炎と氷とアンジェリカ
アンジェリカには2人の妹がいた。
そのうち1人は生まれつき体が弱く、ほぼ寝たきりの状態だ。
アンジェリカの両親はこの国でも上位の魔法使いで、父は炎を、母は氷を扱うことを得意としていた英雄であった。ある日王都から依頼が入り「これが終わればずっと一緒に暮らせる」と言い残しパタリと帰らなくなった。両親が返らなくなると住んでいた家も追い出され路頭に迷うこととなった。
アンジェリカはそれ以降2人の親代わりとして妹たちを養い、両親に教わっていた魔法にも磨きをかけ、学び鍛錬を行った。
そうして暮らす中、妹の病気が治ることを知った。だだし、それには莫大な費用がかかることも知った。
アンジェリカは自ずとそのために報酬のいい用心棒稼業を請け負うこととなった。
「貴様!許さん!」
山賊のリーダーらしき男は怒りに震え全身に力を溜め出した。ゴゴゴゴ!地が揺れだし、山賊に力が宿りだした。
アンジェリカは幾たびの戦いで腕を上げいつからか戦いをも楽しむようになっていた。
自分は英雄の娘であることを誇りに思い、その血から能力があることを悟っていた。
山賊のリーダーらしき男の体内に地表からエネルギーがみなぎる。砕けた腕も再生する。地面に近いほうから筋肉が膨張していく。ふくろはぎが張り、太ももが張り、尻が張り、胸が張り、首、腕と続いた。何やら土臭いオーラも発しており、威圧感が増した。
「大地の魔族と契約を交わしたか」
アンジェリカは言った。
「ヒヒヒ、大地の魔は言った。契約すれば何もかも俺の物と。この力、この力があれば!」
「貴様!何をしているのかわかっているのか!」
アンジェリカがそういうや否やその男は拳を叩きつけてきた。
アンジェリカはそれを交わし、立ち回る。
ユイナも距離を取り様子をうかがう。
大地が割れ、その破片が周囲にはねる。
アンジェリカはすかさず広範囲にシールドを張り、補えない破片はユイナが砕く。
お互い目を合わせるとニヤリと尊敬の意を表す。
男の第2破が始まる。どれも強力な攻撃ばかりである。
だがアンジェリカは「単調な・・・」とつぶやく。
「魔族と契約するも脳をも食われたか!」
アンジェリカの言い放つように男の攻撃は獣のように単調で協力ではあるが直線的、避けるのは容易であり、反撃することも容易であった。
アンジェリカは氷魔法で男が腕を振り下ろした先に高度の氷ブロックを置いた。
「キレイ」
そのブロックは透き通り輝いておりユイナも見とれるほどであった。
男はそのブロックに気付いたが勢い止まらずそれを叩くとその高度に負けその腕は脆く砕け散った。
「魔族に力を借りても元は人間、己の力に体が付いてこなかったか」
男は叫びなお攻撃を行うが、アンジェリカは氷魔法で大地と男の足を固めたと思うと間合いを取った。
アンジェリカは左手の指2本を立て集中する。途端男の全身が凍り付き動きが止まる。
アンジェリカは小さな炎の塊を手のひらから出すと男に軽く揺らめくように差し出した。
その炎はゆっくりと男の方に向かい、やがて男の中に吸収されると男の氷ははじけた。
決着であった。
それを見るや山賊は村の外へと逃げて行った。
アンジェリカはユイナに近づき
「帰るか」
ユイナは微笑んで
「はい!」と答えた。
「さて、帰るか」
近くの古い家の陰で俺は右膝を摩りながらつぶやいた。




