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異聞録:東京異譚  作者: 背負う地区顎と
魔の章

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114/233

其の二十三

自らを"閻魔"で貫いた黒い男―

佇む仲間達は―…

二十三



―11月25日(木)深夜1時28分―


―新宿区 西新宿 大学病院 手術室―

挿絵(By みてみん)



執刀医「ボスミン(心停止補助治療薬)投与して…!」


助手A「はい…!」


助手B「Aライン(動脈点滴)確保…Vライン(静脈点滴)確保してます…!」


執刀医「緊急輸血… 輸血用意して 400―」


助手C「3ですね?」


執刀医「そうだ…! 気道確保…!」



―同刻―


―新宿区 西新宿 大学病院 手術室廊下―

挿絵(By みてみん)



俊「…」


手術室を見詰めながら、俊は立ち尽くす。


涼「…」


涼は立ったまま俯いている。


クリフは涼の横に立ちながらも気遣っている。


竜尾鬼は待合室にて、携帯で何処ぞに電話を掛けている。


黒い男が自らを刀―"閻魔"で刺し貫いてから、50分ほど。


竜尾鬼が坂本に連絡を取り、医者と病院を用意させ、クリフがエージェントAへ連絡し、救急車を急遽手配し、迅速にこの新宿の病院へと搬入したのだ。


俊「―ッ!くそッ…!」


吐き捨てると同時に拳で壁を叩く。


それは自責の念による行動なのが、誰にも理解出来た。


俊「眼を見た瞬間解ったのにッ…! 止められなかったッ…!」


その後悔の言葉が、深夜の廊下に響く。


気不味い沈黙が続いた中、手術のランプが消え、一息吐きながら手術医が出てくる。


医師「! 皆さん…! 待合室でお待ち下さい…!」


出てきた医者は皆がその場にいる事に驚きながらも注意を促しつつ、話を続ける。


医師「…残念ですが…」


目線を逸らしながら告げたその言葉が、その場にいる者全員の心を抉った。



―数刻前―


―台東区上野 上野公園内国立西洋美術館 地獄門前―

挿絵(By みてみん)



俊「意識はッ!?」


倒れた黒い男の側に寄るクリフが、首元で脈を測るその姿に、俊は焦りの籠もった言葉を投げ掛ける。


涼「落ち着いてッ…これじゃ看れないよ…!」


俊「ッ…!」


落ち着き払った涼の姿と言葉に苛立ちを覚えるも、その正論に黙って背を向ける。


クリフ「…とても弱いです…呼吸も… すぐ病院へ連れて行かないと!」


竜尾鬼「…病院を手配した 新宿の病院だ」


電話を切って振り返りながら告げると、それに応えてクリフが口を開く。


クリフ「でしたら、政府の方へ電話します! ここからだと時間が掛かりすぎるので!」


言いながら携帯を取り出し、電話する。


そこから数分足らず、有り得ない速さで救急車が到着し、黒い男を乗せると、爆速で新宿への道へ向かった。



―深夜0時59分―


―救急車車内―

挿絵(By みてみん)



車内には救急隊員が二名、そして涼とクリフが乗っている。


残りの俊と竜尾鬼の二人は、後ろから別の車で追走してきている。


適切なクリフの処置でこれ以上の悪化は無いと言われたが、以前、重傷のため予断を許さない状況なのは変わらなかった。


涼「…」


涼は神妙な顔付きで黒い男に眼を遣り続ける。


隊員の声とサイレンが、ただ流れ続ける。


そんな中、涼が頭を下げたまま呟く様に口を開く。


涼「…あの時…もっと早く気付いていたら…こんな…っ」


その微かな声に反応したのか、クリフが声を掛ける。


クリフ「…そんなことはありません…これは、止められませんでしたよ」



その言葉に反応し、涼は顔を上げる。


涼「でもッ! おかげで彼はこんな事にっ…! こうならない様にしてたのにッ…!」


クリフへの眼差しには、後悔と哀しみの涙が滲んでいた。


クリフ「それでも…なんとかなるはずです」


紡ぎ出されたその言葉には、信念が在った。


そうこう話している間に、周りが慌ただしい。


救急隊員A「バイタル低下…! !CPA(心肺機能停止)!」


クリフ「?! え!?」


救急隊員B「目前だってのに…っ!」


涼「どう…! したの…!?」


その言葉と同時に、救急車は病院へと到着した。

何も無い―

その場には何も…

黒い男は"その場所"に居た―

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