表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異聞録:東京異譚  作者: 背負う地区顎と
魔の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/233

其の十四

8月も終わりになった頃―

二人は三重の山奥へと来ていた―

そこは鈴鹿御前縁の地―…

十四



―8月27日(金)昼過ぎ―


―三重県亀山市関町坂下 片山神社―

挿絵(By みてみん)



昼だというのに周囲は木々に覆われ薄暗く、苔()した石段と併せて、空気がジメジメとしていた。


トシ「―…ここが…鈴鹿権現の祀られている場所―…」


この地に降り立った二人、その男の方が口にする。


スズ「…」


女の方は無言でゆっくりとした足取りで表参道の石段を登る。


トシ「…"鈴鹿流長刀の石碑"… やはり…関係あるんだな…俺達と…」


縦長の石碑を見上げながら呟くも、実感が湧かない。


石碑を後に、スズを追う。



―三重県亀山市関町坂下 片山神社 社殿跡―



階段を上りきると、スズが雑草の生え散らかした台座の上に片手を置き、座り込んでいた。


スズ「…こんな―…何にも残っていないなんて…」


後ろ姿ではあるが、その言葉には哀しみが籠もっていた。


その後ろ姿を直視出来ず、視線を逸らしてしまう。


トシ「…仕方ないさ…この片山神社は、6年前に放火にあって以来…周辺地域の過疎化もあって…再建の目処も立っていない…それに…」


スズ「そういう事を言ってるんじゃないの!」


遮る様に発した大声は、誰も居ない山中に響く。


しかしトシは続ける。


トシ「…田村神社ももう無い…俺達のルーツは…ここには無いんだよ」


その諦観(ていかん)にも似た感覚で紡いだ言葉に、スズは答えなかった。


当然だ。


物事はそう都合良くいかない。


これが現実なのだ。


トシ「―さあ、行こう…他にも"鈴鹿"に関わる神社は幾つも―…」


言いながら屈み込んだスズに眼をやると、僅かに肩が揺れていた。


スズ「俊宗も―…」


トシ「え…?」


そのか細い声に聴き取れず、聞き返してしまう。


スズ「鈴鹿御前も…もうわからない…」


トシ「そんなことはない…! 他にも二人の伝承や記録は…!」


スズ「数が膨大過ぎるッ…! それとも北陸全て回れっていうのッ?! その間にも(黒い男)は…ッ」


トシの言葉を遮り、スズの叫びが周囲に響くも、直ぐ蝉の音によって掻き消されていく。


スズ「…京都や伊勢、関西は先に回ったんだよ…なのに…何の収穫も得られなかった…むしろ、私達に関係が在るなんて…これっぽっちも思えなかった…」


絞り出す様に吐露する。


この半月で、関西での坂上田村麻呂と鈴鹿御前の伝説に縁在る、祀った神社、寺に向かい、遺物に触れたりもした。


―しかし、何も起きなかった。


何も感じられず、心さえも動かず、無関係なモノに感じた―


自分に全く関係が無い―


つまりは何も変わらなかったのだ。


京都でお互い単独行動を取った時も…


それは、トシとて同じだったから、尚更何も言えなかった。


スズ「私達は…自分達の運命に囚われてた…それを捨てた時から…戻る事なんて出来ないんだ…だって捨てたんだから…」


あんなに意気込んで(黒い男)を救うと(うそぶ)いてみせて…


…結局何も出来ない。


なんて無力なのか。


若い時には無限の希望が在った。


可能性も無限に在る。


しかし、大人に成った今は解る。


そんな事は有り得ない。


限界が在る。


正しく合った事をしなければ、答えなどは導かれないのだと。


その果てない数の答え合わせに、心は押し潰されていた。


トシ「…」


トシも、その言葉に黙してしまう。


スズの頬を一筋の涙が伝った。


スズ「もう…私達には…」


涙が一滴(ひとしずく)、ぽたりと台座に落ちた。


―その瞬間(とき)だった。


突如としてその雫から広がる様に地面が光り輝き、その中から一人の女性が現れたのは。


??「お久し振りですねぇ お二人共」


その天女の様な羽衣を纏い、中空に浮遊する巫女装束の格好をした、()()()()()()()()()はそう告げた。


眼の前に突如として現れた其の懐かしい女神はスズへと告げる―

"目覚めよ"―と…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