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花咲く少女は銃を握る  作者: あるみす
3/3

結束

「わたし達と手を組まない?」


  メアに突然突拍子もない提案を持ちかけられた彼女達は揃って目を丸くしている。

  特にユキの頭の中は湧いて出てくる疑問に埋め尽くされていった。


「ど、どういう事なの?」


  ユキはその疑問に答えを求めようと詳しい説明を求める。

  戸惑いを隠せないユキの問いに答えたのはメアでは無くマヤの治療を終えたノノだった。


「後は私が説明するね。まず、同盟を提案したのは『四人だけじゃ絶対に生き残る事は出来ない』からなの」


  ノノの言葉を全く呑み込めない四人は言葉が喉につっかえる。


「……根拠は?そんなに断言するんだから理由の一つくらいちゃんとあるんでしょうね!?」


  思わず声を荒らげるユキをセーラもミルクも渋い顔で見守っている。


「根拠は……これよ」


  そう言ってユキの目の前に液晶デバイスを差し出したミカはこれまでに撃破されたチームとそれを屠ったチームの当時の位置が表示されたマップを提示した。


「こ、これって……う、うそでしょ?」


  ユキに続いてセーラとミルクも言葉を失っている。


「この立て続けに撃破された四チームの位置……」


  セーラも気づいたらしくメア達の顔を見回した。


「なるほどね、あなた達が手を組みたいって言うのはこの為なのね」


  少し頭を抱えるユキは捻り出すように呟いた。

 

「そう。この撃破された四チームに共通するのは皆が皆、同じグループに倒されてる事」


  ノノがチームと言わずにグループと表現したのにも理由があった。

  そして、その異常事態にもユキ達は薄々感づき出した。


「このチームのリーダー……カラミティ・クリスチアーノだって…!?」


  問題の連続撃破チームのリーダーを確認したセーラは珍しく声を張り上げた。


「せ、セーラちゃん!?どうしたの、急に」


  世界情勢においてはユキより詳しいセーラがその名前の恐ろしさを説明する。


「クリスチアーノって家名は世界でも名の知れた銃器メーカーの名前で、加えるとそこの社長の娘に『厄災の申し子』とまで呼ばれた人ががいるらしいんだ」


「それがこのカラミティ・クリスチアーノだって言うの?」


「……恐らく」


  セーラがユキの問いに頷いて返すと改めてノノに向き直った。

  セーラ達に現状の恐ろしさが伝わったと分かったノノは補足を付け加える。


「加えるなら、そのクリスチアーノが陣営を組み上げてるの」


  そう言ってノノはデバイスの画面を操作して縮尺を小さくするとクリスチアーノのチーム以外に三チームの表記が写るようにする。


「まずこのチームを撃破したチームとして三チームが表示されてるの。こんな表示になってるのは恐らく」


「四人のメンバーがそれぞれ違うチームに倒されたってこと?」


  ノノの説明に続いて言葉を続けたユキは頷くノノの顔を見て大きく息を吐いた。

  そして、暫くした後にユキは重々しい口を震わせながら開いた。


「ごめんね……ちょっと、わたし達だけで話させて…それに…まだ、マヤちゃんも寝てるし」


「分かった。いい返事を期待してるね。…もし、組んでくれるなら明日のお昼にまたここに来て」


  そう言ってユキ達が噴水跡を後にしたのを見送ったメア達四人はその場所にほど近い所に建っていたホテルへと向かう。


「ふぅ、全く…無茶な賭けね」


  その道中、ミカが肩を落としながら張り詰めていた緊張をやっと解いたようだった。


「………でも、上手く行けばこれでクリスチアーノ陣営に対抗出来る」


「それでもまだ相手との差は大きいじゃない。前途は多難ね…」


  先程の狙撃で神経をすり減らしていたルエも額に脂汗を滲ませながら呟くように答える。

  そんなフラフラしているルエの体を抱き寄せ、自分の体にもたれかからせたミカは優しく微笑む。


「そういえば!今わたし達何処に向かってるの?」


「あ、あんたねぇ……」


  メアが急に間の抜けた質問を飛ばしてきた為にミカは呆れたように半目でメアを見つめる。


「そんな目で睨まないでよ〜。さっきまで緊張してたせいで忘れちゃっただけなのー」


「いつもの調子と全く同じだったじゃない……ったく、今向かってるのはホテルよ。今日野宿でもする気だったの?」

 

