終わりと始まり。
労基の指導が入った事は、その日のうちに従業員全員が知る事となった。
工場長が、尋常じゃなくイライラし、労基と村田さんを罵倒していたから。
工場長のイライラはしばらく続いた。
それに一番先に耐えられなくなったのは、以前から不満のあった、裁断のリーダー。
親の介護を理由に辞めた。
彼女を追うように、若い従業員から、ひとり…またひとりと辞めていった。
工場長のイライラはますます増長。
従業員も半分になった。
それでも、以前通りに仕事を入れてくる。
昼休みだけじゃなく、仕事中も、リーダーや従業員の苦情が出てくる。
特に、リーダーのいなくなった裁断では、2人だけで、遅くまで頑張っていたが、結局2人一緒に辞めた。
これでは生産が出来ない。
内川目さんは、皆が辞め始めてからは、自分の今後を迷っていた。
『宮沢さんは、どうするの?』
そう聞かれても、自分でも分からない。
この年齢から、仕事が見つかるのだろうか?
帰宅すると、高橋くんからLINEが入っていた。
デート以来、毎日LINEしているし、日曜は一緒にランチもしている。
仕事はごちゃごちゃしているけど、プライベートは充実している。
{お疲れ様です}
{お疲れ様}
{なんか、愛さんの会社の悪い噂を聞きました。本当ですか?}
…返信できない。
愚痴を言ったら止まらなくなりそうだから。
だから、落ち込んでいるスタンプを送った。
{話して下さい}
高橋くんにうながされ、自分の気持ちと、少しだけ会社の話をした。
{一緒に暮らしましょう}
{でも…まだ、お互いの親に会ってない}
{暮らしてからでも大丈夫ですよ。
親に会ったら、すぐに結婚しましょう}
涙が出てきた。
高橋くんと一緒に暮らせる。
ブラック企業から抜け出せる。
次の日、退職届けを出した。
年末には高橋くんのアパートに引っ越す。
お正月に、お互いの親に会う予定。
会社には、まだ数人残っている。
しかし、仕事にならなくなってきていて、今の仕事が終わったら、一時、会社を休業させるそうだ。
下手したら、このまま会社を閉めてしまうかもしれない。
内川目さんは
『もう、ダメかもね。私も親の介護始まったから、専念するわ』
と話す。
ミシンの子達は、別の縫製工場に行くかも…と聞いた。
残る人は工場長だけ。
裁断のリーダーが話していた。
『有休や残業代は、従業員を引き留めるもの。
目の前の、人手不足や赤字ばかり見ていると、この工場みたいになる。
将来を見て、人を育てて、仕事を好きな人が増えて欲しかった。
私も裁断は楽しかったわ。
自分達が裁断した布が洋服になるのよ。
素敵な仕事だった』
私は裁断のリーダーが好きだった。
自分を持っていて、自分の意見を言えた。
それが、上司と喧嘩になるとしても、部下を守ってきた。
私も、仕事は好きだった。
休業の事務手続きを済ませたら…というより、ほぼ会社を閉める手続きをしたら、私の仕事は終わる。
そうしたら、引っ越しの準備をしよう。
親にも、高橋くんの存在を知らせよう。
これから、また、新しい人生が始まる。
もっと深く、ブラック企業や主人公を掘り下げて書ければ良かったけれど、自分の限界を感じてしまい、物足りなくなってしまいました。
それでも、いい経験になりました。




