妹とゴブリンと
いつも通りテレビをつけると、ニュースでちまたを賑わしているゴブリンの情報がやっていた。
なんでもあちらこちらで暴れまわっていてどうにも手がつけられないらしい。
襲い方は群になって1集落あっと言う間に滅ぼし、襲われた村は何1つ残らない。もちろん人も。
こんな時の為に各村は勇者を雇い、防衛につとめる。
エルビス村も例外ではない。
周りからの外敵の侵入を防ぐため、勇者様御一行を雇っている。おかげさまで皆幸せに暮らせている。
しかしそのゴブリンの群がこのエルビス村近くまで迫っているとゆう。近隣の村は既におとされた。
次はここかもしれないと誰もが噂をし、不安な毎日を送っていた。
その日俺は目を覚ました。朝である。いつもと違う朝、何が違う…外も騒がしい。何かが違う…
「ユイナ…」
そうだ、いつも起こしてくれるユイナの姿がない。
何故?…俺は右膝を摩りながらゆっくり立ち上がりリビングへ向かう、そこには朝食も作りかけで慌てて出かけた妹の姿が想像できた。
「なんなんだろ…」
その時玄関のドアが激しく開いた!
「ユイナちゃんが大変だ!」
「頭、明日あの村をやるんで?」
1体のゴブリンが全身を黒いローブで覆う魔導師に話しかけた。
「そうだ!別に戦略的には意味は無いが、目に入った、とりあえず潰しておこう。」
「それだけのために。頭も人が悪い」
「では、これより勝利の宴だ!じゅうぶん英気を養え」
「おー!」
その数100、近頃村とゆう村を殲滅しているのがこの群だ。ゴブリンは強い!そして勇者が居てもこの数にはさすがに対応出来ない。武装した村人ももちろんである。
魔導師は言った。明日が楽しみだと…
朝からユイナは胸騒ぎがしていた。原因はわからない。朝食を作りながら時折窓から外を見る。すると煙が上がるのが見えた。
「なに?あれ」
ユイナは直ぐに家を飛び出し、煙の方へ駆け出した。
近づくにつれて、村人達の悲鳴が大きくなる。
朝の静かなひと時に、突然ゴブリンが村の外壁を破り攻め入ってくる。急な事だがさすがに勇者様御一行の対応は早い。直ちに防衛に入った。仲間と協力しあい確実にゴブリンを倒していく。
「凄まじい数、だがこれなら」
その時あの魔導師が現れ言った。
「今、勝てると思ったか?人間これだから面白い。そう、その希望ある顔が悲痛に変わる瞬間が好きなのだ!ファッファッファ」
そう言い張るや否や魔導師はゴブリン達に呪文をかける。上位魔法だ。体にはシールド。パワー、スタミナ、スピード、闘争心が上がる。
「なに!…しかし!」
勇者は全身全霊をかけた一撃をゴブリンに与える。
キーン!
脆くも勇者の剣が折れる。そこに1体のゴブリンが襲いかかり勇者は倒れた。
「村人を…」
そこから仲間達が次々に倒され残るは防御魔法の得意な女が村人達を守るシールドをはるだけ。
「もう持たない…」
諦めかけたその時、
「待ちなさい!」
現れたのはユイナだった。
女は
「逃げなさい!あなたに何ができるの!」
その言葉に耳を貸さずゴブリン達に立ち向かう。
「ユイナちゃん!やめるんだ!」
村人達の声もする。
ユイナは腰からトンファーを出し、すかさずゴブリンに一撃を加えた。
バキ…バキバキ…グシャッ!
シールドを破りゴブリンにヒット!