「あぁ!ホテル!」


  ミカの返しに目をキラキラと輝かせるメア。

  今回の試験は優勝チームが決定するまで無制限に行われる為、当然夜を何度も戦場で越す事になる。

  その時に野宿をするのか、はたまた廃屋に身を潜めるのか。その辺の行動選択も評価の一端を兼ねているのだ。


「まぁ、ホテルと言っても人は居ないから寝る場所があるってだけだからね」


「ベッドで寝れるだけで十分贅沢だよ〜」


  メアは嬉しそうな笑顔を振りまくので、そんな彼女につられて三人も自然と口が綻ぶ。


「あんたはいつも元気ね」


  ミカはすこし呆れ混じりの笑顔でメアの頬をつついた。その指に猫のように擦り寄るメアはふわふわとした声で答える。


「わたしは硬い雰囲気が嫌いなの〜笑ってたら絶対いい事あるんだから」


「あんたは相変わらず底無しの笑顔を振りまくんだから…」


「でも、そこがメアちゃんのいい所だよね〜」


  ノノがメアのもう片方の頬をつつきながらメアに釣られて笑顔で答える。


「……はやく行こうよ。眠い……」


  ルエが眠そうに目を擦っているのを見た三人はクスクスと笑いながらホテルへと急ぐのだった。





「ん……うん?」


  マヤが目を覚ますとそこには見慣れない天井とすっかり日の落ちた空が窓の外に広がっているのが目に入ってきた。


「マヤちゃん!目、覚めた?」


「ゆ、ユキ?…あっ、私さっき撃ち負けた…はずじゃ…」


  目が覚めたことに気づいたユキは飛びつくようにマヤに駆け寄り、ほっとしたようにゆっくりと息をする。


「マヤが寝てる間に色々あったんだ」


  口角をふっと緩ませたセーラは優しい口調でマヤが寝てる間に起こった取り引きの内容を説明した。

 

「手を…組むのか。……うん、なるほどね。皆はどう思う?」


  マヤは自分が撃たれ、脱落しかけたのにも関わらずに割と落ち着いていて冷静にメア達の提案を理解していた。


「うん…正直な所私達が生き残るには手を組むのが最善だと思う」


  ユキの言葉にセーラも続く。


「元々この試験は四人で勝ち残るのは不可能に近いからな。戦場で手を組むのも必須な事だろう」


「でもよ、それならどうやって一位のチームを決めるんだ?残れるのは一チームだけなんだろ?」


  ミルクが疑問を問うとユキが液晶デバイスを起動し、試験内容が書かれたページを開きミルクに見えるように説明を始めた。


「最終チームは一つだけなんだけど、チームの人数は規定されてないんだよ。」


「ん?……だから?」


  察しの悪いミルクは眉を八の字に曲げて難しい顔をしている。


「だから、最終チームは合同のチームでも問題は無いの。その証拠に昔の試験でも優勝チームの人数は10人を超えてる場合が多いんだよ」


  ユキの説明を聞いたミルクはなるほどと言いたげにこくこくと頷いた。


「じゃあ、皆の意見はアイツらを信用するってことでいいんだな?」

 

  マヤが聞くと三人は顔を見合わせながらこくりと頷いた。


「多分、あの四人は信用しても大丈夫だと私の勘がそう言ってる」

 

