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異聞録:東京異譚  作者: 背負う地区顎と
起 編

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129/233

起 ―幕間― 龍ノ刻 其の四

圧倒的な"力"で山羊頭の化け物を斬り伏せた黒い男。

だが、まだそれだけでは終わらなかった。

山羊頭達の言い訳はまだ続いていた―



ドサッという落下音と共に、血や内臓の飛び散る嫌な音がする。


無頼漢「ぁあぁぁああァァァ…! なんだァ…オメェはァァァァ…!」


()()()()()()()()()()悲痛な声を絞り出しながら、()()()()()()()()()悲痛な恨み言を述べた。


山羊頭「ぎざま゛…あのどぎの゛…?」


そうさえず()()()にゆっくりと歩み寄る。


黒い男「…」


汚いモノを見る様な眼で()()を見下す。


無頼漢「なんで…! なんでオラァが…こんな目にィ…!」


その一言に反応する。

…こんな?

硬い靴の裏で容赦なくユックリと、力を込めて()を踏み付ける。


黒い男「なんでこんな目に…だと?」


暗い意思が一層黒くなった。力を込めてその足で()を踏みにじる。


黒い男「貴様が此処でやった事はなんだ…? 243年前に起こした事を…忘れたとは言わさんぞ…? 本郷丸山に発し、江戸の三分の一を焼いた大火事を…!」


その言葉には殺意と共に明確な怒りがこもっていた。


黒い男「自分の為とかくそフザけた理由でやったのなら…理由にはならん…! どれだけの人が死んだと思ってる…? 貴様のエゴの為に…!」


無頼漢「ちょっとした事だぁ…! オラァが悪ぃんじゃあねぇ…! 逃げなかった奴らが悪ぃんだァ…!」


悪びれずにその()()()はそう述べた。

その言葉に激情が全身を駆け巡る。

殺意という名の。


黒い男「黙れ…! 甘えた事ばかり抜かしやがって…!

要は手前テメぇがラクしたがった結果だろうが…!

故に、貴様は十の大罪ほぼ全てに当て嵌まる大罪人だ!

今回の"怠惰"も貴様のせいだろうが…!

責任を負え…! コレが貴様のした行動の結果だ!

貴様に慈悲は無い…!

罪を贖え…!」


無頼漢の顔を踏み付ける足に更に力がこもる。

それは、到底許せる事ではなかった。


山羊頭「ぎ…ざま…! 本当にあの…おどごか…?!」


()()山羊頭が、余りの違いに疑問を喋りだす。

苛つく対象が更にもう一個増えた事で、怒りが増す。


黒い男「あァ…?! 何、十年前の頃と一緒にしてんだ…?」


山羊頭「十年…だと…そんなに…」


その事実に驚きを隠せないでいた。


黒い男「経ったんだよ。お前等が別次元にいる間にな」


山羊頭「貴様…あの時とはまるで別の…!」


ぐじゃあ

という音と共に腹部の顔を踏み潰した。

頭蓋が爆ぜた音だ。

腹部の無頼漢顔をあっさりと踏み躙る。

何事もなかった様に当然に。

聞きたくもなかった。

なので終わらしただけ。

イヤだどうだと甘えた事をのたまっていた様だが、そんな事は聴かなかった。

実体化していたので、()()が飛散する。

山羊頭が苦悶の表情で苦痛の声を上げる。

目には苦痛の為かうっすらと涙も浮かんでいる様だった…

だが、そんな事には微塵も容赦しない。


黒い男「…忘れるものか…! 貴様のした事を…! ()()()の事を…!

…その上で…()()()()()()()()…!」


それは、その山羊頭からしたら、()()()()()()()()()()()

もう山羊頭には陰氣をまとい、黒い影の様になった、()()()()()()()()黒い男の姿に恐怖する事しか出来なかった。

悪魔の自分が?

あんな半端な存在だった者に?

自分が?

悪魔の自分が?

恐怖している。

そう。

今…

自分は…

恐怖している…

悪魔なのに。

悪魔なのに、この眼前にいる黒い男の陰氣に呑まれている―

ああ

自分は、

殺されるのだ―

絶対的な死―

免れられない絶対的な―

無への恐怖―

それを訪れさせるのが、眼前のこの男。

見下すべき対象の人間―

見下していた人間―

その間際まで恐怖を染み込ませられるのだ―

それが、

怖い

のだ。

バホメットは恐怖した。


黒い男「絶望を味わえ―」


黒い男の右手には、いつの間にか、邪気を喰らう、生きた退魔の刀"閻魔"が在った。

右手に力を込め、

"閻魔"を、

ゆっくりと、

深々と、

山羊頭の顔に、

刺し込んだ。

その圧倒的な様相に、一部始終、キンカラは動く事が出来なかった。





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