「なんだこの女…」
魔導師は慌てる。
そのあともユイナは止まらない。
ある日家に戻ってみると部屋は血みどろで無残にも斬り裂かれた両親の姿があった。一目で何が起きたか理解した。さっきまで笑っていた父が、さっきまで笑っていた母が…
そこに近づくにつれ、意識が狂っていく気がした。しかし歩みはとまらない。
自分をコントロールする事が出来なくなる。しかし歩みはとまらない。
ふと足元で微かだが怯えた声がした。我に返りその床板をめくりあげた。
「ユイナ、無事だったか」
妹をすくいあげ抱きしめた。その体は血まみれ、そう、父母の斬り裂かれる姿を板の隙間から見上げ、滴り落ちる鮮血を、体に受けていた。
妹は話さない。小刻みに震えながら。
それからとゆうもの妹は剣術、棒術、魔術、ありとあらゆる技を体得していった。1つ覚えるごとにもとの明るい性格へと戻っていった。
しかしそれは…
あれから何体ゴブリンを倒したのだろう。残りはユイナを囲っているやつらだけ。さすがに息も上がり体は傷つき、スタミナも底を尽きかけていた。
ふと目線をずらすと小屋がある、その柱の影に隠れて小さな少年が震えながら座っていた。
魔導師はそれを見逃さなかった。
「ダークアロー!」
3つの黒い光が矢の形に変わり少年めがけて飛んでいく!それをいち早く察知したユイナは少年を抱え飛びよける。
「だめじゃない、こんなとこにいちゃぁ…」
ユイナの右腿には黒い矢がささっていた。
「早く逃げるの」
「でもおねえちゃん」
少年は動こうとしない。
「ダークアロー」
ユイナは少年を無理やり突き飛ばし、自分から出来るだけ離す。
「ウッ!…」
ユイナの右腕に黒い矢がまた一本。
「生きるの」
少年は泣きながら駆け出した。
「まあ良い、どの道死ぬ運命だ」
魔導師は冷たく言い切る。
ユイナの周りには残りのゴブリンが取り囲む。
勇者様御一行の女と村人達もユイナの死を覚悟した。そしてそのあとは自分達であるとゆうことも…
「誰か、誰か助けてください!」
その場の皆が一筋の希望にすがり、あるはずのない奇跡を願った。
ユイナは数体のゴブリンに押さえつけられ武器である棍棒で滅多打ちにされ始めた。
かろうじて防御魔法でガードはしているが効力は薄くダメージは防ぎきれない。
そこへゴブリンのクリティカルヒット!
ユイナは数メートル先に飛ばされた。
「私が、私が守らなくちゃ…」
薄れる意識を何とか保ちながらもう一度立ち上がる。
「ユイナちゃん、もういい!もういいんだ!」
皆が口を揃えて叫ぶ。
「私が…私が…」
ユイナは一歩踏み出すとその足から崩れ落ちた。
フワリ
ユイナは地面に倒れてはいなかった。その崩れゆく体を誰かに優しく支えられ、
薄れゆく意識の中で、心地の良いよく知る人の匂いを嗅いだ。
「お兄ちゃん…」。
「よく頑張った、あとは任せておけ。ただしお兄ちゃんは弱いぞ」
「その弱いぞいらなーい」
ユイナは安堵の微笑みと同時に瞳を閉じた。
「なんだぁ〜!」
ゴブリンは楽しみを取られた怒りか一斉に襲いかかってきた。その瞬間、ブッシャー!全てのゴブリンの首が弾け飛び、胴体が地面に転がる。
「!!!」
見ていた誰もが息をのむ。
「なにをした?上位魔法をかけたゴブリン達をいともたやすく葬り去るとは…」
魔導師は焦りを隠せない。
「いや何、悪い事をしたからまとめて引っ叩いた。ただそれだけ」
「引っ叩いただと…ならば…」
魔道士は呪文を唱える。すると地面に異世界とつながる空間が現れる。そこより一体の魔物が現れた。
ドシャーン!