  ユキがその言葉を口にした瞬間マヤの口角はフッと軽く緩んだ。そして、ユキの体をぐっと引き寄せると子犬を可愛がる様に優しく撫でる。


「ユキの勘なら信用できるな!ミルクもセーラもいいよな?」


「ちょ、ちょっとマヤちゃん!やめてよ…もう子供じゃないんだよ!?」


  頬を紅く染めるユキを撫でることを止めないマヤは笑顔でメア達との同盟を決意したのだった。



  次の日の正午。

  しっかりと武装を施したメア達四人は噴水の前で同盟相手が現れるのを今か今かと待っていた。


「本当に来るのかな…」


「何不安そうな顔してるのよ。あの子達なら来ると思うわ。」


  いつになく少し不安そうに呟くメアの背中をミカは軽く元気づけるようにポンポンと手を当てるとそれに対してメアはにへへと顔を緩めて答えた。


「ミカがいつになく優しい〜、はっ!まさか何か隠してるとか!?」


  素で驚いた顔をするメアの頭をペシっとはたいたミカは少しだけ頬を染めつつ、短くため息をつくのだった。


「ミカちゃんは何時でも優しいから…ね?」


「いいって、そんな慰めてくれなくたって気にしてないから。もう何年もの付き合いなんだし」


「……ミカは苦労人。ミカが面倒見いい性格なのが悪い」


「褒めるのかなじってるのか分からない言い方やめてよね…」


  そんなくだらない会話を続けているとそんな四人を少し離れた所からユキ達が様子を伺っていた。




「あの子達……なんかほわほわしてない?」


  マヤが背負ってるリュックと狙撃銃をずり落としそうになりかけながら呟いた。それに対して答えるセーラの顔も少し諦めの色が入っている。


「昨日もずっとあんな感じだったから…」


「でもあんな奴らの方が信用はしやすいかな。裏切られるのは勘弁だしよ」


「ミルクちゃん……すぐにセールスとかに食いつくもんね」


「うるせっ!仕方ないだろ、安いんだから…」


  ミルクがユキからふいっと顔を背けるのをクスクスと口元を押さえて笑っていたユキは両手でそれぞれマヤとセーラの服の裾をキュッと握ると静かな声で声を掛け、メア達が待っている場所へと足を踏み出すのだった。



  「よう!」とでも言いたげに片手を挙げて合図を送りながら近づいてきたマヤを視認したメア達は嬉しそうに頬を緩ませた。


「来てくれたんですね!」


  ノノが感極まって泣きそうになりながら四人に近づき、ユキの手をぎゅっと包み込むように握りしめた。


「ちょ、ちょっと!私達はあなた達を完全に信じたわけじゃないんですからね!?」


「あはは〜!ミカみたいな事言ってる〜」


「な、ななな何を言ってるのよメア!」


  手を握られたユキがまっすぐ目を見つめてくるノノから目線を逸らし、照れくさそうに言い放った言葉をメアがさらに茶化す。


「とにかくだ一先ず自己紹介といかないか?」


  ミルクがそう提案するとノノもユキの手を離し、それぞれ自己紹介を始める。


「じゃあ最初はわたしね!わたしはメア!動くのが好きです!」

 

  と言うように各々の自己紹介を済ませると八人は近くにあった元レストランに入り、身を隠しながら今後の作戦について練始めた。

  全員が囲める大きさのテーブルにノノが大きな紙を広げてみせる。


「紙の地図なんて何処にあったの?」


  ユキが尋ねるのも無理もなく、支給されている共通物資の中には大雑把な位置と生存者確認の出来るデバイスはあれど街の正確な建物の位置の記された地図は配布されていないのだ。


