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異聞録:東京異譚  作者: 背負う地区顎と
起 編

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130/233

起 ―幕間― 龍ノ刻 其の五

2003年、火山の噴火により過疎が進んだ三宅島、その火山の麓にある廃教会…

そこには一体の悪魔と対峙する青年と、それに囚われた一人の女がいた―



―2003年8月―


―三宅島 廃教会―


青年「もう良いんだ!一緒に帰ろう!」


崩壊するその建物の中で、彼は叫んでいた。

瓦礫の上に、

赤と紫の薄着姿で、

恍惚とした表情で立つ女性―

その視線は上空にある杯に向けられていた―

その青年は、眼が離せなかった―

その異様な光景に―

その異質な状況に―

助けた女性が、再び、危機にさらされている―

それが、焦りを生んでいた。


山羊頭バホメット「無駄だ…この娘にはもう届いていない 貴様もこの絶望を享受しろ」


その山羊頭の怪物は開いた翼で飛翔しつつ、耳障りで不快な、

そして、見下す様に、当たり前の様に、青年に言い放った。

…うるさい…!

心の中で山羊頭に反論した。

だが、山羊頭には眼を向けられなかった。

それはとても辛い事実だったから。

その事実を受け入れてしまっている自分が居たから。

無力だと。

自身が弱いせいだと。

だからこの事態におちいったのだと。

これは自分のせいだ。

自分がもっと強ければこんな事態に陥ってはいなかったのだと。

彼女を助け、立ち直れる様に話をし、色々と気遣った。

彼女との交流は、自分をも変えてくれた。

彼女を救いたい。

助けたい…!

火山ガス臭がする…ここも危険だ。早く逃げないといけない。


山羊頭「勘違いしているな…」


うるさい…!


青年「いなくなったのは気にしてないから…! 早くしないと…!」


山羊頭「これは、この娘が望んだ事だ…」


…え?


山羊頭「この娘は自分で享受(きょうじゅ)しているのだぞ?」


…何?


山羊頭「この娘が望んでこの罪を呼んだのだ」


ウソだ


山羊頭「我が呼び掛けにこたえたのだ」


じゃあオレは―


山羊頭「これを望み、起こしたのは」


止めろ


山羊頭「この娘そのものなのだよ」


―何の為に?


山羊頭「貴様の行いは無駄だった」


聴きたくない


山羊頭「こうも言っていたぞ」


ああ―そうか


山羊頭「貴様が鬱陶うっとうしかった―と」


こんなものは護れない


山羊頭「貴様は護ってはいなかった」


狩るべき存在だったんだ


山羊頭「むしうと―」


彼女も大罪だ 斬らないと

いつの間にか右手に現れていた"閻魔"で、その場そのものを斬り裂いていた。

山羊頭の言葉もそこで途切れた。

その場所も、細切こまぎれに、崩れ落ちた。




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