承 第三話
2015年12月31日(木) 午後11時過ぎ―
新年を前にした目黒不動にて、矜羯羅童子に呼ばれた二人は、邪気の元を探る―
十一
―2015年12月31日(木) 午後11時過ぎ―
―泰叡山護國院 瀧泉寺 ―目黒不動尊裏通り―
二人は目黒不動の裏通りに来ていた。
普段、この時間は人がほぼいないが、流石に大晦日とあって、人が遠目にいる。
しかし、裏通りの為か、目立ちはしない。
そこに、矜羯羅童子がいた。
相変わらずこの時期には目立つ格好だが、この暗さでは人目には付き辛い。
矜羯羅「来たか 龍の者よ」
黒い男「どういう状況だ?」
サイトを通して連絡が来たのは、用意が丁度終わった時だった。
矜羯羅童子に、目黒不動に、また行け と。
矜羯羅「不動に西洋の魔が入った」
青い男「は?! こんなに賑わってるのに?!」
言う通りだった。不動内は、新年を迎える催しが続いている。
矜羯羅が言う様な邪気による異変は感じられない。
黒い男「どういう事だ?」
矜羯羅「此処ではない だが、此処なのだ」
青い男「…は?」
矜羯羅「どうやらあの山羊頭はそれが目的だった様だ… 奴以上の魔を顕現する為の」
黒い男「それが、"何か"か―…」
昨夜の事を思い出し呟く。
矜羯羅「そうなってしまったな…」
矜羯羅童子は、少しだけ申し訳なさそうに言った。
黒い男「…なら、助けて貰うぞ 不動明王の力で」
こいつは悔いている。護れなかった事を。
その一途な思いは自分の心を打つのに十分だった。
―その意志を継いで、斃せる自分が斃してやろう―
その顔は、そう思わせるのに十分だった。
矜羯羅「済まない 龍の者よ…」
青い男「…でも、どーするンスか? 場所もわかんないのに―…」
矜羯羅「場所は我が導く」
青い男「え?」
矜羯羅「場所は此処、瀧泉寺 だが…
裏、とでも言えば良いか…」
青い男「裏…?」
矜羯羅「そっくり同じ物が在ると言えば良いのか…」
青い男「??」
流石に割って入った方が良いのか、黒い男が口を挟んだ。
黒い男「別の空間に在るって事か?」
矜羯羅「そうだな…そんな所か」
思惑しながら、矜羯羅童子がそう答えた。
矜羯羅「其処に邪気を留め、強大な魔を顕現する気なのだ」
黒い男「其処は"鏡"か?」
疑問を投げた。コピーなら合わせ鏡が判り易い。
矜羯羅「その様なものだ」
黒い男「なら、"聖域"は?」
元が聖域なのだ。裏も模倣するならそうなる筈。
矜羯羅「意味は為さない あくまで仮の物だ だから質が悪い」
青い男「どういう事です?」
素直に解らず、真面目に聞いた。
矜羯羅「必要なモノ、そうでないモノを選り分けて創られた世界なのだ」
青い男「はぁ? …そんな都合の良い…」
流石に呆れた声を上げる。
矜羯羅「それ程迄に強力な魔だという事だ それに…」
黒い男「それに?」
矜羯羅「恐らくそこに捕らわれているやも知れぬ…居なくなった御仁も」
黒い男「…」
顎に手を当て思惑する。
知っている。
多分ヤツだ。
コイツとも十二年振りだ。
黒い男「行き方は?」
そう述べると、矜羯羅童子は直ぐ様そこに向かった。
―午後11時20分―
―目黒不動尊内 弁天池―
薄暗い中連れてこられたのは、不動の外側に位置する池だった。
黒い男「…此処か?」
矜羯羅「そうだ」
確かに。弁天池なら、夜中に、大晦日といえど、人は来ないし、
立ち入り禁止だ。
青い男「…つっても池ッスよ」
半信半疑丸出しの声を出す。
矜羯羅「"ナウマク・サマンダボダナン・エンマヤ・ソワカ"」
矜羯羅は、焔摩天の真言を唱えた。
黒い男「…それは」
いなくなった閻魔の真言。
それは、確かに此処と向こうを繋ぐ事が出来る。
矜羯羅「…情けない事だ」
自分の領域なのに―その力が及ばず、連れ去られた閻魔―それは余程の事だ。
その苦悩は、我々には計り知れないだろう―そう思った。
唱えてから少し待つが、何も変化は無い。
―だが、暗闇の中、池に映るのは自分ではなく、鏡の中の様に反転した世界だった。
黒い男「よし、行け」
青い男「は?!」
そう振られて戸惑いを見せた。
青い男「そんなボケ…!」
黒い男「そーゆー意味じゃねー」
ボケてねーわ。
行けと池を掛ける。
そんな事、今するか。
青い男「いやいやいやいや…」
明らかに眉唾な感じで渋っている。急にリアリストになりやがって面倒だ。
いつもコレ以上を経験してるだろ。
少し苛つく。
黒い男「いーから行け!」
と急に背中を足蹴にし、池に落とす。
青い男「え?!は?!ちょぉぉぉぉぉぉ…!」
その後を追う様に自分も入る。
矜羯羅「我はこの場に残り、力を送る これは昨日の利剣の欠片を不動様と我の"力"で複製したものだ!持って行け!」
それに頷き、受け取った欠片と共に、中に入った。




