其の十
目前に現れた見知った魔術師―
しかし…彼は…?
怒りに包まれた黒い男は―…
十
―11月25日(木)深夜0時17分―
―台東区上野 上野公園内国立西洋美術館 地獄門前―
ゆっくり近付いてくる見知った金髪の魔術師。
今さっき目前に突き刺さった剣から発生した光陣のせいか、全身が痺れ、動くことが出来ない。
あれから三ヶ月…クリフ…は背が伸び、声も少し太みを帯び、服装は白のコートを羽織り、雰囲気が大人びはじめていた。
クリフ「待っていて下さい 直ぐ助けますから…!」
語尾には力強さが籠もっていた。
―助ける!? オレが?! オマエ如きに―?!
侮られたとそう感じた瞬間、怒りが頭を貫いた。
右手の甲の鱗が輝きだし、右手を無理矢理動かしだす。
クリフ「!そんな?! そんなに強力な"怒り"だなんて…!?」
焦り出すクリフに怒りをぶつける。
黒い男「助ける…? オマエが…? オレを…? 助けなんざ求めてねぇ!!」
輝く右掌をクリフに向けると、力を込めて握りはじめる。
クリフ「!? ぐぁっ…!」
途轍もない力で身体を掴まれ、中心に向かって捻られている感覚に、苦痛の声を漏らす。
黒い男「…オレを救う…? 何からだ…? 攻撃してきてんじゃねぇか…? 敵対した手前を…許すかよ…! 殺すぞ!」
敵対された、裏切られた、孤独―…感じたその思いが、怒りを更に増幅させる。
黒い男「オマエみたいなガキは…消えてしまえ!!」
そう言って、右手の"龍の顎"に"力"を込めた時だった。
??「止めろ!」
??「させない!」
二つの声と共に、投げ込まれた一枚の咒符から放たれた、度を超えた輝きが視界を奪う。
黒い男「ッ…!」
反射的に顔を右手で覆う。
一瞬で輝きが収まり、全身の痺れと共に足下に刺さっていた古びた剣も無くなっていた。
黒い男「…お前等か…」
顔を上げた先には、見知った顔―眼鏡の優男=…? 名前は何だったか…? !トシ…そう、トシだ… と、見知った巫女服で黒髪の女の方は…? 誰だったか…?
―名前が―…思い出せない―
…何故なのか。
心の中で焦りを感じる。
三人は距離を取り、トシは膝を付いたクリフへ肩を貸している。
?ズ「大丈夫?!」
トシ「一人で無茶をするな…!」
クリフ「…済みません…わかっていたのに…」
…! あぁ…"スズ"だ… ?何故忘れていたんだろう…?
そう思考している間も、三人は会話を続ける。
クリフ「大分…進行しています…!」
トシ「…そうだな 俺達でアイツを救うんだ…!」
スズ「…あの紅い眼…」
スズの最後の言葉には、哀しみと敵意が籠もっていた様だった。
その三人の様相を視て、過去での出来事と言葉が頭を過る―
―そんなこともできないの?―
―異常だぞ?頭がおかしくなったのか―
―おまえは仲間にいれられねえよ―
―おまえは父に逆らった―
―お前は失敗した―
…仲間はずれ―
その記憶が―怒りを呼び覚ます。
黒い男「オマエ達…! オレに敵対しようっていうのか…?! 半端なオマエ達如きが…!」
その怒りに、"黒い"強大な"敵意を孕んだ氣"が周囲へと噴き出す。
それと共に力を解放し、魔人化した。
全身が黒く鋭利で刺々しい鱗に覆われ、眼は紅く輝き、その禍々しい見た目に、悪魔と見紛う程だった。
解放された力は周囲へ強力な圧を放ち、三人は気圧される。
スズ「!ッ…そこまで…!」
クリフ「あのままだと…手遅れになります!」
トシ「わかってる! だから!」
トシはそう言うと、左手に持っていた袋から古めかしい意匠の刀を取り出した。
対峙する二人の親友達―
しかし、二人の言葉は―…




