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妹とお茶と魔法使い

「お兄ちゃん起きて!」

ユイナの馬乗りにて眼を覚ます。

朝食のスープがほのかに香り、今日もいつもの朝が来たと感じさせてくれる。ちょうど小腹がすいたタイミング、俺は右膝を摩りながら呟く。

「いい朝だ」


リビングへの扉を開けると、そこにはいつもの様に待ちくたびれたユイナの姿があった。

「もー、おそーい!」

日常の会話だ。この言葉を聞くとユイナには悪いがいつもホッとする。

そしていつも通り、向かい合っては座らない。

いつも通り、テレビをつけ、朝食を楽しむ。


コンコン。玄関の扉が音を出す。

「はーい」

とユイナが扉を開けると女が1人立っていた。

「あ…、おはようございます。この前は大変お世話になりました」

どうやらユイナの知り合いらしい。

「いや、こちらこそ礼を言わねばならん。村に雇われているのにあのザマだ。情けない。」

「あなたが居なければ私も今頃こんなに元気に動きまわれてません。ありがとうございました。」

ユイナは深々と頭をさげる。

女は照れた様子でやめてくれとゆうような仕草をする。

「実は今日はだな、少し話をしたくて出向いてきた」

「ほんとですか!?じゃあどうぞ中へ」

ユイナは楽しそうに家の中へと女を案内する。

もともと妹は人付き合いが好きな方で、すぐ人を招き入れてはお茶を振舞う。

俺はそんな妹の楽しそうな姿を見るのが好きなので何も言わずただそれを見守る。

「ユイナ、お客か。ゆっくり話すといい」

と、俺は言うとリビングから離れようとした。

「まて、お前とも話したい」

女が言う。

誰だ、この女、ユイナの知り合いにしては珍しく無粋だ。

「私の名はアンジェリカ、この村で雇われている勇者の仲間だ。」

思いだした、ユイナを治療してくれた魔法使いだ。

「これは先日ユイナが大変お世話になりました。では。」

と俺はその場から離れようとした。

「おい!」

アンジェリカは引き止める。

「お前とも話しがしたいと言ったではないか。」

「またにしてくれるか。」

と俺は寝室へ入り、扉を閉め、ベッドに寝ころぶ。

やれやれ、面倒くさそうな女が来たもんだ…。

そう考えると、目を閉じた。


「変わったやつだ」

「お兄ちゃんの事?」

ユイナはお茶を用意しながら話す。

「ああ、つかみどころのない…」

「よく言われます」

.....。

「…お前、強いな」

「そうですか?コテンパンにやられちゃいました」

「いや、強い…。どこの門下だ?」

「門下?」

「ああ、師は誰だ?」

「先生はいません。独学です。」

「なんと、あの動き、お前1人で身につけたと言うのか!」

「ユイナです。」

「失礼した。ユイナ殿は1人で身につけたのか!」

「ユイナでいいです。」

「ははは、ではユイナと呼ばせてもらう。ユイナも私の事はアンジェリカと呼んでくれ。」

「はい、アンジェリカさん。よろしくお願いします。」

そう言うとユイナは深々と頭をさげた。

「話は変わるがあのゴーレムはどうなったと思う?」

「お兄ちゃんがやっつけてくれたんでしょ」

「やっつけた…そんなレベルじゃない!粉々だ、高質化魔法上級クラスがかかったゴーレムをだ!どうやればああなる!」

「…お兄ちゃん、日頃あんなだけど凄く優しいの。たくさん助けてくれる…はい、お茶どうぞ。ハーブティ、気分をリフレッシュしてくれるらしいです。」

アンジェリカはひと口すする。

「美味いな、確かに気が紛れる」

「でしょ、お茶って凄いんです。その時その時で合うものが必ずあるんです。それを上手く入れる私って凄い!」

ユイナは軽く微笑む。

「なにか悩みがあれば聞きますよ、聞いてもらうだけでも心が軽くなるものですから」

「そうか…」

「アンジェリカさんはどうして勇者の仲間になってるんですか?」

「金だ。」

「お金ですか…持ってない…ごめんなさい。」

「いや、貰おうなんて思っていない。勇者と組めば良い金にありつける」

「生きていく上では必要ですもんね。うちなんか見たまま…はい、貧乏です。」

そう言うとユイナはまた微笑む。

「いや何、少し事情があって、人より多めに金がいる」

「訳ありですね。」

「ああ」

「良かったら話してください」

「どうなる事でもない」

「もー、聞くだけですよ。どうする事も出来ません!、それに人に話さないと先にも進めません!」

「...私には弟と妹がいてな、妹の方が病弱で治療に金がかかる。それだけだ。」

「それだけって大変じゃないですか!私に何か力になれる事はないですか」

「気持ちは有難いがない」

「そんな...」

ユイナは急に立ち上がり部屋の何ヶ所かを急いで周り何かを集めだした。それをアンジェリカの前にさしだす。

「とりあえずこれ」

家にある全財産だった。

「もって行ってください、少しは足しにしてください」

「有難いが受け取れない」

「なんで」

「急に訪ねたと言うのに…」

「いいんです!」

「気持ちだけ受け取っておく」

「いいんです!持って帰ってください!」

「それに全く足しにすらならん」

ユイナは急に恥ずかしそうに顔を赤らめる。

「足りませんか...」

「ああ、全く」

その瞬間アンジェリカは大きく笑い出す。

「アンジェリカさん!?」

「面白い娘だ!、急に来たやつにここまでするか、私が嘘をついてるかも知れないんだぞ。」

「アンジェリカさんは嘘をつきません!」

「何故分かる?」

「目を見れば分かります」

ユイナはアンジェリカの目をまっすぐに見つめる。

「はっはっはっ、1番初めに騙される奴のセリフだ」

「そんな」

ユイナは頬を膨らます。

「気持ちだけしっかりもらっておく」

アンジェリカはそう言うと楽しそうにお茶をすする。

その時、遠くで村人達の悲鳴が聞こえた。

「何かきたか、行ってくる」

「私も行きます!」

そう言うや否や2人は悲鳴のする方へ駆け出した。

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