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異聞録:東京異譚  作者: 小礒岳人
魔の章

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其の十一

対峙する二人の男女―

トシとスズは迷い無い視線を向ける―

十一



―11月25日(木)深夜0時22分―


―台東区上野 上野公園内国立西洋美術館 地獄門前―

挿絵(By みてみん)



黒い男「…オマエ…刀なんか使おうってのか? オレに? 符術と勧請しか出来ないオマエが? 敵うワケないだろ? ナメてるのか?」


無謀なその行為に呆れつつも、怒りを抱く。


トシ「…俺達が救う…!」


しかし、放たれた言葉はこちらの言葉に返したものではなく、その発せられた言葉を聞いた途端、抑えられない程の怒りが頭を貫き、爆発する。


黒い男「! 何が大丈夫だ! 何が救うだ! オマエ等誰もオレの今の心を解ってくれやしないのに救うだと?! 自惚れるんじゃねぇ!!」


オレは頑張ってきた! 東京のために独りで! だけど、誰もオレの側には居ない! 誰も解ってくれない! オレに寄り添ってくれない! そんなオレの気持ちを解ってくれないのに、何処へ導く?! 救おうというのか?! それともオマエ達の理想にオレを導くっていうのか?! そんな傲慢! オマエ達の思い通りになんかなってたまるか!


トシとスズは自分を別の誰かの代替として視ていた―


好意を抱いた人間には拒絶された―


学生を救えなかった―


学生は救えなかった―


協会に裏切られた―


父には拒絶され―


仲間も自分の意思を解ってくれない―


誰も彼も― 皆…


自分からは離れていく…


自分を孤独にさせる…


心の中で渦めく様々なその思いが、怒号となって三人へ放たれた。


それに、小さい声で語り始める。


スズ「…そうだね…勝手に頼んで勝手に思って勝手に救うって…"傲慢"だね…でも、その"罪"も含めて、貴方のために、"力"を使う!」


キッと視線を向け、力を解放した。


黒髪がみるみる金色(こんじき)へと戻り、そして周りがその光で照らされるほどの、眩く輝く強大な力が解放される。


周囲には大小様々な三本の刀が現れ、浮遊している。


スズ自身も同じ様に浮遊していた。


黒い男「! 魔人化…!」


まさかと思ったその魔人化に、一瞬たじろぐ。


その力強い自分へと向けられる視線には、迷いが無かった。


トシ「オン・バザラ・(金剛の如く不壊なる徳)ダラマ・(を身に付けた)キリク・(千手観音よ、)ソワカ(帰命し奉る)!」


真言を唱えながらトシは持つ刀を鞘から引き抜くと、同じく凄まじい輝きを放つと共に。力が解放される。


黒い男「トシ…スズ…オマエ等…その力…!」


驚愕し、二人への疑問を口にするも、揃って(かぶり)を振る。


スズ「いえ、違う…!」


俊「俺は…"青い符術師"だ!」


涼「私は"金鈴の巫女"! アナタの…」


符術師「罪を祓う者だッ!」


二人はそう告げると、力強い足取りで黒い男へと向かった。

三ヶ月前―霞ヶ関―

四人はこれからの事を話し合う―

黒い男を止めるには―

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