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  作者: 星凪 怜
3/16

会社①

職場までは、好きなジャズのCDをガンガンかけて行く。

これが、私の気持ちの入れ替え方法。


会社は、従業員15人の、小さなアパレル会社。

…と、おしゃれに言ってみたが、実際は婦人服の縫製工場。

一応、ブランド物の婦人服を縫製している。


私は、ここで事務をしている。


『おはようございます』

そう言いながら『宮沢愛』と書かれたタイムカードを手に取る。


そう、私は『宮沢愛』42歳と1日。


『おはよう』

工場長と、事務の先輩が、顔を上げる。


工場長は、メーカーとの交渉や、生産行程、全て一人で行う。

そのせいか、いつも社内を走っている。


事務の先輩は、50代。

おしゃべりで、私の小さなミスも、その日のうちに、社内に知れわたる。


彼女の仕事は、電話に出て、伝言するだけ。

あとは、用もなく社内を徘徊しては、従業員のあら探し。


先日も、ミシンで間違えて縫ったのを彼女に見られた、若い子がいた。


自分のデスクに座ると、目の前にプルーンが3粒。


プルーン?何故朝からここに?


驚いてると、先輩…いや内川目うちかわめさんが

『頂き物だけど美味しいわよ。鉄分も取れるし。それ食べて、1日頑張ろ‼』

と、満面の笑み。


プルーン、嫌いじゃないから食べました。

でも、お昼のデザートの方が良かったな~

『美味しいです。ありがとうございます』

そう言って振り向くと、内川目さんは、工場長にプルーンをすすめていた。


工場長は

『俺、プルーン苦手なんだけど~』と言ってるが、内川目さんの耳には聞こえていない。

『美味しいですよ。ぜひ食べてみて下さい』


2人のやり取りに巻き込まれないよう、私はパソコンを開いた。


8時半。

朝礼が始まる。

朝礼は工場で行うので、私たち事務も工場に入る。


たくさんのミシン。

裁断機。アイロン台。仕上げ台。壁の棚には、たくさんの糸。


『今日は、〇〇の出荷があります。仕上げの人は、出荷時間に間に合うようにしてください。

縫いの方は、今日から、新しいメーカーの**です。縫い間違えの無いように、ちゃんと確認して進めて下さい』

工場長が話終えると、縫製のリーダーさんが、ひとりひとりに指示を出す。


『ゆきちゃんは、アイロンね。昨日話した通り。

なぎさちゃんは裏地のダーツを縫って、ともみちゃんは衿。道子さんは表地。中村さんは裾。

村田さんはスカートのタック。鈴木さんは、ポケットつけ』


リーダーさんは、私より一歳年上。

結婚するまで、ブランド婦人服の縫製専門に歩いてきた人。

厳しいけど、仕事は完璧で、プロ意識を感じる。


裁断のリーダーも指示を出している。


工場は、事務所と、工場(裁断、縫製、仕上げ)、生地置き場がある。


休憩室は、事務所の隣の和室。

ここは、社内で一番風通しが良くて、好きな場所。


ミシンの音が聞こえてきた。

と、同時に電話。

私が出るより一瞬早く、工場長が出たみたい。


工場長が走ってきて

『宮沢さん、今日、仕上げを手伝って‼

兼田さん休みだって!』


仕上げ部署のリーダーも兼ねてる工場長。


仕上げに、人手が足りなくなると、私が手伝う。

先輩の内川目さんは、私の仕事を代わりにやってくれないだろうから…今日は残業かなぁ?


兼田さんは、パート。

2才の子供のママさん。

保育園に入れたとたんに、風邪やら手足口病やら、色々もらってきては、休む。

ま、子供が小さなうちは仕方ないよね。


アイロンがかけられて、綺麗に仕上がったワンピースをハンガーにかけて、ハンガー用の袋に入れる。

出荷用の箱も、ハンガー用の箱。


ハンガー用の箱を初めて見た時は驚くと同時に、世の中の進化を感じた。大袈裟だけど。


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