第7話『魔王でした』
・・・ん?聞き間違いかな?
今、魔王って言わなかったか?気のせいだよな。
うん、そうに決まってる。
「今、冗談言ってる暇は無いだろうが。ふざけるなよ、死んじまうぞ」
「じょうだ…んじゃ…ねぇよ…マジだ…」
竜玄の言葉は、弱々しいままだが、その目は、それが真実だと訴えている。
「え?」
気のせいじゃなかった。魔王って言ってたわ。
でもそれだと、俺は……"魔王の息子"ってことにならないか?
信じ難いけど、事実なら俺……
「存在自体が大罪ってことになるのか…?」
「あぁ、普通なら…な…」
あっさり肯定されてしまったが、意外と大丈夫なもんだな。
まぁそれも、何か妙に含みのある、あの言い方せいだが…あの言い方だと多分、普通ではないのだろう。
だが何だろうな。普通なら死罪は、逃れられないのに、そうならない理由ってのは……。
そう考えていると竜玄は、まるで俺の心を読んだように話しかけてきた。
「俺が、国王と、約束、したんだ。お前を、生かす代わりに、国王の命令に、絶対従う、ってな…だから…お前は…生きてるんだ…幻生……」
なるほどな。それで俺は生きてるわけか………国王との………、国王との!?
「国王ってどうゆうことだよ!約束を取り付けるってお前……、お前の身分ってそんなに高いのか!?」
「そりゃ…そうだろうが。…魔王だぞ。…何当たり前な…こと…言ってんだ…」
あ、そうだコイツ魔王だったな………それならおかしく…いや、おかしいだろ……。
「いろいろ…疑問は…あると…思うんだが…時間がない。話は後だ…まず…アルカ学園に行け…って…理由だが、……簡単に言えば…そこならお前が望む…生活が送れる…からだ…」
俺の望む生活?
少なくとも俺は、普通の学校に普通に行って普通に友達を作って遊んだりする生活を望んでるんだ。
アルカ学園なんて行ったら、将来魔物たちと戦うための訓練の授業を受けることになってしまう。
「そんなこと、俺は望んでない」
「どうかな……もうどっちにしろ…お前は受験しないと…高校にも……行けねぇ…がな…」
竜玄は、満面の笑みで俺を見てきた。
「何笑ってんだよ!全然笑えねぇからな!」
本当に笑えない。知らない間に入学取り消されてたんだぞ……
「次に…」
「おい!まだ終わってないだろ」
「話は後だ…時間がない…って…言っただろうが…」
そう言われて、ハッとなる。
竜玄の顔色がかなり悪くなっている。言葉には力を感じないし、息遣いも弱々しい、かなり辛そうだ。
無理をしているのは明らかだが、コイツは今、俺の話を聞かないし、休めって言っても無駄だ………。
だから、言うことを黙って聞こう。せめて、最後のわがままぐらい。許してやろう。