5.お金を稼ごう! ③ 絶対絶命!
白銀の眠れる龍との戦いはいかに?!
オリハルコンは手に入るのか!
なんとか頂上までやってきた。
不穏な空気が立ち込める。
何かがこちらを見ている感じがする。
見晴らしはいいのだが、灰色の雲と湿った空気がテンションを下げる。
目の前にぽつんと祠が立っている。
俺は、ずかずかとその祠に近づいていった。
俺は、どうやら結界の中に足を踏み入れてしまったらしい。
『我が眠りを・・・邪魔する・・・奴は、何人もたりとも・・許すまじ…』
地の底から聞こえてくる低く、おどろおどろしい声。
しばらくすると地鳴りが聞こえてきた。
縦横に地面が揺れ、俺たちは足元をすくわれて崩れそうになる。
次の瞬間、祠から強い光が放たれて、白銀の鱗をもった巨大な龍が宙に現れた。
来た!!!
「防御魔法かけるから~~! 動かないで~~!ディフェンザ!オール!
OK~~! これである程度無鉄砲に攻撃しても行けるわよ~~!」
「よっしゃ~~~~!! 削るぞ~~~!
おい、ナンシーやりすぎて、倒すなよ!!」
「承知~~~♪」
俺は、剣技スラッシャーを打ちまくる。
ナンシーは、かなり手加減しながら剣技スティングで敵をツンツンしている。
シーアは、また例のノートを見ながら、腐パワーを充填している。
白銀の龍も俺たちの攻撃にさらされているだけではなかった。
口から光の咆哮を出し、周囲を破壊しつくす。
俺は、間一髪それを避けた。
あぶねぇ、いくら防御魔法かかってるとはいえ、あれ食らったらマジで死ねる。
結構規則的に光の咆哮を打ってくるので、何度か攻撃しているうちに
パターンがわかってきた。
HPを削りつつ、相手の攻撃をかわしつつ、
激しい戦闘でようやくHPが半分くらいに減った。
「ちょっと、これ以上あの光のビーム出されたらたまらないから、
魔法で、動き拘束するからちょっと待ってて~~。このくらい弱ったらかかると思うわ~~!
いくわよ~~! アタッシェ ドラーク!
どう? 効いたかしらね?」
白銀の龍が急にもだえ始めた。
何か見えない鎖のようなもので、強く縛り付けられたようだ。
すげぇ・・・カマ剣士・・・。もうなんでもありだな。
「よっしゃぁ~~~~~~~~! 総攻撃じゃぁ~~~! 削れ~~~!」
動けなくなった龍に俺は、銅の剣で何度も攻撃を加えた。
相手のHPが30を切ったとき、俺は叫ぶ。
「シーア!!! 召喚獣を出せ!!!」
「はい!!! 行きます!!! いでよ! 鉄壁の防御天使 ガーディアン!」
そういうと、シーアの頭上に光の玉が現れ、どんどんそれがデカくなり、真っ白な天使が現れた。
うは~~! 神々しいな。
シーアが両手を前に出し、詠唱する。
「その白き翼で、われらを守れ。 いまだ開かぬ少年の鉄壁の純潔を守りたもう!
天使の箱庭発動!」
え? 少年の純潔って何?
俺が、あきれ果てて、口をあんぐり開けていると地面から無数の光の柱が現れて、俺らを取り囲むように大きな光の神殿ができた。
やるな! シーア! 相変わらず詠唱がおかしなことになってるけど、まあ仕事してくれるなら許すわ!
「よし!!! ナンシー! 禁断魔法行け!」
「オッケ~~~! 行くわよ~~! 命がけの幸運! デスパレート!!!」
その瞬間、ふっと銅の剣が重く感じ、力が抜けるような気がした。
そして、HPが1になり、足がふらつく。
やべ、まじで本当にLV1かよ!!!
HPもMPも能力も運以外がすべて1になるという命がけの魔法。
あのナンシーさえも瀕死の状態で、フラフラと剣を支えにやっと立っている。
シーアに限っては、もう四つん這いの状態で、ゼィゼィ言っている。
クソッ!! 体が動かねぇ・・・。
「トーマちゃん・・・・最後の一撃繰り出すわよ!!! アタシから行くわ! トウッ!!!!」
ナンシーが剣を振りかざし、ザシュッという音とともに会心の一撃を食らわせる。
あと・・・あと・・・一撃!!
俺がなんとかしないと!!!!
フラフラになりながら、俺はなんとか剣を振りかぶったが、力で入らない。
そこに、ついに拘束の魔法を振り払った白銀の龍が俺めがけて、あの白い咆哮を打ってきた。
やばい!!!! ガーディアンで守り切れるか!!!
そのときだった!
隠れておびえながら見ていたヨシュアが、ダッシュで飛んできて俺を突き飛ばした。
そして、俺の身代わりで龍の攻撃をまともに食らった。
ヨシュアの体の右半分が消し飛んだ。
「ヨシュアーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
俺は、はいつくばってヨシュアにかけよる。
くそ!!!! こんな時に限ってMPが1!!!
「ト・・・トーマ兄ちゃん・・・ありが・・とう・・・。
優しく・・してくれた・・人間は、お兄ちゃんたちが・・・初めてだった・・・。
がんばって・・・」
そういうとヨシュアは、がっくりと息絶えた。
小さい体から魂が抜けて、体がだらりと地面に落ちた。
俺は、取り返しのつかないことをしてしまった。
俺の身勝手で、ヨシュアを死なせた。
怒りで目の前が見えない。
銅の剣を手にして、フラフラと立ち上がる。
俺は銅の剣にありったけの怒りと持てる力すべてをこめて、龍に向かって投げつけた。
剣は、赤い炎を身にまとって、鋭い刃となり龍の眉間に突き刺さった。
龍が、もだえ苦しみながら、断末魔の叫びをあげる。
体中から白銀の光が四方八方に現れ、爆発して消滅した。
地面を見ると、その四散した体が変化したオリハルコンが埋まっていた。
クエストはクリアできた。
でも、俺は何もうれしくなかった。
オリハルコンを拾う気にもなれず、膝をがっくりと地に落とし、ただただ茫然としていた。
いつも明るいナンシーもこのときばかりは、神妙な顔をしていた。
シーアは、おいおいと泣いていた。
初めてのクエストは、俺にとっては本当に苦い思い出となったのである。
オリハルコンの代わりに、可愛いヨシュアを失った勇者一行。
この出来事がトーマにどんな変化をもたらすのでしょうか?