ばれる怪物の仕業であること、その理由は解らないが、この学校で何かを起こそうとしているからそれを止める為だという事だった。



―夜11時16分―


―港区芝、私立御厨中高等学校 裏門―

挿絵(By みてみん)



二人に連れられ、裏門を出ると、人気の無い狭い裏道に出た。


そこから先に進めば、いつもの東京タワー通りだった。


トシ「ここまで来れば大丈夫だ キミは安心して帰って」


スズ「…」


その真摯な態度は安心を抱かせる。


だが、沙耶と引き離されてから少し経ち、知人に対する不安も大きくなっていた。


真美「でも…本当に大丈夫なんですか?」


トシ「ああ…俺達がなんとかするから」


眼を逸らさず真っ直ぐ見詰めるその瞳は、揺るぎ無かった。


否定出来ないほどに。


だが、そこで、隣にいたスズが口を開く。


スズ「…そんなに…なんとかするなんて口にしない方が良いよ…」


その言葉には、申し訳なさと、確実に批判が籠もっていた。


トシ「…? なんだ? 急に…どうしてそんな事を?」


その言葉の意味が解らず聞き返す。


スズ「…私達にだって難しい事はある…"絶対"なんて…そんなに簡単に口にしちゃいけない…」


その後ろ向きな言葉に、トシは我慢出来ないのか、食って掛かる。


トシ「!お前まで…! 何故そんな後ろ向きな事を言うんだ! 彼女の為にも、彼女の友達は救わなきゃいけないだろ! それにッ…! ア(・)イ(・)ツ(・)だってッ…きっとそ(・)う(・)し(・)て(・)い(・)る(・)だ(・)け(・)なんだッ」


スズ「解ってる…!その気持ちは…! でも…出来るか解らない約束は…するべきじゃ無い…」


トシ「!」


その言葉に、六年前の記憶が蘇る―


トシ『―また、いつか必ず―会おう!』


六年前に、永遠に別れた親友との―


トシ「そっ…それは―っ…!」


スズ「…半年前に、言われたこと…忘れた?」


そのスズの言葉には、確実な批判が籠もっていた。


…半年前の、最後に彼に会ったときの記憶…


黒い男『お前等二人、誰(・)を(・)視(・)て(・)る(・)ん(・)だ(・)よ(・)?!』


その言葉が、彼の心を抉った。


スズ「…トシ― 私達はさ? 彼に贖罪しなきゃいけないんだよ? 何をしたって… …それこそ―…殺されたって…」


その最後の言葉は、本当に殺されても構わないという風に、真美には聞こえた。


トシ「…ッ だが…ッ 俺達には俺達の出来ることを、やっていくしかないんだッ…! アイツはッ…ああしているだけなんだッ…きっと…!」


その言葉に、スズは失望した様に目線をトシから逸らし、校内へ歩き出した。


真美「…あの…大変かも知れないけれど…がんばってください…」


真美はその場をどうして良いか解らず、思ってもいないその言葉を投げた。


トシ「あ…ああ…済まない…本当なら巻き込まれたキミの前で… 友達はなんとかするから 人通りの多いところを通って帰ってくれ 良いね? それで、もしまた本当に何か困った事があったら、ココにアクセスしてくれ じゃ」


そう言って、URLだけが記載されている名刺の様なモノを手渡し、トシはスズの後を追った。


真美は沙耶の安否を心配しながらも、帰路へ付いた。


彼女の十五年の短い人生の中で体験した、もっとも危険で不可思議な体験は、此処で幕引きとなったのである。

その頃、中庭で黒い男は―

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