ビッグゴーレム。体は山の如く大きく、皮膚は頑丈な岩で出来ている。
「と、おまけにこの魔法」
魔導師はゴブリンにかけたような上位魔法を唱えた。
ゴーレムは 体にシールド。そしてパワー、スタミナ、スピード、闘争心が上がった。
「もひとつほいっ!」
魔導師が唱えるとさっきまでは岩のようなゴーレムの肌がダイヤモンドへと変化した。
すぐさまゴーレムは暴れまわる。
「ゴァー!」
一瞬だった。地面がヒビ割れ山が1つ消えた。
村人が唖然とするなか勇者様御一行の女は冷静だった。
「やばい!が、この隙に!」
すぐさま行動に取り掛かる。村人の避難、そしてユイナを抱えると。
「あんたは?」
「んー、もう少し居るかな」
女は呆れたやつだと思い、そこから立ち去った。
俺は右膝を摩りながら
「さてと、たまには動くかな…」
と言うや否やゴーレムの右パンチが俺の頭に!
「ヒーッヒッヒ、一撃だったな、あっけない」
魔導師が言ったその瞬間ゴーレムの右脇腹が吹き飛んだ。
「なんだと!」
ゴーレムはそのダイヤモンドに変化した肌を抱えながら苦しむ。だがすぐさまそれを魔導師が回復する。
「やれやれ、しっかりした回復魔法もってるな、仕方ない、ユイナも心配だし早めに決めるか」
魔導師は更に呪文を唱え、ありとあらゆる魔法でゴーレムを強くした。
「全部かけた、おまえには倒せない!行けっ!ゴーレム!全力でそいつを消し去るのだ!」
ウォー!とゆう雄叫びとともに両手を組み遙か上空へ振りかぶり、そこから地表へ叩き落とす。まさに大地ごと消し去る勢いだ。
「はぁ〜まいったな」
と俺は右膝を摩った後、右脚全体に力を入れ大地を蹴る。瞬間膝が赤く輝き足下の大地が砕ける。その反動を利用しゴーレムのスネから腰、腰から頭の先、更には叩き落とそうとしているその拳までまるで一筆書きを楽しむかのように掌打をくらわす。
ゴーレムは粉々に砕け散った。
「イテテテテ、また当面この痛みとお付き合いか」
俺は右膝を摩りながらそう呟いた。
「バカな、私の魔力が…」
魔導師は後退り、この場から立去る事を決意した。
「逃がさねえよ」
と俺はまたしても右脚を使い、奴の背後にすぐさま詰め寄る。
「ヒッ!」
と魔導師が言うや否や俺は奴の胴体に右から左へと掌打をあびせる。
「ん???手応えがない…」
ハラリとローブが飛ばされ、魔導師の素顔があらわになる。
「……」
そこには見た事もない変な生物が宙を飛んでいた。大きさは魔導師の顔の部分ほどの小さなやつ。
なるほど、ローブをかぶり少しでもそれらしく見せていたわけか。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさーい!」
急にその変な生物が泣きすがってきた。
「間がさしたんです…すみません」
「お前、喋り方全然変わってんだけど」
俺はつっこむ。
「雰囲気出してました」
変な生物にはもう、戦闘意欲は無いらしい。俺もこれ以上どうこうするつもりはない。
ユイナの所にでも行くか。右膝を摩った後に歩き出す。
離れた所に村人達がが居た。その片隅に勇者様御一行の女に治癒魔法をかけてもらっているユイナの姿があった。見ると意識は戻り、少しは楽になった様子がうかがえる。
「お兄ちゃん、終わったの?」
「おぅ、たまたまうまくいった。もう大丈夫だ。」
ユイナは微笑む。
「女、ありがとう、ユイナが世話になった」
「いや、こちらこそだ。で、あのゴーレムは?」
「たまたまうまくいった」
勇者様御一行の女は信じられないとゆう顔つきで首をかしげた。
俺はユイナをおぶった。右脚に重みが加わる。
「お兄ちゃん…膝…」
「たまには…な」
「……うん」
「帰るか」
「うん」
俺は家に向けて歩き出す。
あったか〜い…ユイナは心の中で呟いた。




