色 第一話 2014年10月
2014年 10月12日―
黒い男達は、新宿の高層ビルにいた―
旧知の間柄である、白の男と共に―
二
2014年 10月12日(日)午後11時過ぎ―
―新宿 都庁近く高層ビル屋上―
其処はヘリポートもある高層タワーだった。
その屋上のドアを勢いよく開け、二人の男が出てくる。
一人は黒いコートで両手に二丁の拳銃を持ち、もう一人は神道の衣冠単を白一色に変えた"装束"を纏った眼鏡をかけた痩せぎすの男だった。
そして、一間置いて屋上のドアが勢いよく吹き飛ばされ、その中から、巨大な蛇が猛烈な速さで追い掛けてくる。
ドアは拉げ、力で強引に壊されている。
それは単純な仕事だった。
アイドルグループの周辺で起きた怪事件を調査する流れで、このビルに蛇の化け物が出るという事だった。
本来なら、なんて事は無い単純なものだった。
だが、違った。思った以上に面倒だったのだ。
両手の銃、『陰』と『陽』を有り得ない速度で撃ち込む。
黒い男「チッ…!」
弾が効かなかった。
純銀だけでは足りない様だった。
白の男「なら…! 臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前!」
そう、白の男が印を結びながら唱えると、その大蛇の足下が輝き、浄化の光が包む。
浄化の光が放たれると同時に、颯爽と黒い男が大蛇の前に出る。
黒い男「よし!」
そう言って左手に"閻魔"を顕現させると、擦れ違い様に瞬速の抜刀で大蛇を横薙ぎに斬り割く。
一瞬間を置いて納刀する。
鍔がカチンという音と共に納刀されると、"閻魔"は手元から消えた。
そして振り向くと同時に、大蛇の肉体に一線が入り、緩やかに擦れ落ちた。
黒い男「ふぅ…」
白の男「気を抜くなよ」
黒い男「解ってますよ」
そう阿吽で答えながらも、勿論気は抜いてない。
青い男『イケました?』
そこに、青い男が無造作に耳のインカムからそう告げる。
今の役割は下のバンからのサポートだった。
しかし、その軽くは思っていなくともそう感じる言葉に白の男が言う。
白の男「オイ、気を抜くな…!」
その余りの強い言葉には、威圧が籠もっていた。
青い男『あ…スミマセン…』
その強い言葉に萎縮してしまう。
それは当然だ。
黒い男「あー…まーまー…」
だから、それを悟ってかフォローを入れる。
白の男「…甘いんじゃないのか? 緊張感が無さ過ぎる」
その言葉を、青い男に聞こえない様に自分に投げかける。
そのストイックな姿勢には尊敬が出来る。だが、知らない人間には少し、それはキツ過ぎる。
黒い男「解りますけど…緊張してンスよ」
白の男「そんなんじゃ死ぬぞ…!」
緊張感を緩めず、そう言いながら黒の男の方に向かう。
黒い男「まーまー …下に寄せといてくれ」
その厳しい姿勢を宥めながら、そう、青い男に指示を出す。
青い男『解りました 直ぐピックアップ出来る様にしときます』
黒い男「了解… ?なんだ…?」
その違和感に気付き、改めて、その異様さに眼を見張る。
大蛇の斬られた部分が蠢き、何かが出てこようとしている。
黒い男「終わってない…!」
そう言って身構え、素早く腰裏にあるマガジンを銃にリロードし、スライドを戻した。
蠢く部分が盛り上がり、ギチギチという音と共に女の形を形成し始めた。
白の男「女だと?!」
その驚きと共に一歩身を退く。
黒い男「オレが牽制するから!」
そう言うと、白の男が後ろ向きに走り出す。
それと同時に、黒い男の両手の銃が、有り得ない速さでトリガーを引かれ、無数の弾丸を大蛇に向けてバラまかれる。
白の男「了解だ! 先に行く!」
そう返答し、ヘリポート先から飛び降りた。
黒い男「解った!」
そしてそう答え、自分も追って走り出す。
後ろから、それを追い掛け、女の形をした大蛇が全速力で追ってくる。
迷わずヘリポートから飛び出すと、跳躍し、上空で上下反転、再び左手に"閻魔"を顕現させる。
刹那、迫ってくる女の大蛇に数十閃、瞬速で斬撃を与える。
自分に食い付く距離まで迫ってきた瞬間、ゆっくりと納刀し、カチンという音がする。
と同時に、その大蛇は細切れになり、赤い血飛沫に変化した。
そして"閻魔"をしまうと、上下逆さまのまま、ビル下へと落下した。




