診断書
次の日、病院に付き添っていた、裁断のリーダーが出勤してきた。
『おはようございます。村田さん大丈夫ですか?』
『おはよう。病院に行ったら、意識はだいぶ戻ったのよ。すぐに旦那さんが来てくれてね。
娘さんは今日来るんだって』
『良かった~』
私は、身体の力が抜けたみたいに感じた。
『昨日の検査では、特に何も無くて、たぶん、ストレスかも。って』
『ストレス?』
『最近、残業続きだったでしょ。
それに、ミシンのリーダーに、かなり気を使ってたみたいだし』
『そうなんですか?大変だな~。
早く回復してくれるといいですよね』
『そうだね』
この日は1日中、村田さんの話題が途切れなかった。
1週間後の昼過ぎ、村田さんが退院して、事務所に顔を出した。
『大丈夫ですか?』
村田さんは、私の事を見もせずに、バッグから封筒を取り出し『工場長は?』と聞いた。
『呼んできます!』
工場長は、面倒くさそうに事務所にやって来た。
そんな工場長に、村田さんは、封筒を差し出した。
『診断書です』
『診断書なんていいのに。いつから来れるの?』
工場長は、村田さんを心配してないんだろうか?
『診断書を見て下さい』
工場長は、ビリビリと封筒を破り、診断書を見る。
その顔が、だんだんと青く…いや、怒っているのか、赤紫になってきた。
『ストレスだって?労災認定はしないぞ』
工場長がキレた。
『労災認定より、仕事を休むよう、指示が書かれているのが分かりますか?
1ヶ月の休業の話をしに来たんです』
『うちは、精神疾患は雇わない。明日から来なくていい』
『工場長!』
私と内川目さんが、同時に叫ぶ。
『休んだら、病状が落ち着くかもしれないじゃないですか!』
『そうよ!人手不足なんでしょ』
工場長は、私達と村田さんを無視して、事務所を出ていった。
『村田さん…』
『気にしないで。検査結果が出た時に、家族で話し合ったの。辞めるか悩んでいたけど、良かったわ』
『じゃあ、クビって事で、失業保険をすぐにもらえるようにしますね』
私が言うと、内川目さんがうなずいた。
『バイバイ。元気でね』
村田さんは、ロッカーの荷物を持って、会社を辞めた。
精神疾患はクビって…
真面目にサービス残業した結果が、ストレスを溜め込む事になったんだな。




