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この物語の主人公は主人公ですか?  作者: 落ち武者
第一章 始まりは別れから
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第8話『頭の中に聞こえた声』

「幻生…左腕を出せ…ちゃんと…服の…袖を…捲れよ…」


「お、おう」


 俺は戸惑いつつも、竜玄りゅうげんに言われた通り袖を捲って左腕を出した。


 すると、その腕を掴んで、少し笑った。ちょっと怖い、普段なら絶対突飛ばしてる。というか、突飛ばしたい…。


「よく……育ったな…これなら…大丈夫…そうだ…」


 そう言って、竜玄は、かなり安心した顔になった。


 しかし、それも一瞬だった。


 すぐに真剣な顔になり、空気が変わった。病室内の魔力が通常ではない、異質なものになっている。


 その原因は、俺の腕を掴んでるコイツ(りゅうげん)のせいだろうが………。


 竜玄から異常な量の魔力を感じる。それに反応し、病室の魔力も異質なものになったって感じかな?


「それじゃ……覚悟は…いいな…」


「ん?何の覚悟?と言うかその前に!その姿どうしたんだよ!?」


 竜玄の姿がかなり変わっている。髪の毛が黒から白に、目は、黒から赤になっている。


「……いくぞ…」


 少し身構える。


 何するんだよ怖ぇぇよ。俺の話聞かないなら最初から質問するなよ。覚悟って何のだよぉ……


「心を…落ち着かせろ…でないと…危ない…からな…」


 危ないって何だよおい!そう叫びそうになるのをグッと堪える。


 とりあえず落ち着かなきゃ危ない、落ち着かなきゃ危ない、落ち着か……。あれ、どうすれば落ち着くんだ?


「おい…はやく…しろ…」


 そう言われても、無理だろ。ヤバい、ヤバい、ヤバい。全然落ち着けない。




 ーー"大丈夫だよ、安心して"ーー




 突如、頭の中に謎の声が聞こえた。

 何故かとても安心する女の人の声。

 それに、何処かで聞いたような声だ。この声は確か………


 そうだ、あの看護師の声に似ている。俺を此処まで案内してくれて、お礼を言おうとしたら居なくなっていた、あの看護師に……。


 だとしたら、俺は二度も助けられたことになる。今度こそしっかり礼を言いたい。ここに居るかは分からないが…、



 ーー"ありがとう"ーー



 声には、出さない。前に竜玄が居るし、聞かれたら何か、恥ずかしい。


「準備…出来た…みたい…だな…」


 そう言うコイツは、良いことを知ったような顔になっている。


 あれ、もしかして聞かれてた!?


 まぁ、気付けば心は落ち着いている。これなら大丈夫そうだ。

 深呼吸をし、覚悟する。


「あぁ、何をするかは知らないがな」


 すると、俺の左腕が熱くなった。熱い、熱い、熱い、痛い、痛い。何だこれ……。


「耐えてくれよ幻生。始めるぞ」


 まだ始まってなかったの!?

 マジか………あれ?、そういえばコイツ、元気になってない?


 しかしそれ以上、考えることは出来なかった。竜玄による()()()()()()()が始まったからだ。


「我、夏目なつめ 竜玄りゅうげんの名において、王との約束以外の俺のすべてを、我が息子、夏目なつめ 幻生げんせいに与える」


 竜玄が短い文を言い終えた瞬間、全身が焼けるように熱を持った。


 熱い、熱い………痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い痛い痛い………



「はぁ…はぁ…はぁ……終わった…ぞ……」



 その言葉と同時に、さっきの痛みが嘘のように消えた。


「どうゆう、こと、だ?」


「適合した…みたい…だな…」


 いったい何をしたんだ?体に目立った変化は無い。適合?もしかして、適合出来なかったらヤバかった?


「あぁ…もし適合…しなかったら…死んでた…からな…」


「し、死ぬ!」


 いつの間にか、殺されかけた!?

 てか、普通に心読むの、やめてくれません?


「お前、よくそんなこと!」


「まぁ……適合……したか…ら……いい…じゃ……ない…か……」


 全然良くないから!それに…、


「あの時、あんなに元気だったのに、何でまたそこまで弱々しくなってるんだ?」


「あれは…ただ…自分の魔力……で…無理矢理……強化……しただけ……だ…。だから……この…通り…、命を…削った…けど…な……」


 命を削ったって…ただでさえお前、もう死にかけてんのに……。


「俺が……死んだら……葬式は…しなくて…いいから…。あと…面倒な……書類…は、…すべて……やっておいた…………」


「それだと死んでないのに、死亡届を出したってことになるぞ」


「その…とうり、…俺はもう……書類上…では…とっくに…死んでる…ことに…なってる……だから…お前に…面倒事が……回る…こと…は…な…い……」



 そう言うと竜玄は、力尽きたようにベットに横になった。()()死んではいない。


 だが、時間の問題だろう…。今にも死にそうだ。


 なのに何故。


 何故コイツは笑っているんだ。自分がこれから死ぬって時に、何で笑っていられるんだ。


「そう…だ……。いい…忘れ…て…た…事…が……………」


「何だ?」


 そう答えると、竜玄は更にニコッと笑って。


「お……ま……え………の……………………ぶ………き……」


「何だって?」


 よく聞こえないな。もっとはっきり言ってくれよ、まったく。


「おい、もっとはっきり……………」


 話し掛けようとして、違和感に気付いた。竜玄の呼吸が聞こえない。嫌な予感がする。


「えぇぇ………こうな感じのって、最後まで聞けるもんじゃないの!?」


 そんな俺の叫びが病室に響いたこの時、魔王であり、俺の唯一の肉親である夏目なつめ 竜玄りゅうげんは、俺の前で最後まで笑顔を消さず、安らかに息を引き取った。


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