「これなら昨日ホテルに泊まった時にメアちゃんが偶然見つけてくれたんだよ」


  そう説明する横でメアは嬉しそうに口角を上げながら片手でピースを作ってみせる。そして、ノノは昨晩黙々と状況を整理した見解を他の七人に説明を始めた。


「まず私達が今いる所はここ、一番大きい旧中央都市のそばに隣接してるラウムという小さな村ね。参加してるチーム数を考えるとこの村に残ってるチームは多分少ないかな」


「昨日撃ち合ってた間もどこのチームも介入してこなかったからな。その見解は間違ってないと思う」


  メアの言葉にノノも頷き、さらに言葉をつづける。


「とは言え隠れてたって事も充分有り得るから警戒は常にしておいてください。それから今後の進路なんですけど、とりあえず中央都市に入ってしまった方がいいと思います」


「一応理由を聞かせてもらる?私としてはこの村を寧ろ要塞として立てこもった方が強いと思うんだけど」


  ユキの提案をしっかりと聞きつつノノは自分の考えの説明を行う。

  この試験の最も大事なルールをノノは試験開始前に既に見抜いていた。


「理由としては二つあって、まず順位が一位でも内容次第では順位が変動する事」


  全員が首を傾げるのでノノは言葉を続ける。


「実際、一昨年の試験で優勝したのは二位のチームなの。」


「アリソン・エルマイラのチームか……」


  どこか思い当たる所があるのか昨年優勝チームのリーダーであるアリソンの名前を呟いたセーラは難しい顔をしている。


「セーラちゃん、知ってるの?」


「あ……いや、聞いたことがあっただけだ。殺戮に近い戦闘スタイルで四人で暴れ回ったんだが、最後は長距離の狙撃で敗退したらしい。」


「なるほど…それで、2位なのに優勝って訳なのね」


「え?ミカ、分かったの?どーゆーことなのか説明して?」


  メアが眉をハの字に曲げながらミカの服の裾を掴むとルエがさらっと理由を説明する。


「……よく考えて。アリソンのチームの撃破ポイントが一位獲得時のポイントを圧倒的に上回ってた。だから最終順位が逆転した。……これだけの事」


  ルエの静かな口調の説明を聞いたメアは「なるほどっ!」と大袈裟に納得して見せた。


「場所を移動する理由は分かったが勝算はあるのか?この状況だと大都市で拠点を築いてるチームの方が有利だと思うんだが」


「それも考えてあります。まずは、大都市イデアに入ったと同時にそこに陣取ってるチームと闘うの」


「敵の居場所なんて分かるものなのか?」


 その質問にはふるふるとノノは首を振る。


「だけど、恐らく居る可能性が高い場所があるの。」


  そう言ってノノは液晶デバイスに表示している地図を拡大し、都市イデアの外れにある小さな群落をみんなに見せる。


「イデアはとっても大きい都市だから要所要所に偵察を兼ねた塔が建ってるの。今生き残ってるチームが安全を確保しつつ好機を伺っているならこの塔周辺に陣取ってる可能性が高いと思うの」


  マヤが問う物にもノノは当然の様に自身が練った作戦を説明した。

  そして、説明し終わったノノは全員の顔を見合わせて「どうかな?」と不安げな表情を見せる。


「なるほどな。私達は手を組んで正解だったって事だな」


  少し笑みを浮かべながら口を開いたマヤの言葉にノノは軽く驚く。


「そうだね。敵にまわすと厄介だね、この人達は」


  マヤに続きユキもノノの作戦に驚いた様子だ。他のセーラとミルクも同じような感じで自分達の選択が間違っていなかった事に安心している様だった。


「当たり前でしょ?うちのノノの記憶能力と演算能力はピカイチなんだから」


「み、ミカちゃん!?そんな事無いっていつもいってるじゃん!」


  顔を紅くしたノノが慌ててミカの口を塞ごうとするがミカは笑ってそれをいなすのだった。




  少しして、翌日に行動を開始する事を決めた八人は早めに食事を取っていた。


「そう言えばあなた達が使ってた爆弾って何処で手に入れたの?」


  昨日の戦闘を思い出しながらミカがユキに質問を投げかける。

  するとユキはフォークを口に運ぶのを止めて質問に答える。


「あれは私が作ったんだよ?丁度鍛冶屋さんの跡があったからちょちょいとね」


「爆弾なんて作れるの!?ユキって凄いんだね!!」


  大袈裟に驚くメアはズイっと体をテーブルに乗り出して目をキラキラさせている。


「そんな大層な事じゃないって…実家が武器を扱ってたから私も作れるだけ」


「私達の武器は全てユキが整備してくれてるからな」


  仲間を褒めるマヤの言葉には嬉しさも混じっているようだった。

 

「武器関連の知識がある人が居るのは大きいよ〜。これからよろしくねユキちゃん」


「あなた、急に丸くなったわね…」


  ノノの口調がメア達に対する様にふわふわとした物に変わった事にユキは嬉しさ半分呆れ半分といった所だ。


「とりあえず、一緒に戦う以上全員の武器の面倒は私が見てあげるよ。という訳で早速整備に入るから隣の部屋借りるわね」


  そう言って全員の武器を集めて、半分を抱えあげるとそそくさと隣の部屋へと入って言ってしまった。


「……あたしも手伝ってくるわ」


  ミカもぼそっと呟き、席を立つと残りの半分を抱えて隣の部屋へと姿を消すのだった。


  ユキとミカが入った部屋を見つめながらマヤがふと言葉を漏らした。


「あの二人、似てるな」


  マヤの言葉は優しく少し嬉しそうでもあった。ユキもミカも優しく、率先して身を尽くすタイプなので波長が上手いこと噛み合ったのかも知れないが、どっちにしろ仲違いする事が無さそうなのは明白だった。


