死に方をデザインする
あみかちゃんは三十一歳になって三日たったある日、学校から帰る小学生を庇って亡くなってしまったとさ。
お葬式には無事だった小学生とたくさんのマスコミが来て、み~んな泣いていましたが
それから二十年ぐらい経ったら綺麗さっぱり忘れてしまいました
おわり
「みたいな死に方が私の理想。」
「……あみか、疲れてる?」
「ただの理想でしょ。疲れてなんかいないって」
確かにこんなこと言い出しすのは疲れている時ではない。
心が安定していない時しか無いだろうね
「で、私の理想を言ったんだから星も言うべき。てか言いなさいよ。理想の死に方!」
そう言われるとあぐねってしまう……死に方なんて考えてなんかいないし……
「もしかして死なんかイメージ出来ないって?ああ、お気楽でいいね!成績優秀者は!
でもあなたにも死が訪れるのよ!分かってんの?ねぇ?」
確かに私はいつか死ぬんだ。それは明日かもしれなしい、百年後かもしれない。
でも、死に方なんて……
「私なんて歯が綺麗な事ぐらいしか取り柄が無いんだから。それすらあんたと被ってるしね!」
あみかは本棚から勝手に漫画を取って読み始めた。
その後ろでは綺麗な青空に白い雲が絵の具をぶちまけた様な浮かび方をしている
「あみかは雲って何色だと思う?」
「雲?白に決まってんでしょ」
「でもほら。あの部分はどう?」
私は雲の影部分を指さす。
影部分は黒だけど決して黒一色ではない何かをしている
「ん~黒なんかなあ~?いや、グレーとも言うか」
「私もそう思うんだ。でも不思議だよね。決まった訳でもないのに人はいつの間にか黒だの白だの言うわけでしょ?」
「しゃーない。人間っつーのは目でしか決めらんない様な生物だしな。不思議と言えば私の名前も不思議な名前してるよな 愛に海の歌って書いて愛海歌だもんな。家の一族がどんなに低能か分かるっつーんだよ」
その一言に私はちょっと腹が立った。
例えば明日母親が亡くなったりしたらどうするのだろう?
それすら分からないのに低能かとはこれ如何に
「もう!そうやって家族を馬鹿にするんじゃないよ!私なんて 星と書いてのぞみだよ!
いわゆるDQNネームだよ!それに比べたらずっといいじゃん!」
私の顔を見て、あみかは笑った。
「そういや初めて会った時の事思い出しちまった。星って書くかもんだからさあ せいとか読んじゃってさ。たかのせい ってどんだけ鷹が嫌いなんだよって思ってたわ。ごめんな」
鷹のせい…… いや、今の高望みよりはマシかもしれない。
私のアダ名は 大体 高望み ほし ノゾミン の三パターンだ。
「曇ってきたな。そろそろ帰るか」
あみかは漫画を棚に戻して、空を見た。
確かに曇り空だ。だけど、私はあの雲がを例える事が出来ない
多分いつまでも。
「ねぇ私、どうやって死にたいか分かった」
「ああ。それまだ考えてたんだ。で、どんな?」
だって空は綺麗なんだもん。ちっぽけな私なんか例えちゃいけないみたいに
「八十歳ぐらいまで生きて孫に空を頼んだって言って死にたいんだ。そしたらいつまでも綺麗な空の気がしてさ」
「平凡だね。」
あみかは言った
「平凡でいいよ。DQNネームにはそれぐらいがお似合いだからさ」
私がそう答えると あみかは らしいや。 と言いたそうな顔をした。
空さん、どうか二人の人生を綺麗なままで見守っててね。
そんな事を言いたくなるような曇り空だった