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異聞録:東京異譚  作者: 小礒岳人
魔の章

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其の十五

突如現れた女神は告げる―

スズの本質を…

十五



―8月27日(金)昼過ぎ―


―三重県亀山市関町坂下 片山神社 社殿跡―

挿絵(By みてみん)



トシ「!? 天佐具売命(あまのさぐめ)?!」


そう発したトシの言葉に、中空を浮遊する女神=天佐具売命(あまのさぐめ)は微笑みながらも頷く。


天佐具売命(あまのさぐめ)「そう、(わたくし)です」


スズ「なん…で? こんなところに…?」


トシ「アナタは和歌山の平間神社に縁が在るハズ…! ここには…!」


その有り得ない事実に二人が驚愕していると、天佐具売命(あまのさぐめ)が答える。


天佐具売命(あまのさぐめ)「アラ、(わたくし)あなた(スズ)と繋がっていたのですから、当然です」


おっとりとした笑顔でクスクス笑いながら言う。


トシ「でも…?! 何故?? 急に…?」


天佐具売命(あまのさぐめ)「…現れたか、ですか?」


トシ「! ああ…!」


その全てを識ったかの様な答えに、驚きながらも直ぐ様素直に返してしまう。


天佐具売命(あまのさぐめ)自分(わたくし)の事だからです… ずっと…あなた(スズ)の思いは伝わっていました…けれど、あなたは6年前に()()()()()()()()()()()()、それに囚われない生き方を得た…無論、その時の辛い思い…それは(わたくし)のせいではあるのですが… それもあって、(わたくし)は平穏を得たあなたに、この6年間…極力関わらぬ様にしてきていました…」


その言葉には、後悔とも取れる苦しみが混じっていた。


スズ「でも…私は苦しかった…! この6年! ずっと!」


涙を流しながら放たれたその本心を、天佐具売命(あまのさぐめ)に打つける。


スズ「たとえ…たとえあの時(6年前に)(トシ)と殺し合わなくちゃいけない宿命だったとしても!それを乗り越えて()()()()を失う事も!5年経って!…再び…()()()と同じ氣を持つ人に会う事になっても…!」


秘められた思いを全て打ちまけ、大粒の涙を流しながら地面に項垂れる。


スズ「()にはもう会えない…ッ!」


完全に黒となった長髪が地面に垂れ、顔を覆い隠す。


スズ「なのに()()()に会って…裏切って…しかも救う力も無いなんて…! こんな…こんなにも辛い事は…ないよ…」


スズからの筆舌に尽くしがたい心の苦痛が、その場に拡がる。


天佐具売命(あまのさぐめ)「そうでしたね…」


とても申し訳なさそうに、そして天佐具売命(あまのさぐめ)は続ける。


天佐具売命(あまのさぐめ)「私が…安易にそんな事(救い手を連れてくる事)をしなければ良かったのです… 元を正せば、天若日子(あめわかひこ)様に…矢を放たせる様な事をさせなければ…」


()()()()()()()()()()()()()()()()天若日子(あめわかひこ)を射殺す結果になってしまった、天孫降臨での痛ましい出来事…


天佐具売命(あまのさぐめ)「ですから―」


そう言うと、キッとスズに視線を向ける。


天佐具売命(あまのさぐめ)あなた(スズ)の手助けをします…!」


トシ「…え?」


突然の申し出に驚いてしまう。


天佐具売命(あまのさぐめ)「…残念ながら、藤原俊宗(ふじわらのとしむね)(ゆかり)在るアナタの手助けは出来ませんが、助言は出来ます― ()()()()()を探しなさい― それが、アナタの"力"を解放する事となるでしょう―」


トシに視線を遣りながらそう述べると、直ぐ様スズへと視線を戻す。


天佐具売命(あまのさぐめ)「私の中に宿る、鈴鹿御前(すずかごぜん)の知識を全てあなた(スズ)に移します いいですか?」


スズ「!… ―構わない…!」


その問いに、スズは決意した眼で答え、頷く。


天佐具売命(あまのさぐめ)「その代わり…もう、平穏には戻れませんよ…? この力がもし外に知られれば、異形として扱われるでしょう …それでも、構いませんか?」


最後の言葉には、哀しみも籠もっていた。


恐らく、彼女(天佐具売命)からの慈悲だろう。


普通に生きる事の喜びを捨てる事への。


過剰な力は、人から異端と蔑まれる。


彼女は鈴鹿御前のそれを知っていた。


スズ「…それでも! 彼を救うのは、私の使命だと思うから…!」


その真っ直ぐな眼差しを向けるスズには、信念を感じた。


天佐具売命(あまのさぐめ)「…解りました では、いきますよ…!」


言うと天佐具売命(あまのさぐめ)の両手が光り輝き、ゆっくりとスズの頭部へと触れた。


その輝きは、全てを覆うほどだった。


トシ「うッ…!」


温かな光がより一層輝く。


眼を覆うほどの光を手で庇い、ゆっくりと収まっていった後、その手を下ろした時には、もう変わっていた。


スズの髪色は元の金髪に戻り、身体からは輝く様な氣が放たれている。


トシ「! …その…! 姿は…!」


6年前の…大罪を封じた時の姿と同じだった。


天佐具売命(あまのさぐめ)「それが…あなたの中の神通力を解放した状態です 知識は扱えている様ですね」


涼「…ええ、どうすればいいか…よくわかった」


両手をゆっくり握り締めると、上を向く。


涼「俊…これから、山に入ってくる 探す物も在るし …あ!心配しないで! 終わったら連絡するから…! じゃ、行ってくるね!」


そう言うと、最後にトシへ笑顔を向け、軽く屈むと、途轍もない跳躍力で鈴鹿山へと消えていった。


トシ「…アイツは、見付けたんだな…探すべきモノを…」


そう言ってトシは視線を落とすと、自分の右手の平を見詰める。


未だ掴むべきモノは無い。


見付けられたスズを羨ましく思う。


天佐具売命(あまのさぐめ)「大丈夫です…アナタも必ず見付けられます」


トシ「…だと良いが」


視線をスズが飛んでいった方角に向けた。

独り東京へと向かうトシ―

そこには…

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