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001 ノーフェイスの残業

この作品は『ノーフェイス』視点と『ムメイ』視点の両方でお送り致します

 時刻は夜、今宵は満月で明るさに困ることはない。俺は今、絶賛鬼ごっこ中だ。


 こうなったのも全ては自分の油断のせい。




 30分前、『無敗』として有名な『ムメイ』の姿から、暇だからという理由でスキル《変装》と『偽神の腕輪』を使い、和装姿からいつものPK用装備に変えた。

『偽神の腕輪』というのは、俺がPKをやるキッカケになった『特殊アイテム』だ。

 効果はプレイヤーのマーカー色の変更だ。


 プレイヤーはグリーン、オレンジ、レッドの三色に分けられる。

 オレンジはグリーンのプレイヤーや善良なNPCを傷つけた場合、グリーンからオレンジに変わる。

 レッドは殺害した場合に変色する。

 レッドになった場合は、街に入ることすら大変になる。


 俺がこの『偽神の腕輪』を入手したのは10ヶ月前、あるイベントで一位になった時に報酬として貰った。

 それから少しマンネリ化してた『白黒』で、少し興味のあったPK行為を始めた。といっても、殺すのはプレイヤー限定でNPCは無力化するに留めている。

 このゲームではNPCは死んだら復活はしないので、躊躇われる。中には進んでNPCを狙うPKがいるので、そんな時は依頼に関わらず狙っている。


 あ、《変装》というのはプレイヤーの容姿など色々変更することができるもので、容姿変更の《変装》、マーカー変更の『偽神の腕輪』のおかげで、今までバレずに一人二役やってこれた。


 某探偵漫画に、白が急に消えると黒が見つかり難いやらなんやらかいてあったので、ノーフェイスの時は髪色も黒にしている。あっ、ムメイの時の髪色が白なのはたまたまで、運良く活用させて貰った。いやぁ、キャラメイクの時の俺、ナイス!


 でも逃げる方法はパラグライダーではなく、闇に紛れるやり方だが。

 ノーフェイスでは忍者をイメージしている。使っている武器も二刀流の忍者刀をメインに、苦無、手裏剣、煙幕玉などなど、それっぽいものを主に使用している。


 ノーフェイスの格好で、道具数の確認や武器の耐久値確認などに夢中になっていた時だった。


「そこに誰かいるの?」


 パッと振り向いた先にいたのは、一人の女性だった。ただの女性ならまだしも、その女性は前に依頼の目標になった事のある女性だった。


「あっ!その姿、ノーフェイス!?前に殺された恨み今ここで晴らしてやる!」


 現在いるのは『黒神の森』と呼ばれる、適正レベル50程の場所のとある大木の下だった。

 ノーフェイスの姿でいつも通り《変装》スキルを使い、声を中性的な声にして話す。


「まあまあ落ち着いて、依頼以外でグリーンのプレイヤーをPKするのは嫌だから帰ってくれない?」


「はんっ!もう勝つのが決まってらみたいな言い方して……じゃあ、前に私を殺すように依頼した名前教えたらいいわよ」


 女性プレイヤーは大型の槍を構えてそう言った。

 ……もうやる気満々ですやん。


「職業柄それは言えないね、そっちはやる気満々みたいだし……しょうがない、やるか」


 俺がそう言い、忍者刀を両手で持ち構えると空気が変わった。そして……


「逃げるが勝ちっと」


 一目散に森の中に逃げ込んだ。


「はあっ!?ちょ、ちょっと待ちなさい!」


「待てと言われて待つほど、人間できていないもんでね」


 自身のステータスは速度と技量重視の為、かなりの速度で森を駆け抜ける。さらに忍者らしく木の上を通りながら。

 だが、相手も中々のスピードで追ってくる。そんな中、女性プレイヤーが何やら空中で手を動かしている。


「あ、やべっ」


 急いで苦無を投擲するが、時すでに遅し。


「私のギルド、『戦乙女(ヴァルキリー)』のみんなに呼びかけたわ!更にそこから他のギルドに拡散してもらってる。私の前に姿を現したが運の尽き、潔く死になさい!」


 ちなみに『戦乙女(ヴァルキリー)』というギルドは、全員女性で構成されているギルドだ。


「別に姿を現したわけじゃないが……」


 スピードを更にあげ、森の奥に逃げ込む。

 こうして冒頭の状態となる。

 森に逃げ込み既に30分は経っている、どこまで拡散したのか知らないが、掲示板を見てみると『ノーフェイス討伐連合』なるものが組まれ、合計100人を超えるプレイヤーが今この『黒神の森』に押し寄せてるらしい。


「逃げることは簡単だが……それじゃあ、ノーフェイスの名が廃るってもんだよな。よし、やるか百人斬り!」


 そうと決まったら早速移動開始。《無音動作》というスキルを使い移動する。

 すると、早速二人組を発見した。


「いたかっ!?」


「いや、こっちには見えない。今副リーダーから連絡があってもう少し奥に進むぞ」


 木の上から急襲する。先に行くプレイヤーについていこうとしたもう一人を、後ろから手で口を押さえて首を、頸動脈付近を搔き切る。


「!?!?」


 声を出すこともなく倒されたプレイヤーを音が出ないように放り投げ、そのまま前にいるプレイヤーに近づく。


「さっきから静かだが、しっかりついてきているか?ッ!?お前はーー」


 それ以上は声に出すことなく、男は倒されたエフェクトとなって消えて行った。


「さて、これでもうあの二人が復活(リスポーン)して他のやつらに注意喚起するだろう。ーーーだが、全員逃さない」


 ノーフェイスことムメイはそう心に決め、移動する。









「ぎゃあああ!!」


「ぐはっ!?」


「くそっ!こっちだー!こっ……」


「いたぞー!」


 彼方此方から悲鳴が聞こえる。ノーフェイスを倒すことだけを目標に作られたギルド『仮面反撃(フェイスアップ)』そのギルドマスターは今日はいない。

 だから今日は、副リーダーであるこの『クマ五郎』がノーフェイスを討つ!……筈だったのになんだこのザマは。

 明らかに離れた所から同時に発見報告がくる。そしてすぐに連絡不能となる。


 気づいた頃には辺りから音が消えていた。

 急いで自身の武器を構えるが、次の一瞬には自分の首から血が出ていた。


「はっ?」


 最後にクマ五郎が聞いたセリフは、


「ふぅーっ、百人斬り達成っと!百人より多かった気がするけど、まぁいいか」


 ふざけるな……合計150人を超えるプレイヤーを集めてたったの20分で全員キルだと?ふさげるな……

 そう思い、目の前が真っ暗になっていった。







「あっ、また懸賞金上がるのか。あれのせいで挑んでくる人増えたんだよなぁ……くそっ、あの金額を手に入れるのにどれだけ苦労すると思ってんだよ!なのに、俺を殺したら一瞬とか、俺を俺自身倒したら貰えないかな……」





『速報!『黒神の森』で『戦乙女(ヴァルキリー)』『仮面反撃(フェイスアップ)』『その他』の『ノーフェイス討伐連合』合計156人をノーフェイスが全員返り討ち!』


 掲示板のノーフェイスの専スレは勿論、ネットの至る所で盛り上がり、話のネタになるのであった。

残酷描写をオンにすると、血が吹き出たりします。オフだと赤いエフェクトが出ます。

ちなみに痛みは衝撃、小さな痛覚、痺れどれかに変換可能です。

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