  メア達は二人以外で翌日の作戦決行に向けて更に綿密に作戦を立てていった。




  別室に銃を持ち込んだユキとミカの間には少し硬い空気が流れていた。と言うのもユキがミカを警戒して怪訝な視線を投げ掛けているからなのだが。


「あなた…ミカさんだっけ?何しに来たの?」


  警戒心丸出しのユキに武器を抱えたミカは少したじろぐ。


「これだけの量あなた一人に押し付けるのはどうかと思ってね。あたしも手伝わせてもらうわ」


  そう言ってミカは自身のバッグから最低限のメンテナンス道具を取り出し、多種多様な銃をメンテナンスし始めた。


「私の事なら心配しないで。それに変に素人に触られると……」


  ミカを追い払おうとしたユキの視線はミカの手際に釘付けにされる。

  ミカを素人だと思い込んでいたユキだがその認識が間違っていたと職人気質のユキは嫌でも思い知らされた。


「あなた……武器でも作ってたの?」


  ミカの手際の良さはそんじょそこらの職人よりも速い。ユキには及ばないが圧倒的に平均以上の技術力だった。


「昔……ちょっとね。まぁ、基本的なことだけだけどね。ちょっとはあんたの力にはなれるでしょ?」


「……………分かった。お願いね、ミカちゃん」


  肩を大きく落としたユキは納得したようでミカを名前で呼んだ。


「ふふっ、おっけ〜任せなさい♪ユキ」


  ミカも笑顔で引き受けるのだった。

  これが、ミカとユキの友情の始まりである事はこれから明らかになっていくだろう。





  翌朝、日もまだ昇ってない午前3時。

  8人は隊列を組んで都市へ向けて出発した。


「………眠い」


  ルエが元から半目がちな目をさらに眠そうに擦りながら抱き抱えるようにSVDを持ち、小さく不満を漏らす。


「我慢してルエちゃん、他の組に見つからないように移動するならこの時間帯しか無かったんだよ」


「……理屈は分かるが寄る睡魔には勝てない」


  そう言って右隣を歩くミカに少し体をもたれかからせる。ミカは左手で軽くルエの頭を撫でるとルエからリュックサックを脱がし、前にも背負う形で二つのリュックサックを運ぶ。


「目が冴えるまで持ってあげるわ、だから寝ながらでも歩きなさい?」


「……ありがとうミカ、うぅ…眠い」


  その様子をすぐ後ろから眺めていたマヤは軽く頬を緩ませながら話しかける。


「スナイパーなら昼夜問わず仕事しないといけないだろうに、今までよくやってこれたな」


「わたしが撃つ時は隣にいつも誰か居るから……寝てても、安心」


「…結局寝てるんだな」


  ルエもマヤの話にはしっかりと受け答える。スナイパー同士通じ合うところがあるのかもしれない。


「ところで、目標は明確なんでしょうね?」


  出発の直前までメンテナンスをしていたユキが尋ねるとセーラが大まかな流れを説明する。


「なるほど、今から行く大都市の中央でバリケードを築くのね。その後は?」


「とりあえず、安全が確保できたらそこを拠点に周囲に集まってきた敵を叩く。どこまで上手くいくか分からないけどな」


「それでこの時間帯に出発したのね」


  一気に大都市の中央まで突き進むにはバレやすい昼間より闇に紛れた方が生存率が高いのは明白だ。加えると試験開始から早3日、ある程度のチームは仮眠を取っていると踏んでの行動だった。



  歩き始めて2時間、そろそろ空にもオレンジ色の太陽が色を見せ始めた頃8人は無事大都市に到着し、目的地へと行進を続けていた。

  その時だった。視界の端に何か違和感を感じたミカが咄嗟に声をあげた。


「止まって!!」


  突然の事に驚いた一同は足を止めミカの方を振り向き変える。


 ルエに荷物を返したミカは違和感を感じた物に近づき、何なのか確認しようとする。

  その物体を確認したミカの顔はどんどん青ざめていき、仲間の方へ振り返ると思いっきり叫んだ。


「隠れて!!!」


  流石の反応速度と言うべきか全員咄嗟にその場から散らばり、建物の中や角の影に隠れる。


  その瞬間頭上で破裂音が響き渡り、先程まで8人がいた場所はインクが一面に飛び散っていた。


「ミカちゃん!?これって…!」


  ノノが察した顔でミカの方を向くとミカは苦虫を噛み潰したように渋い顔をしながら頷いた。


「バレてるわ、しかも相当手練の集団にね」



 

 


遅れてすみません。

くわえて新年あけましておめでとうございます。

相当書くのが遅れたのですがなんとか3話、加えて方針が確定しました。

これからも何とか続けていきたいと考えておりますので何卒よろしくお願いします

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